5月24〜26日にカリフォルニア州パサディナでスペーステック・エキスポが開催され200社以上が出展、4000人以上が参加した。スペーステック・エキスポはアメリカ西海岸で開催される大規模な宇宙カンファレンス、これまでカリフォルニア州ロングビーチで開催されてきた。さらに昨年からは欧州へ拡大、初回が開催されたブレーメンでは200社以上が出展、50か国から2600人を超える参加者を集めた。


スペーステックは講演と展示から構成され、内容は完全にビジネスモード。現在、宇宙産業において新たなビジネスモデル、技術、プレイヤー、市場、投資によるパラダイムシフトが進行中、イノベーションをもたらしつつある。ミリタリー含む政府はこれらNewSpace をはじめとする民間との新たなPPP(官民連携)を推し進めている。



スペーステック・エキスポのカンファレンスの様子 ©Space Tech Expo


メガコンステレーションのワンウェブ


スペーステック・エキスポのパネルディスカッションでは、LEOのキーは、国際宇宙ステーションとともにワンウェブとグーグルであるとスライドで紹介されていたが、確かにワンウェブの事業に向けられる関心はとても高い。


ワンウェブは、648衛星を高度1200kmの18軌道面に36衛星ずつ配置、Kuバンド、Kaバンドで全地球をカバー、ブロードバンド通信を地球上のあらゆるところで可能とする。エアバス、MDA、クアルコム、ヒューズ、アリアンスペース、ヴァージンギャラクティック、インテルサット、コカ・コーラなど新旧宇宙企業や非宇宙企業と戦略的パートナーシップを締結、500Mドルの資金調達が発表されているが、最終的には3Bドル規模の事業となる。


150kgの衛星は寿命7年、ツールーズで10試験衛星を作り、フロリダに設立されたワンウェブ・サテライトで1日に3衛星、1週間に15衛星の組み立てを行うというプロダクション体制となっている。宇宙デブリになることが心配されているが、衛星には軌道離脱能力があり、寿命後5年以内に廃棄される設計となっている。


打ち上げでは、アリアンスペースのソユーズロケット21機、ヴァージンギャラクティックのロンチャーワン39機と契約。2017年末から打ち上げ開始、2018年からコンステレーションとしての運用、2020年の完成を目指す。



ワンウェブのメガコンステレーションは2020年を目標に構築 ©OneWeb


エアバスイノベーションセンターA³ (A-Cubed)


NewSpaceと対比されるOldSpaceことトラディショナルスペースも劇的に進化中。ワンウェブと戦略的パートナーシップを組んでいるエアバスは、今年、シリコンバレーにエアバスイノベーションセンターA³ (A-Cubed)を設置、創造的破壊のシリコンバレーエコシステムと強く結びつき、次世代型グローバルビジネス確立に挑戦。併せて設置されたエアバスベンチャーズファンドで、航空・宇宙・防衛分野に150Mドルを投資、スタートアップをはじめとする革新的企業と全く新しいバリューチェーンの構築を目指す。


A³ ではウーバとも提携、そのノウハウも活用してエアバスのH125やH130でオンデマンドヘリコプター輸送サービスを計画、ヘリコプター運用の新しいビジネスモデルに挑戦することが公表されている。A³ の開所イベントに参加した人たちは、ヘリコプター遊覧をしたという羨ましい話をしていた。


エアバスではシリコンバレーだけでなく、おひざ元のツールーズにはビズ・ラボ設置、インキュベーションセンターとしてスタートアップとの連携を推進している。



エアバス55%出資のOneWeb サテライトでは1日に3衛星を組み立てる ©Airbus


The Future of Space


スペーステック・エキスポの初日、The Future of SpaceがスペースポートLA、Cureativなどの主催で開催された。開催場所のクロスキャンパスは、人材、資金、技術、ノウハウが集まり循環ができるようなインキュベーションの場を提供するコワーキングスペース。シリコンバレーでよく見られるようなスタートアップのピッチイベントあるいはミートアップならぬ、スペーステックのサイドイベントを企画、ヴァージンギャラクティック、スペースフロンティアファンデーション、ライトスピードイノベーション、投資家が登壇し、宇宙産業におけるスタートアップの機会や技術、投資について語った。会場には起業しつつある人、計画している人が何人か参加していて即興でアピールするという場も。


サイドイベントにふらりとやってきたリック・トウムリンソン。宇宙資源利用のディープスペースインダストリーズや宇宙服のオービタルアウトフィッターズなどを起業した商業宇宙のビジョナリストであり、スペースフロンティアファンデーションの共同創設者でもある。次世代の起業家に向けた父親のようなまなざしが温かい…。