UAE戦では思うように活躍できなかった香川。タイ戦では輝きを放てるか。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 9月3日、タイ・バンコク市内で17時半から初練習を行った日本代表。地元日本人学校の生徒100人と記念撮影を行ったあと、1時間ほどコンディショニング調整主体でのメニューを消化した。左膝の打撲の影響で同2日の練習には参加しなかった岡崎と香川も合流し、柏木も部分合流を果たした。
 
「プレースピードが遅く、真司を見つけられなかった」とUAE戦後の会見でハリルホジッチ監督は話しているが、当の香川は次のように振り返った。
 
「リズム的にはそうですね。もうちょっとサイドで幅を出して、行くぞというタイミングでダイレクトパスだとかが少なかった。自分にパスが入るタイミングは、なかなか掴みづらかった。中が密集していて、ポジショニングが被るというか、近すぎる場面もあった。それでうまく行ったところで、ミスもしてしまった」
 
 そんな香川が課題に挙げたのは修正力だった。
 
「相手を研究し、準備したことがすべて嵌るわけでもない。それは守備だけでなく、攻撃もそうですけれど、うまく行かないときに『こうなったら、こうしよう』と、試合の中で話し合い、修正していくこと。試合の状況に応じて動くことがUAE戦ではできなかったし、そこが僕たちの課題だと思う。
 
 想定内のゲームがあるわけではない。最終予選になったら、想定外のことが起こってくると思う。苦しい時間帯、厳しいときにどれだけチームとして耐えて、僕たちがそれを崩し、点を獲りに行けるか。そういう変化を生み出せるかが大事になる。(UAE戦は)それをすごく感じるゲームだった。次の試合までにそういう部分を修正し、身体と心の準備をしっかりとやって、絶対に負けないサッカーをやりたい」
 
 まさかの敗戦スタートとなったハリルジャパンのワールドカップ・アジア最終予選。
 
「なにより初戦が大事で、勝ってホームでスタートを切ることを誰もが思っていた。その悔しさはもちろんあるけれど、もう終わったことで、勝ち点3は取り返せない」と香川。 
 
 左股関節を痛めていた柏木の戦列復帰も心強い。
 
「選手それぞれに違いがあり、それぞれの選手に良いところがある。誰が出てもその人に合わせて、その良さを引き出せるようにしっかりと準備したい。(柏木)陽介は展開力や組み立てという役割を担える選手だと思います」
 
 バンコクは、香川が日本代表で先発デビューを飾った場所でもある。2008年6月にそこで行なわれたのは、南アフリカ・ワールドカップのアジア3次予選のタイ戦だった。
 
 あれから8年が過ぎた。南アフリカ大会の舞台には立てず、4年後のブラジル・ワールドカップではグループリーグで敗れた。ドイツに渡り、英国にも挑戦した。数知れず味わった悔しさや危機感は香川のキャリアを輝かせる原動力にもなった。壁を打開し、乗り越える意味を知っている。相変わらずの引き締まった表情で、「良い準備を」と繰り返した香川の意地に期待し、彼の存在がチームに柔軟な対応力をもたらすことを信じたい。
 
取材・文●寺野典子(フリーライター)