■「夏競馬」珍道中〜西日本編(6)

 西日本を行く「旅打ち」初日は、打ってよし、飲んでよし、と幸先のいいスタートとなった。この好調を、2日目も維持していきたい。

 博多・天神の半個室カプセルホテルを、朝8時頃にチェックアウト。本日の"勝負の舞台"となる小倉競馬場へと向かった。

 小倉競馬場には、天神バスターミナルから高速路線バスを利用する。博多駅からJRを利用した場合、新幹線なら30〜40分で着くものの、小倉駅からモノレールに乗り換えてトータル2360円もかかる。在来線の特急列車でも1時間ほどで2050円。普通電車なら1540円で済むが、1時間半近くかかってしまう。

 しかしバスであれば、1時間ちょっとで料金は1130円。電車を使うよりも、はるかに安くて、所要時間もそれほど変わらないのでおトクだ。しかも、「競馬場前・北九州大学前」で下車すれば、競馬場は目の前。乗り換えもない。バスはおよそ10〜20分に1本のペースで出ているため、利便性もかなり高い。

 天神バスターミナルの正式名称は『西鉄天神高速バスターミナル』。昨年リニューアルされただけあって、非常に快適な空間となっている。ターミナル内にはコンビニやスターバックスコーヒーなどもあって、急に思い立った小旅行にも対応可能だ。ただ、ここのコンビニにも競馬新聞はなかった......。

 コンビニで買ったペットボトルの水を手にして、北九州方面行きの「なかたに号」に乗り込んだ。空港リムジンバスのようなタイプで2席×2列の座席。"ドル箱"路線らしく、そこそこの乗車率だったが、隣席が埋まるほどではなく、小倉競馬場までの時間をゆったり過ごすことができた。

 車窓の風景を見ながらうつらうつらしていると、あっという間に目的地のバス停に到着。モノレールの「競馬場前」駅のちょうど真下で、エスカレーターを昇った瞬間、そこはもう小倉競馬場だ。

 新聞スタンドで競馬新聞を購入し、入場門をくぐる。ちょうど第2レースが終わったところだったが、この日がこの夏最初の小倉競馬とあって、場内の活気が伝わってきた。

 スタンドに入ると、お財布携帯の機能を使った抽選会が行なわれていた。早速、ガラケーをかざすと「チャッチャラ〜ン♪」とファンファーレ。どうやらラッキー賞があったようだ。「こりゃ、今日も運がいい」と思いながら、一方で「これで運を使ってしまったのではないか......」と不安にもなる。

 さて、最初に挑むレースは、第3レース。芝1200mの3歳未勝利戦で、フルゲート18頭立てのレースだ。

 近2走で連続2着の12番ヒワラニが1番人気だが、芝の短距離ではそれほど負けていない10番のホワイトパンドラに食指が動く。単勝でも10倍以上つくので、その"応援馬券(単勝・複勝)"とホワイトパンドラから4頭にながす馬連複を購入した。もちろん、1番人気ヒワラニとの組み合わせは、少し厚めにして買った。

 すると、直線を迎えてホワイトパンドラが手応えよく先頭に踊り出る!

「キターァーーー!」

 だが、そう叫んだ直後、ヒワラニが外から伸びてきた。ホワイトパンドラも最後までよく粘っていたものの、ゴール手前でかわされてしまった。

 いやぁ〜、惜しかった......。一応、馬連複と複勝は的中し、「まだまだラッキーは続いている」と自らに言い聞かせてみたものの、完全的中まであと一歩だっただけに、そのショックのほうが大きかった。この気持ちを引きずったまま勝負するのはどうかと思い、続く障害未勝利戦、新馬戦は「見」。ブレイクを取って、場内を散策することにした。

 スタンドを出て、モノレール側の入り口とパドックを挟んだ反対側の広場へ向かうと、何やら黒山の人だかり。その奥から、香ばしい匂いが漂ってきた。

 その正体は、なんと熊本牛の炭火焼き! モモの部分が網の上に吊るされて、大ぶりに削ったものを炭火で焼いてから提供されている。ジューシーなお肉はこんもりと盛られて、ひと皿500円。そのボリュームからしたら、かなりおトクだ。

 やばい、早くもビールが欲しくなる――が、さすがに減量中はビールもいただけないので、再びスタンドに戻って何かのどを潤すものを探した。

 すると、足もとに「アイスコーヒー無料」の文字。しかし、よ〜く見ると「女子だけにウマい話」と書かれている。つまり、おっさんはダメというわけか......。まあ、ダメもとで行ってみよう。

 エスカレーターを上がってみると、『UMAJOスポット』なるものを発見。スタンドの一角を利用したカフェだった。どうやら、ここでアイスコーヒーが無料でもらえるようだ。

 店内ではイケメンのボーイさんたちが浴衣姿で接客をしている。おっさんにはやや入りづらい雰囲気をかもし出しているが、男がいるなら大丈夫だろう。このまま堂々と入ってやろうと、入り口に歩みを進めたら、お店のおねえさんに止められた。

「あのぉ、すみません。こちらは、男性のご利用はできないんです」だと。

 おっさんは、黙ってすごすごと退散した。そのわびしい姿を哀れんでくれたのか、同じホールの別の一角からキレイなおねえさんが声をかけてくれた。

「1杯、いがかですか?」

 ハイボールを売りにした期間限定の『UMAN Bar』だった。普段は集中力を欠くと思って競馬場ではあまりアルコール類を飲まないようにしているのだが、この日はのどの渇き(というか、おねえさんのお誘い)に抗(あらが)えず、1杯もらうことにした。ハ、ハイボールならビールと違って糖質じゃないし!

 いやぁ〜、昼から飲むお酒はやっぱり別格ですなぁ〜。牛肉にも合うし、おねえさんとの会話も楽しいし、ほんと最高だわ♪

 だが、キレイなおねえさんに惑わされて(?)の、このほろ酔い気分が"地獄"の入り口になるのだった......。

(つづく)

土屋真光●旅人 Traveler&text by Tsuchiya Masamitsu