■「夏競馬」珍道中〜西日本編(11)

 笠松、小倉、佐賀と渡り歩いてきた夏競馬の「旅打ち」。

 佐賀競馬で負けて、熊本で寂しい夜を過ごした翌8月1日、あらかじめ割引運賃で購入していた航空券で熊本空港から中部国際空港へと戻ってきた。まっすぐ東京へ帰ればいいものを再び名古屋に向かった理由は、「旅打ち」初日に笠松競馬で的中した当たり馬券を、8月2日から始まる名古屋競馬場で払い戻すためだ。

 加えて、8月1日付けで騎手免許を再取得した女性騎手・宮下瞳騎手の復帰にも立ち合えるかもしれない、という狙いもあった。

 ところが、である。名古屋競馬の出馬表をインターネットで見てみると、宮下騎手の名前がない。開催初日には復帰しないのだろうか。

 早速、名古屋競馬の主催者に電話で問い合わせてみると、衝撃の事実が判明した。担当者が語る。

「いやぁ〜、この開催の出馬投票が、宮下の免許が再交付される前に締め切りだったので、今回宮下は乗れないんですよ。復帰は8月17日からの開催になる予定です」

 マジですかぁ〜!!

 衝撃の事実はこれで終わらない。ワシが名古屋競馬に立ち寄る経緯を伝えると、担当者が思いも寄らぬことを漏らした。

「あれぇ、土屋さん、ご存知なかったんですか。今は地方競馬の馬券は、全国どこの地方競馬場でも払い戻しできるんですよ。佐賀に行ったのなら、そこで払い戻すこともできたし、東京に帰ってから、川崎や大井などで払い戻してもよかったんじゃないですか」

 そ、そうだった......。地方競馬では、数年前にシステムを改修していたんだった......。以前、岩手で買った馬券を大井で払い戻した記憶が急によみがえってきた。夏の暑さで、すっかりそんなことも忘れてしまっていたのだ。

「なら、名古屋に戻ってきた意味ないじゃん!」

 そうは言っても、もはや後の祭り。だいたい、こんな「旅打ち」企画さえなければ、こんな思いをすることがなかったのに......。

 もうこうなったら、とことん「旅打ち」をしてやろうじゃないか。この日は名古屋圏内で競馬はないが、四日市でナイター競輪が開催されている。しかもガールズケイリンのレースもある。

「よし、今日は競輪で勝負だ!」「これまでの負けも取り返してやる!」

 そう気合いを入れて、中部国際空港から名鉄とJRを乗り継いで四日市へ向かった。四日市駅からは、無料バスで競輪場へ。およそ15分で到着した。さあ、まったく予定になかった「旅打ち」のスタートである。

 場内に入ると、この日は来場者サービスとして「開運かき氷」が無料で配布されていた。暑さでヘロヘロになった体には、これ以上ない"おもてなし"である。無料という言葉に甘えて、2杯も食べてしまった。

 そうこうしていると、レースは第5レースが始まるところだった。デビューして以来、6連勝中の5番・酒井拳蔵で頭は堅そうだ。車券は、その5番から3連単を6点に絞って購入した。

 すると、いきなり的中! 15.6倍と配当は低かったものの、幸先のいいスタートが切れた。

 続く、第6、第7レースはガールズケイリンだ。ガールズの予選競走は力の差がはっきりしている番組が組まれやすい。手堅く当てるには、最適だ。

 第6レースは、4番・荒牧聖未で頭は堅く、2番手も1番・飯塚朋子で間違いないだろう。そして第7レースも、ガールズケイリンを代表する選手のひとり、2番・梶田舞の頭は鉄板。相手は5番・中川諒子だろうが、中川は取りこぼしも考えられるので、3着付けの保険車券も購入しておこう。とにかく、このふたつのレースも3連単で大きく勝負できる!

 ......と思ったら、それぞれまさかの展開に!? 第6レースでは3着に人気薄の2番・猪子真実が飛び込んできて、第7レースでは中川が不発。ともに3連単は高配当となって、第6レースは4630円、第7レースは1万5330円もついた。これまでの負け分を十分に取り返せる配当だ。くぅ〜、悔しい......。

 ちなみに、ガールズケイリンではレースのあとに勝利インタビューがあって、選手がファンの人たちにプレゼントを配ってくれる。これまた、うれしいサービスである。そんな中、もはや敵なしと言える、梶田選手はこんなことを言っていた。

「4年後の東京五輪の自転車競技に何としても出たいので、それがモチベーションとなっていますね。それまでは、どんなレースでも負けたくありません」

 よし、 おじちゃんもしっかり応援するぞ!

 それはともかく、「簡単に取れる」と高をくくっていたガールズケイリンで連敗。その後のレースもことごとく荒れて、ワシは完全に"連敗の泥沼"にはまってしまった。

 がっくりとうなだれていると、場内の場立ち予想業者「東海情報」の白塚山照男さんが、こう声をかけてくれた。

「こういう日は難しいけど、逆に荒れると決めつけたなら、それに見合った見方と予想も教えることはできますよ」

 白塚山さんが続ける。

「競馬も、ボートレースも見るけど、やっぱり競輪は一番"推理"の要素が強いし、特殊だよね。どのラインがどこでどう動くのか。その動きに合わせて他がどう動くのか。能力だけじゃないので、初めての人にはそこがとっつきにくいとは思うけど、そこを面白く思ってもらえるような予想と、その見方を教えているんで、競輪場に来たら、ぜひ僕らの話を聞きにきてほしいです」

 さて、残すところレースは、あとふたつ。ここで、四日市競輪場に来て、まだかき氷しか食べていないことに気づいた。何かないかと食堂が集まるところに行って見ると、「伊勢うどん」の文字が。三重県に来たからには、これを食べない理由はない。

 1杯、650円。出てきた「伊勢うどん」は、超太麺のうどんに醤油がかけられ、その上にアオサが乗っていて、生卵が別で添えられている。もっちりとした食感に、アオサのほんのりとした香りがマッチ。見た目のボリュームはそれほどないが、十分に満足のいく一杯だった。

 気をよくして臨んだ第11レース。ここは、3番・丹波孝佑の"カマシ(※)"を誰が捕まえるか、という展開と見て、3番から3連複で勝負した。
※他の選手がスピードを上げないうちに一気にスパートする戦法。

 なんと、この競馬とは異なる考え方、買い方の組み立てがまんまと決まった。4点買いで、19倍をゲット。収支は上々だ。お腹が満たされたあと、会心の的中が来るのは、この「旅打ち」のスタンダートとなったようだ。

 続く最終レースはハズレたものの、四日市競輪はプラスで終了。これで気分よく、尾張・名古屋の最終決戦へと向かうことができる――が、よくよく冷静に考えてみれば、この日のプラスでさっさと東京に帰ればよかった......ということになるのだった。

(つづく)

土屋真光●旅人 Traveler&text by Tsuchiya Masamitsu