■「夏競馬」珍道中〜北日本編(9)

 北海道を行く「旅打ち」。

 最後の"勝負地"は門別競馬場。馬券は8レースから買った。

 ダート1700mの7頭立て。このところ2着続きの3番の馬が断然の人気を集めている。パドックで見ても、いい仕上がりだ。

 この馬の中心は動かしようがないだろう。

 でも、普通に馬連で買ったのでは面白くない。第一、配当が安い。ならば、馬単を買うのはどうか。それも、この馬を2着づけにした馬単だ。2着続きという成績は、能力上位は確かだが、一方で"詰めが甘い"タイプと見ることもできるからだ。

  その買い方で帯広では痛い目にあったが、プロ野球の一流のバッターは、三振した次の打席では、あえて前の打席で三振を喫した同じ球を狙うというのではないか。

 一度の失敗で懲(こ)りてなどいられない。ワタシは、そのプロのバッターのように、自分が痛い目に合ったのと同じ買い方で、今度はきっちり借りを返したいと思ったのだ。そうは言っても、ズボンのポケットの中にあった小銭を2等分して、300円ずつ馬券を買うだけだから、エラそうなことは言えないのだが......。

 頭として買ったのは、逃げる5番と、追い込む1番の馬。5−3、1−3の馬単2点勝負だ。

 逃げる5番は、直線半ばで早々に3番の馬につかまった。が、そこへ、末脚鋭く追い込んできたのが、1番の馬だ。

 ゴール板の少し手前で観戦していたワタシには、1番はわずかに届かなかったように見えた。一瞬、「またか......」とへたりかけたが、スローのリプレーを見てみると、今度はほんの少し1番の馬がかわしているように思えた。

 はたして、結果は?

 1番の追い込みが届いて、1着1番、2着3番、馬単1−3で的中!

 配当は1730円。今回の「旅打ち」企画で、やっと当たりらしい当たりがきた。

 払い戻し金額は、5000円ちょっと。これで、今晩のホテル代は確保できたと思うとうれしくなって、すぐに近くの売店でビールを購入。ひとりで祝杯をあげた。

 次の9レースは2歳戦で能力比較がよくわからず、6頭ボックスの馬連を買うと、一応馬券は的中したが、配当が安くて取りガミ。10レースは馬連1点で当てるも、220円という低配当で大した儲けは得られなかった。

 そして迎えた11レース。この日の最終レースだ。

 競馬新聞を見てあれこれ考えながら、場内に流れるテレビの解説を聞くともなく聞いていると、「単騎逃げ」という言葉が耳に飛び込んできた。4、5番人気の6番の馬にその可能性があるという。

 途端にピカッとひらめいた。

「その馬から買おう!」と決めた。

 鞍上も、ホッカイドウ競馬では最も全国に名の知れた五十嵐冬樹騎手。かつて、あのコスモバルクの主戦騎手を務めていたホッカイドウの名手である。これも心強い。

 6番の馬から、今回も馬単で4点勝負。

 なんと、これがまたしても当たった!

 予想どおり、6番の馬が単騎の逃げを打って、最後は1番人気の馬に詰め寄られるも、逃げ切り勝ちを収めた。

 馬単6−3の配当は、2760円。再び、ビール売り場へ駆け込んだ。

 札幌、帯広での"ボウズ"が嘘のように、この日は本当によく当たった。

 門別、サイコー!

 最終的に収支は1万2000円の儲け。「掛け金が少ない」とか「せこい」とか「オレならもっと儲かった」などという批判はあるかもしれないが、こういう勝負でもワタシはすごく楽しかった。十分すぎるほど、「旅打ち」を満喫できた。

 帰りは、無料送迎バスで札幌へ。高速道路を使って、およそ1時間30分の道のりだ。

 遠いが、その遠さが、今は待ち遠しい何かへのイントロダクションのように思える。ワタシはこの旅が、なんとか無事に終えられそうだという目処が立って、軽い達成感にとらわれていた。

 懐具合に少し余裕ができたおかげで、バスの中ではこのあとススキノで何を食べようかと、考えを巡らしていた。寿司屋は無理でも、ちょっとした居酒屋くらいなら行ける。この時期、まずはホッキ貝の刺身か。ウニも少し、それからホッケの開きに、じゃがバター。あとは......。

 そんな幸せな気分に浸っていると、ワタシはそのうち、心地よい眠りに落ちていた。

新山藍朗●旅人 Traveler&text by Niiyama Airo