午前2時のレアキャラスポットの様子。停車中の車はすべてプレー中。

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■ポケモンGOが性犯罪のエサになる

週末のある晩、プレジデントでも活躍する女性ライターが家に帰ると、マンションのエントランスで見知らぬ男性に声をかけられた。

「家の中に入れてよ。一緒に『ポケモンGO』しよう」

7月22日に日本での配信がスタートした「ポケモンGO」。全世界で1億ダウンロード、日本でも1週間を待たず1000万ダウンロード超えと、まさに世界的規模で社会現象を巻き起こしているモンスターゲームである。「ポケモンGO」とのコラボで、すべての店舗が「ポケストップ」(キャラクターやアイテム集めに必要な場所)となったマクドナルドでは、なんと株価が急上昇。アメリカでは、「自閉症の息子がピカチュウ欲しさに外に出た!」という心温まる記事も紹介されている。

しかし、「ポケモンGO」の影響はいいものばかりではない。7月26日、JRグループ7社、民鉄16社、地下鉄事業者9社の32社が共同で、施設内でポケモンが出現しないよう「ポケストップの削除」を求めて要請書を提出した。原子力発電所を持つ電力会社や裁判所、広島の平和記念公園なども同様の要望を出している。歩きスマホや、敷地内への立ち入りを懸念してのことだ。マクドナルド以外の「ポケストップ」は、ゲーム制作側が勝手に指定したものだ。先日、タレントの峰竜太氏も「自宅がポケストップになっている」とテレビで発言していた。家やマンションにプレーヤーが押し寄せることもありうるのだ。

事実、レアなポケモンが高い頻度で出現するとわかった場所では人出が急増している。都内の世田谷公園や代々木公園、上野公園などは、「○○の巣」と呼ばれるレアキャラの出現スポットだ。週末ともなれば、花見の時季と同じかそれ以上の大混雑になる。たとえば配信後初の週末には、新宿御苑に開園前から行列ができ、閉園直前に「ハクリュー」というレアポケモンの出現がわかると、御苑の外へ出る人の流れがストップ。閉園時間を過ぎても「帰りたくない」人が続出したという。

巷では、男性プレーヤーが女性プレーヤーに声をかける「ポケモンGOナンパ」も頻発していると聞く。プレーヤー同士ならはじめから共通の話題があるし、どれほどポケモンを集めたかがわかる「図鑑」を見せ合ったりすれば、簡単に会話も弾むだろう。渋谷の109やハチ公前はさながらハロウィンシーズンのような雰囲気になり、「どのキャラ出た? いいスポット教えようか」と女性に声をかける男性もいた。余計なお世話である。

この人気に危機感を覚えたニューヨーク州では、性犯罪者の「ポケモンGO」のプレイを禁止する方向で動いている。性犯罪者が「ポケモンGO」をエサに子どもに声をかけ、再び罪を犯さないようにするためだ。しかも「ポケモンGO」には、好きな場所にポケモンを呼び寄せられる「ルアーモジュール」という課金アイテムがある。これがもし犯罪者に使われたら……。ポケモンに引き寄せられた子どもが、危険な場所に近づいてしまうことになる。

冒頭の女性が経験したように、「家の中に入れろ」と言うのも行きすぎた行為だ。丁重にお断りしても、「もう知り合いじゃないすか」と相手は一向に引かないらしい。なかば引きはがすようにしてマンションに入り、ベランダから外を見ると、眼下には「水戸」「宇都宮」「前橋」など北関東ナンバーの車の列と、スマホを見ながら歩く大勢の人の姿が見えた。女性の家は、夜な夜な車で遠征するほど「ポケモンGO」的に恵まれた環境だったのだ。先のナンパも、女性ではなくレアポケモン目当てだったのだろう。ちなみにこの「家に入れてくれ」というオファーはその翌日にもあったそうだ。「ポケモンGO」プレーヤーの情熱は計り知れない。近所では、その日のうちにパトカーによるパトロールがはじまった。

しかし、30日になり、あるニュースが飛び込んできた。なんと、ポケモンの出現場所のシャッフルが行われたというのだ。今度はどこに「レアポケモン」が出現するのか。それは誰にもわからない。

(プレジデント編集部=文・撮影)