■「夏競馬」珍道中〜北日本編(5)」

 夏の北海道を行く「旅打ち」。

 結論から言えば、札幌は惨敗だった。それでも、最も力を入れたクイーンS(7月31日/札幌・芝1800m)について言えば、まったくの見当違いというわけではなかった。

 わかりやすく言えば、「かすった」のだ。

 だからといって、競馬はかすろうが、かすらなかろうが、ハズレはハズレ。白か黒かで言えば、黒でしかない。むしろ、「あれを買っていれば......」などという悔いが激しく残る分、負け方としては"かすった"ほうがタチが悪い。
 
 その顛末についてはのちほど綴るとして、長旅の末、ようやくたどり着いた札幌競馬場の話を先にしておこう。

 競馬場への最もポピュラーな行き方は、札幌駅からJRで隣の桑園駅へ行き、そこから無料バスに乗る。

 バスは、どこかの競馬場とは違って、ほぼ5分おきにずっとあるし、たとえ駅から競馬場まで歩いても大した距離はない。時間があれば、競馬場近くの中央市場で新鮮な魚介、いくら、うに、カニなどの豪勢なランチを楽しんでから競馬場へ向かうのもいい。

 競馬場は2年前の夏にリニューアルオープンしたばかりで、施設は新しくてきれいだ。特に日本の競馬場で初めて設置された「もいわテラス」は、競馬も、札幌の街並みも楽しめて、その名の由来である藻岩山も展望できる、絶好の観光スポット。ここにはいくつかの屋台も出ていて、常に多くの人で賑わっている。

 場内グルメの1番人気は、正面スタンドの2階にある牛めし屋だという。インフォメーションにいる女の子が、「いつもすごい行列ができているんですよぉ」と教えてくれた。

 牛めしは、1杯700円。日々お世話になっている街の牛丼店に比べれば高いが、食べれば納得の値段である。

 とにかく、うまい! しかもボリューム満点。北海道限定ビールのサッポロクラシックをぐびぐびっとやりながら、この牛めしに舌鼓を打てば、「来てよかったぁ〜」と気分も高揚。満足感が頭の中いっぱいに広がる。

 競馬場のコースは、1周1600mあまりの芝コースと、その内側にダートコースがある。ローカル競馬場らしく右回りの平坦小回りコースだが、芝はクッション性のある洋芝。本州の競馬場で一般的な野芝ではないだけに、馬によっては得手不得手がある。

 それと、ある騎手から聞いた話によると、札幌には札幌特有の乗り方や仕掛けどころがあるとか。そのため、毎年のように札幌で騎乗している騎手のほうが、幾分アドバンテージがあるらしい。

 つまり馬券は「札幌では札幌をよく知る騎手から買うべし」。この格言(?)は覚えておいて損はない。本州のメイン競馬場ではあまりいい馬に乗せてもらえない、地味ぃ〜なタイプの騎手がよく穴を空けるので、そこは要注意である。

 さて、馬券は8レースから買った。同レースから、9、10と3レース連続してハズレた。

 8、9レースは、人気の福永祐一騎手騎乗の馬から勝負したところ、4着、3着に終わった。そこで、次の10レースでは福永騎手を買うのをやめたら、今度は(1着に)きた。なんだか、すごく嫌ぁ〜な予感がした......。

 とはいえ、次のメイン、クイーンSは本日最も自信のあるレース。オークス2着のチェッキーノ(牝3歳)が回避なら、ここはシャルール(牝4歳)でいける。

 初のGI挑戦となった前走のヴィクトリアマイルは惨敗(18着)だったが、それを除けば、昨年の夏からはずっと1着か2着。昨年末の条件戦から3連勝を飾って、今春オープン入りした上り馬である。さらに札幌は、過去3戦して1勝、2着2回。鞍上も、札幌を知り尽くした横山典弘騎手だ。

 この馬が連に絡むことには、かなり自信があった。ただ、相手が難しく、馬券は馬連で手広く8頭に流した。

 1点300円で、計2400円。ここまで3連敗だったうえ、同時開催の新潟の重賞アイビスサマーダッシュも購入したため、軍資金の余裕がなくなって、こんな中途半端な買い方になってしまった。

 道中はもう、7枠11番から発走したシャルールしか見ていない。

 小回りコースのセオリーどおり、前目のいい位置につけ、ピタリと折り合いもついている。最後のコーナーを手応え十分に回ってきたときには、もう「勝った」と思った。

 しかし、しかし、である。そのシャルールの外から、何かがすごい勢いで飛んできたのだ。

「なんだ!?」と思って目を凝らすと、これがなんと、馬券を購入するときに最後の最後で切った2枠2番のマコトブリジャール(牝6歳)ではないか。

「よせ! 来るな!」「来るなら、他の馬にして!」と叫んでも、マコトブリジャールの勢いは一向に衰えず、ついにはシャルールまでとらえて勝ってしまった。

 あぁ〜。長旅の疲れもたたってか、腰から崩れ落ちた。

 そういえば、この馬の鞍上・四位洋文騎手も札幌得意のベテランだった。そんなことは、後の祭りである。

 何より悔しかったのは、この馬を切った理由だ。函館駅を出るとき、駅で買った某スポーツ新聞には、クイーンSの過去のデータが掲載されていた。そこには、5月以降にレースに出走していない馬は1頭も来ていない、と記されていた。マコトブリジャールの前走は、4月末の福島。それで、「なら、消しだな」と安易に決断してしまったのだ。

 だが、その4月末の福島のレースは、重賞の福島牝馬S。同馬はそこを勝って、そのとき2着だったのが、シャルールだ。買い目は、十分すぎるほどあったのである。

 馬連の配当は、4120円。当たっていれば、払い戻しで万札が拝めた。ススキノでうまいもんが食えたなぁ......。

 悔しいことに、新潟のアイビスサマーダッシュは的中したものの、こちらは固い決着で馬券は"取りガミ"。

 本当に今日はなんていう日だ!(というか、東京を出発してから、そんな日ばかりだが......)

 もはや最終レースなんて、やる気ゼロ。すごすごと予約してあったカプセルホテルへと向かった。

 ススキノのきらめくネオン街を横目に、トボトボと歩いていく。結局その夜は、カプセルホテル内のレストランのようなところで、再びサッポロクラシックを飲んで、スパゲティーだが、焼きそばだか、よくわからないパスタ(?)を食べた。

(つづく)

新山藍朗●旅人 Traveler&text by Niiyama Airo