■「夏競馬」珍道中〜西日本編(3)

 夏競馬の「旅打ち」。第1ラウンドに選んだ笠松競馬では、最初のレースがタテ目でハズレ、次もトリガミ......。ある意味日常どおりとはいえ、早くも心が折れそうになる。

 エアコンの効いた室内で、同時に冷え込む財布の中身。今後の旅程を考えると、ここで散財するわけにはいかない。

 何が足りないのか? そうだ、今日はまだ食事をとっていないじゃないか。「腹が減っては戦はできぬ」である。そういえば、編集担当Tも「各地、各競馬場の食レポもよろしく」などと言っていた。

 とはいえ、ここでひと悩み。実はワシ、年明けから食事制限と運動による減量に取り組み、半年かけてその成果が出てきたところである。そんな状況にあって、"ギャンブル・フード"なんて、もってのほか。いわば、今のワシにとっては、水と油。というか、それは油と脂の"塊"みたいなもの。そんなものを食したら、リバウンド確定である。

 だいたい、この飲食代も5万円の中で「賄(まかな)え!」と言うではないか。居酒屋のアルバイトだって、交通費と賄いの食事は給料とは別だというのに......。これからは「ブラック媒体・スポルティーバ」と、心中で呼ぶことにしよう。

 さて、笠松はエリアで言えば、名古屋圏。名古屋と言えば、「名古屋めし」だ。場内で売られているのは、八丁味噌を使ったどて煮や、串カツなどのフライ物、そしておでんが多い。

 その買い出しに「特別観覧席」から1階に降りる前、顔見知りである場内実況の西田茂弘さん、通称「ジゲちゃん」を訪ねて、オススメを聞く。

「やっぱりこれだけ暑いから、もうそのまんま、どて煮とか串カツ食べて、スタミナつけるのがいいんじゃないですかねぇ」

 その言葉を頼りに、スタンド裏に並んだ売店を物色していると、暑さもなんのそのとばかりに、一番右の売店『マルキン』のおねえさんが「いらっしゃい! いらっしゃい!」と威勢よく声をかけてきた。

 このお店も、串モノとどて煮がメイン。珍しいものとしては、今川焼きを揚げた"揚げ今川"なんてものもある。粉モノ+あんこ+揚げとは、まさにデブまっしぐらの三段コンボや。だが、暑さで体力を消耗した今、逆にそこにそそられる。

 いやいや、いかん。ここは串もので我慢。味噌だれに浸った「やきとり」「とんちゃん」「肝焼き」の3つをチョイスした。「やきとり」は読んで字のごとくだが、焼かれた鳥モモに八丁味噌のタレが絡まっているのは、名古屋圏ならでは。「とんちゃん」は、いわゆるモツ煮込みを串に刺したようなもの。「肝焼き」はレバーだ。

 いずれも、1本100円。東京にある、その辺のお惣菜屋さんで買うより、安いし、うまい。あっという間にペロリと3串をたいらげてしまった。

 やばい!? これで逆に胃袋のエンジンがかかった。うおぉぉ〜ん! どこかのマンガ原作の、深夜ドラマの主人公のような気分だ。

 続いて、隣の『寿屋』をのぞくと、こちらは「イカゲソ揚げ」と「エビフライ」が串に刺さって売られていた。こちらも、両方とも100円。や、安い。

「イカゲソ揚げ」は太めのゲソに、カレー味の衣(ころも)がついている。かなり食べ応えがある。「エビフライ」は、普通のエビフライ。これが100円とは、逆に採算が心配になってくる。

 小腹も満たされたところで、次は第6レース。中央競馬から転入して2戦1勝、2着1回の7番ツクバキセキが断然人気で逆らいようがない。「ここも下手するとトリガミか......」と思いながら競馬新聞を凝視していると、8番ゴールデンリバーが面白い。前走のタイムが悪いわけではないのに、5番人気と意外と人気薄である。

「こいつだ!」

 そうひらめいて、ツクバキセキとゴールデンリバーの2頭を軸に、3連複で3頭に流す。1番安い組み合わせは、少し厚めに購入した。

 スタートして、ゴールデンリバーは4、5番手と悪くない位置取りだが、ツクバキセキがまさかの最後方追走。小回りの笠松競馬でこれは心配になる。

 しかし、向正面から徐々にポジションを上げていくツクバキセキ。4コーナーを回って猛然と追い上げてきた! しかも、ゴールデンリバーも一緒に伸びてきている!

 1着、ツクバキセキ! 2着は2番のビトクで、3着ゴールデンリバー! 堅い決着ながら、今回はちゃんとプラスになる的中となった。

「このまま連勝街道をひた走るぞ!」と気分も乗ってきたが、その後はさっぱり。途中、本命にした馬が連に絡みながら、スパゲッティーという名前を見て「糖質だしな」と理由で切った馬が1着。70倍という高配当をみすみす逃す痛恨事まで演じてしまった。

「もはや、今日はダメなのか」と思いながらも、この先、旅はまだまだ続く。限りある軍資金が減る一方の中、起死回生の一発を狙って、ワシは第11レースの検討に励んだ。

(つづく)

土屋真光●旅人 Traveler&text by Tsuchiya Masamitsu