■「夏競馬」珍道中〜西日本編(4)

 西日本の競馬場を巡る夏の「旅打ち」。第1ラウンドの笠松競馬場では、一時プラスに転じるも、そこから4連敗を喫して再びマイナス街道をまっしぐらである。

 勝負できるのは、あと1レース。移動時間の都合からレース観戦はできないが、せめてトントンで終われるような勝利を決めて、次の目的地に向かいたい。

 第11レースは、どう考えても1番オヤカタ、3番サンダルエチケット、7番ゲラーデの三つ巴。まぎれがあれば、10番のマインツが3着にくるかどうかだ。ただし、オヤカタはグリグリの1番人気。この馬が勝ってしまうと、大した配当は望めない。

 導き出した馬券は、1番、3番、7番の馬連複と3連単のボックス。そして、この3頭の3連単ボックスに3着だけ10番を追加したフォーメーション。10番から3頭への3連複1頭ながし、とした。

 馬連複は、1番と7番の組み合わせを厚めに買って、トリガミ防止を図る。今日、一番の大勝負だ。1番が勝ってもトリガミにならず、1番が2着、3着になれば、かなりプラスになる算段だ。

 合計4枚の馬券を購入すると、キャリーバックを引きずって、大急ぎで笠松駅へとダッシュした。ちょうどやってきた名鉄・豊橋行きに飛び乗り、まずは金山へ。

 金山駅に到着する数分前にレースは発走する。中部国際空港セントレアに向かう列車への乗り換えのタイミングでは結果がわかるはずだ。が、今やもう気もそぞろ。金山へ向かう間、車窓の風景などまったく目に入ってこなかった。

 レースの発走時間が近づき、スマートフォンでライブ中継を見始める。ところが、こんなときに限って通信状態が悪く、レースの模様は見られずじまい。やっと電波も安定し、スモホの画面も鮮明になってきたのは、金山駅に到着する頃だった。

 結果はいかに!? 画面を凝視すると、そこに映っているのは、ほのぼのとした最終レースのパドックの様子。緊迫したこちらの気持ちとは裏腹の映像に、思わず「見たいのはそれじゃない!」と叫んでしまった(中継している側には何ら問題はないのに......)。

 仕方がない。映像は諦めて、結果だけをスマホで確認してみた。すると......、なんと馬連複と3連単のボックスで買っていた3頭のうち、最も人気のなかったゲラーデが1着! 1番人気のオヤカタが2着で、3着にもサンダルエチケットがきちんときていた!

 ついでに言えば、3着の穴候補と見ていたマインツが4着。「これって、4連単があったとしても当たったんじゃね?」と自画自賛したくなるほど、完璧な的中となった。

 この時点で、笠松だけでのプラス収支だけでなく、ここまでの交通費を加味しても元本以上となった。これで、このあとの旅が楽になる。すっかり気分をよくして、金山駅で乗り換えたセントレアに向かう特急列車の車内では、再び"脳内"旅行代理店「ツッチー・アイ・エス」のオペレーターに相談しつつ、この日の夜の予定をいろいろと考えてみた。

 それで、当初は一気に小倉まで行ってしまうことも考えていたが、せっかくだから博多で1泊して、博多の夜を満喫することにした。早速、ホテルの予約サイトを調べると、天神付近の個室型カプセルホテルの当日割引プランが出ていたので、これを予約。翌朝、天神のバスターミナルから北九州方面行きのバスに乗れば、小倉競馬場の目の前まで行けるのもありがたい。

......と、ここまで決めて、はたと気がついた。すでに、そんな疑問を感じていた方もいるのではないだろうか。

「馬券が当たったはいいが、払い戻しはどうしよう......」

 そうだ、地方競馬の笠松競馬の馬券はJRAの小倉競馬場では払い戻せない。

「しょうがない、週明けに笠松と相互開催している名古屋競馬があるので、そこに行きましょう。それに、九州まで行くのだから、熊本にも寄り道してささやかな復興協力をしてこよう」

「ツッチー・アイ・エス」のオペレーターは、勝ち馬券を手にして、気が大きくなっていた。

 思えば、1度は引退した名古屋競馬の女性騎手、宮下瞳騎手の騎手免許が8月1日付けで再交付される。つまり、現役復帰だ。開催がある翌週の火曜日(8月2日)には、うまくいけば、復帰初戦のタイミングに立ち会えるかもしれない。

 今後の旅のプランが一気に固まった。

7月29日、中部国際空港(LCCで)→博多(博多泊)
7月30日、博多(バスで)→小倉競馬場(小倉泊)
7月31日、小倉(JR「青春18きっぷ」で)→久留米(バスで)→佐賀競馬場。競馬のあと、佐賀(JR「青春18きっぷ」で)→熊本(熊本泊)
8月1日、熊本(全日空の割引運賃で)→中部国際空港(名古屋泊)
8月2日、名古屋競馬。名古屋(JR「青春18きっぷ」で)→東京

 うむ。完璧。宿泊はその日の戦績次第にして、途中の移動も勝ったら新幹線に変えればいい。

 福岡までは、大きな遅延もなく順調に移動した。しかし、実はこの時点で、極めて優秀だと思っていた「ツッチー・アイ・エス」のオペレーター(つまりワシ)は、すでに重大な間違いを犯していたのだ。そのことに気がつくまでには、まだ少し時間を要するのであった......。

(つづく)

土屋真光●旅人 Traveler&text by Tsuchiya Masamitsu