■「夏競馬」珍道中〜西日本編(5)

 自画自賛してしまうほどの逆転劇で、最初の笠松競馬をプラス収支で終えた西日本を行く「旅打ち」。笠松競馬場を後にして、一路向かったのは福岡県。当日予約でも1万円前後というLCC(格安航空会社)に感謝しつつ、第2ラウンドの小倉競馬を控えた今夜は、博多の夜を満喫し、しっかりと英気を養いたい。

 博多では、最近少しずつ増えている個室型のカプセルホテルに泊まった。カプセルなのに「個室型」とはこれいかに? 個室とはいえ、正確には簡易宿泊施設のひとつで、部屋ごとにドアはなく、アコーディオンカーテンなどで仕切られている。

 中に入ると、上下2段の宿泊カプセルのどちらかの段が開放されている。例えば、右の部屋に入ると上段がロフトのようになっており、左の部屋に入ると下段が普通のベッドのようになっている。それぞれのベッドが上下に重なっている分、少ないスペースで多くの部屋を確保できる構造となっているのだ。簡易とはいえ、プレイベート感はしっかりと確保されており、広さこそないものの、普通のカプセルホテルのような閉塞感はない。

 しかも小さなデスクもあって、ここでデスクワークや充電もできる。また、ホテル内には大浴場が併設されており、個室風呂よりもゆったりと湯船につかることができるので、夏の暑さと移動の疲れをまとめてとってくれるのがありがたい。

 ひとっ風呂浴びてさっぱりしたところで、夜の博多へ繰り出した。1日目の勝利の祝杯と、このあとの旅の無事を祈念して、だ。

 中洲界隈は、東京の不夜城とはまた違った、エネルギッシュな活気に満ち溢れている。街のあちこちに屋台が立ち並ぶさまは、この地域ならではの光景だ。

 さて、どの店に入ろうか。

 と、その前に明日の競馬新聞を購入しておきたい。旅先で軽く一杯やりながら、翌日のレースを検討する。なんとも、乙じゃないか。

 そう思って、手近なコンビニに入るが、......ない。通常、レジ横のスタンドにある競馬新聞がないのだ。

 はて? どういうことだろうか。そう思いながら、別の系列のコンビニに行ってみても、そこにもない。店員さんに尋ねてみた。

「競馬新聞は売り切れですか?」

 すると、店員さんは困ったような顔をして言う。

「この辺りは競馬新聞を売っているところがあんまりないんですよね」

 そういえば、以前に聞いたことがある。博多では、他の公営競技のほうが人気で、競馬は肩身が狭いのだ、と。

 しょうがない。競馬新聞は翌日、小倉競馬場に着いた際に購入することにしよう。笠松競馬がフルゲート10頭だったのに対して、JRAの小倉競馬ではフルゲート18頭。その辺の感覚も含めて、頭の中を早く切り替えておきたかったが......。

 気を取り直して天神界隈を歩いていると、目に入ってきたのが、居酒屋の店頭に「ハイボール1杯目100円」と書かれたポスターだ。勝ったとはいえ、節約できるところは節約したい。ここは渡りに船と、ワシはその居酒屋に吸い込まれていった。

 店内は、10席ほどのカウンターがあって、数卓のテーブル席がある、こぢんまりとしたものだった。ハイボールは、普通サイズなら100円、倍のメガジョッキなら200円だそうで、ならばメガジョッキを注文。運ばれてくる間に、つまみを選んだ。

 博多だからそれっぽいものを、と選んだのは、ゴマサバとモツ鍋。減量中の身に合った"ザ・糖質制限メニュー"だ。ところが、ゴマサバはこの日売れ切れとのこと。気分はサバモードだったので、代わりはシメサバで手を打った。

 ほどなくして、ハイボールが運ばれてきた。一緒にきたお通しは、おきゅうとだ。海藻で作られた煮こごりというか、ところてんのようなもので、これも「博多に来たぁ〜」と感じさせてくれる一品だ。

 続いて出てきたのは、モツ鍋。別皿でとろろがついてきている。

「(とろろは)煮えたところでかけてください」と、店員さん。


 少し辛味のついた塩ベースのスープに、フワッとしたとろろが絶妙に絡み合う。簡単に思いつきそうだが、今までに経験したことのない食感だ。

 しかもこのとろろ、一気に使い切らずに置いておけば、締めのちゃんぽんとも合うんじゃない? 麺類ととろろは鉄板の組み合わせだ。が、その正体は糖質+糖質。今、最も控えねばならぬ組み合わせでもある。ちゃんぽんで締めたいのをグッとこらえて、キャベツとモツの追加で我慢する(我慢になってない?)。

 実質2人前のモツ鍋を食べ終えて、フウッとひとごこち。博多っぽいものが食べられて、余は満足である。

 そのうえ、お会計は2000円もしない。えっ、つけ落ちじゃね? と思ったが、どうやらそうではないようだ。

 馬券も好調、満足度の高い夕食......、移動と夏の暑さには疲れたが、それを吹き飛ばしてくれるような、いい一日の締めくくりとなった。

 さあ、明日は小倉競馬だ。

(つづく)

土屋真光●旅人 Traveler&text by Tsuchiya Masamitsu