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 この夏のホラーゲーム総力特集にあたり、さまざまなゲーム有識者にその知見を書き記していただきました。それがこの徹底レビューです。
 今回は、週刊ファミ通やファミ通.comなどで長きにわたり海外発タイトル=洋ゲーを紹介し続けている、自称"洋ゲー冒険家"マスク・ド・UH氏による渾身のゾンビ語り第2弾。ロメロと『バイオ』を軸にした第1弾に続き、もうひとつのキーワード"サム・ライミ"に沿って惜しみなくゾンビ愛をぶつけてくれました。

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ゾンビホラーのもうひとつの傑作『死霊のはらわた』

 前回の稿では、ゾンビ映画の始祖にしてマエストロである映画監督、ジョージ・A・ロメロの作品から派生したゾンビ映画、そしてゾンビを中心に据えたホラーゲーム、とくに我が国が誇る最恐サバイバルホラーゲーム『バイオハザード』との関連を、膨大な無駄話を絡めつつ展開させていただいた。その続きとなる今回は、ロメロとはまったく違うゾンビ映画の系譜と誕生を掘り起こし、そこから垣間見えるゾンビ/ホラーゲームへの影響について考察したい。

 ロメロのゾンビ映画は、残酷描写も光るものの、哲学とも呼べる強いメッセージが内包されており、その哲学がロメロの映画をほかのゾンビ映画群とは違うステージに押し上げているのが特徴だ。しかしその哲学は、映画の娯楽性と必ずしもイコールではない。

 ロメロのゾンビ映画は、ある意味でディザスター(大破滅)系であり、ゾンビ役として多くのエキストラや、死滅した世界を表現するための広大なロケーションなどが必要になる。大作主義とも言えるハリウッドスタイルの映画製作を嫌ったロメロであるが、その映画はインディペンデントの枠内で考えると、相当大掛かりなものとなる。

 こういうジレンマのもとにあってもゾンビ映画がB級映画の代表ジャンルに成長できたのは、アンチ・ハリウッドスタイルのもうひとつの傑作の存在が非常に大きい。ロメロの『ゾンビ』以降に誕生したその作品が、『死霊のはらわた』(原題『Evil Dead』北米1981年・日本1985年)だ。

 監督は、『スパイダーマン』シリーズで、いまやハリウッドメジャーの監督として不動の地位を築き上げたサム・ライミ。『死霊のはらわた』はライミのデビュー作ながら、ロメロの『ゾンビ』と並び、以降のホラー/ゾンビ/スプラッター映画に多大なる影響を与えた。本題に突入する前に、この傑作が誕生した背景について解説しておこう。

 『死霊のはらわた』は、もともとは1978年にミシガン州の大学生だったサム・ライミと親友のブルース・キャンベルら、ごく少人数かつ超低予算で撮影された8ミリフィルムによる自主映画『Within the Woods』が母体となっている。当時、地元の映画祭で上映されて大好評となり、すぐに劇場版製作へと話が進む。

 『Within the Woods』は、とくに理由もなくブルース・キャンベルが死霊に取り憑かれてヒロインを追いかけ回す内容だったが、そこにクトゥルフの死者の書"ネクロノミコン"の設定を加え、気づけば1980年代から90年代、そして2016年現在へと繋がる壮大なゾンビ神話が誕生したのだ。

 とはいえ、それは後付けの話。『死霊のはらわた』でのライミの目的は観客の度肝を抜くこと。そこでくり広げられたのが、ロメロのような哲学やメッセージ性を一切排除したライミ流の世界観だ。徹底的な人体破壊描写と小気味良いスピード感、やりすぎを通り越した血糊の使用量、そしてコミカルなギャグシーンなど、『死霊のはらわた』は、既存のホラー映画をあらゆる意味で圧倒していた。

 そんな映画史を塗り替える傑作でありながら、『死霊のはらわた』が日本に上陸したのは北米公開から4年後のこと。リリースされた当時のビデオも正規品とは思えない画質の悪さだったが、それがかえってアングラ感を増幅させ、以降のスプラッター映画ムーブメントの牽引役となったわけだ。

 その後、『死霊のはらわた2』(原題『Evil Dead 2: Dead by Dawn』)が1987年に登場。これは続編というより1作目をメジャー資本でリメイクしたような内容だが、残酷度が薄まったぶんコメディ路線とスピード感が倍増し、続く『キャプテン・スーパーマーケット /死霊のはらわたIII』(原題『Army of Darkness』1993年)にて、『死霊のはらわた』サーガはいちおうの完結を迎える。以降サム・ライミは、『ダークマン』(1990年/北米版ファミコンのNESほかでゲームリリースあり)にてヒーロー映画の手腕を買われ、『スパイダーマン』の監督という大役を担い、一流映画監督への仲間入りを果たしていくのだ。臓物から現ナマ! Cash from Guts! これがアメリカン・ドリームってヤツだ!

 ここまでが、映画史から見た『死霊のはらわた』伝説のあらましだ。『死霊のはらわた』がなければ、その後に続く『Zombio/死霊のしたたり』(北米1985年・日本1987年)もないし、ピーター・ジャクソンの『ブレインデッド』(日本1993年)の存在もなかっただろう。そしてこれらの"はらわたフォロワー"とも呼べる映画作品群が、ホラーゲームに与えた影響が多大すぎる事実は一般常識だろう(なワケがない)。

 というわけで、『死霊のはらわた』とサム・ライミの偉大さをご理解してもらえたところで、やっと"死霊のはらわたゲーム大全"本題となる。皆様、たいへん長らくお待たせしました!

ヤツらはこんなに『はらわた』が好き

 『死霊のはらわた』のビデオゲームは、現在2016年の時点で6本。ホラー映画のゲーム化としてはこの本数はかなり多い。しかもじつはすべて日本ではリリースされていないうえ、ほとんどが旧世代のコンソールマシン用なので実際にプレイするのは厄介だ(アプリ版なら問題なく日本でも遊べるのが救いといえば救い)。オラが国のサイコーのボンクラ映画として、北米では『死霊のはらわた』が愛され、かくも多くのソフトとなっている。以下、知られざる『死霊のはらわた』ゲーム全作品のレビューをお届けしよう。

◆Evil Dead (Commodore 64/1984年/Palace Software)

 前回も取り上げたが、もっとも古いゾンビホラーゲームのひとつとされている。閉じ込められた山小屋と地下室でのゾンビとの攻防がゲームのメインとなっており、ビデオレンタルで人気が再燃していた時期に合わせてリリースされた。映画の追体験を目的としているため、物語は非常に忠実。映画と同じ登場人物で構成され、最後に死者の書を回収して暖炉で焼却すればクリアとなる。当時からマニアックなタイトルだったため流通数が少なく、現在入手するのは大変困難なソフトでもある。なんとなく画面構成が『スウィートホーム』に似てると思うのは気のせいか。

◆Evil Dead: Hail to the King (PS・DC/2000年/THQ)

 Commodore 64版から16年......生まれた子供が高校生となるぐらいの月日を経てリリースされたのは、まさかの『バイオハザード』化した『死霊のはらわた』だった。どれだけ似ているかは前回の記事でも指摘したが、内容も挑戦的。映画『III』から8年後の設定だが、映画でいう『2』と『III』を合体させたようなストーリー。再び死霊に襲われて恋人を奪われたアッシュが、山小屋からスタートして死霊の森を探索し、死者の書を読み上げてタイムスリップ! 後半戦は中世の世界でチェンソーを振り回して死霊やデカいボスキャラと死闘! 難度も高ければ完成度も高く、サム・ライミ本人も「4本目の『死霊のはらわた』」と認める仕上がりは、筆者を含むすべてのボンクラゲーマーが遊び倒すべき傑作タイトルと断言できる。しかし残念ながら映画版権の関係から日本版ローカライズは見送りになってしまった。ちなみに本作以降のコンシューマー三部作は、すべてTHQブランドからのリリースとなっている。

◆Evil Dead: A Fistful Boomstick (PS2・XBOX・PC/2003年/THQ)

 こちらはタイトルこそ『Evil Dead』、すなわち『死霊のはらわた』だが、内容は映画の設定をいっさい受け継いでいない番外編に位置する。死者の書を研究するイカれた学者がテレビで結果を発表したところ、電波乗った呪詛の念が全国の死霊どもを総決起させてしまうというものだ。

 もともとRockstar Gamesがリリースした暴動鎮圧アクションゲーム『State of Emergency』のゲームエンジンを流用し、たいへん短い期間で開発されたタイトルだった。そのため映画へのフォローが完全に欠落していたのが残念極まりないが、ゲーム自体は爽快感溢れるゾンビぶっ殺しゲームに仕上がっており、森や山小屋ばかりだったバトルの舞台が市街地になったのは新鮮だった。

◆Evil Dead: Regeneration (PS2・XBOX・PC/2005年/THQ)

 前作の反省を踏まえ、「今度はきっちり映画を原作にしたゲームを作る!」という誓いがあったかどうかは定かでない(たぶんあった)が、『死霊のはらわた2』の後日談をベースに物語を再構築。死霊に取り憑かれた主人公アッシュが、山小屋の惨劇の犯人として誤認逮捕され、精神病院に収容されてしまうという衝撃的すぎるオープニング。さらに死者の書が院内のマッドな医者のせいで読み上げられてしまい、病院は死霊だらけに! アッシュの新しい相棒になるサムは、サム・ライミ監督の実弟テッド・ライミが声優を担当(サムというキャラクター名は、もちろん兄貴から拝借)。映画の忠実なゲーム化だけに終わっていないところが高評価だが、ゲームデザインも奮っており、死霊をぶっ殺すフィニッシュ・ムーヴの豊富さには驚くばかり。もちろんアッシュの声優はブルース・キャンベル!

◆Evil Dead (iOS/2011年/Trigger Apps LLC)

 目下のところ無条件でプレイできる『死霊のはらわた』アプリゲーム。SD風のルックスとなったアッシュが、映画の物語に沿って死霊どもを倒すのだが、SDでも内容はしっかりしており、山小屋から死霊の森、タイムスリップの異空間まで登場するのだから、ナメてはいけない。キャラが可愛いすぎてホラーゲームとしての緊迫感が皆無なのが残念なところか?

◆Army of Darkness Defense (iOS/2011年/Backflip Studios Inc.)

 こちらは世にもめずらしい『キャプテン・スーパーマーケット』のアプリゲーム。つぎつぎと城に攻め込んでくるドクロ騎士たちを、防御を固めて撃退するディフェンス型の横スクロールアクションに仕上がっており、課金で装備能力がアップする。ゲームとしての小粒感は否めないものの、あの映画で展開した中世の死霊どもとの戦いが再現されているのだから、これは燃える。キャラは例によってSDだが、いつかきちんとSDでなく、さらにコンソールでリリースしてほしいと願うばかりだ。

 以上で、『死霊のはらわた』ゲーム大全の章を締めくくりたいところだが、コーナーの最後にもう1本、日本からの『死霊のはらわた』フォロワーなタイトルに触れておきたい。鬼才クリエイターにして、筆者とも長きにわたり洋ゲー語り記事にてコンビを組んできた盟友、須田剛一兄貴が放った渾身の作品といえば、もうおわかりだろう。『Shadow of the Damned』(PS3・Xbox 360/2011年/エレクトロニック・アーツ)だ。本作には、もう完全に『Evil Dead』としかいえないシークエンスが登場し、元ネタ好きなら堪らない演出が披露されている。さすが須田さん、ここで『死霊のはらわた』を持ってくるとは、まさしくボンクラの鑑でしょ! そして、サム・ライミで始まりSUDA51で終わるなんて、『死霊のはらわた』ネタ以外では考えられないオチである。Ash to Ash!!!!

 言及しそびれたが、現在Hulu独占で、2015年秋から北米でスタートした ドラマシリーズ『Ash vs Evil Dead』、邦題『死霊のはらわた リターンズ』が絶賛配信中だ。もちろん監督はサム・ライミ。主人公のアッシュもむろんブルース・キャンベルだ。つまり3部作の正統な続編として制作されており、あの死闘から30年が経過し、すっかりオッサンになった、だがトレーラーハウス住まいでスーパーの店員であるアッシュが、またもや死霊たちとの戦いに巻き込まれていくというもの。今回紹介したゲーム群と世界観を一にするこの作品。プレイのお供として鑑賞するといいだろう。

ゾンビゲームの新世紀〜101匹ゾンビ大行進!

 ここからは、前回紹介しきれなかったゾンビゲームを一気呵成にピックアップしよう。少々レトロ気味なタイトルから、ロメロの系譜とは別の進化を遂げた新世紀のゾンビゲーム、そして今後期待の新作タイトルまでを扱う。まずはロメロと関係ありそうでなさそうで、やっぱり関連あるかもしれない歴史的名作タイトルから紹介したい。

 それはFPSを生み出した記念すべき作品としてもよく知られる『ウルフェンシュタイン3D』(SFC・PC/1992年)だ。プレイヤーはナチスが支配する秘密基地"ウルフェンシュタイン城"に監禁されたアメリカ兵となり、迫り来る敵を主観視点で迎撃しながら脱出を目指しつつ、ヒトラーの人造人間計画を阻止するのが目的となる。

 日本ローカライズ版ではラスボスが人間核弾頭ドルフ・ラングレンのようなターミネーター男に差し替えられていたが、北米版ではサイボーグ化したヒトラーだったのだ(そのせいで欧州の一部では発禁に)。さらに本作にはビデオゲーム史上初の"ナチゾンビ"が登場する。

 ナチゾンビは、ロメロ以降にイタリアやスペインなどで製作された、超が付くB級ゾンビ映画に常連として登場するキャラクター。これがFPSの誕生とともに取り込まれているのは非常に感慨深い。また、開発者であるFPSの始祖ジョン・ロメロは、名前がロメロだけに(?)ゾンビ映画やスラッシュメタルを愛好するボンクラ野郎。もちろん本人も勝手にシンパシーを感じているようで、過去のインタビューにて、「ジョージ・A・ロメロの存在なくして自分のゲームは産まれなかった」と語っている。

 『Corpse Killer』(AC・Sega CD・3DO/1994年)は、アーケード専用筐体向けに開発されたガンコントローラー対応のシューティングゲーム。後にメガドライブの海外版GENESIS専用タイトルとしてSega CD、そして3DOに移植された。当時の最新技術だった実写取り込みによるゾンビは新鮮で、ヘッドショットによる残酷描写も際立っていたが、内容はロメロというよりはマカロニゾンビ映画風であり、ジャングルから都市部まで、あらゆる場所でゾンビを迎撃。案内役として登場するジャマイカ人がイイ味を出していることにも注目したい。

 開発は、説教過多なオープニングでお馴染みの、パジャマパーティー監視ゲーム『ナイトトラップ』(1993年)を送り出したデジタル・ピクチャーズ社。同社は同時期に実写取り込みを採用したさまざまなインタラクティブなアクションタイトルをリリースしていたものの、3Dフルポリゴン化の波に押されてか、1996年にはクローズしている。

 『Corpse Killer』自体は、日本では3DO版がその末期1995年にアクレイム・ジャパンからリリースされている。また、裏を取り切れていないが、日本国内のゲーセンにてアーケード版が稼働していたという目撃情報も寄せられている。いかんせん20年以上前の話、その足跡を追うのが困難だ。

 そしていよいよ国産のゾンビゲームの傑作ガンシューティングシリーズ、『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』(AC・SS・DC・PCなど/1997年〜)が登場する。

 『バイオハザード』から遅れること約1年、セガがアーケード専用の筐体向けに開発したこのガンシューティングは、ゾンビ映画の世界を再現するというよりは、ガンシューティング特有の爽快感に狙いが絞られている。ほとんどのゾンビは雑魚キャラ扱いだが、ヘッドショットを狙うと早く倒せるなど、ゾンビ映画のお約束が盛り込まれているほか、チェーンソー男や吸血コウモリなど、ゾンビ以外の敵も多数登場。豪快な演出が人気となってシリーズ化され、派生タイトルも数多く、無意味な文字列を弾幕のように打ち込んでゾンビを倒す『ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド』まで大ヒットするという珍現象にまで至るのだから、世の中おもしろい。

 その流れで忘れてはいけないタイトルが、『ゾンビリベンジ』(AC・DC/1999年)だ。『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』から派生したベルトスクロール型ゾンビ討伐ゲームであり、キャラクターや敵の種類、物語の設定などは同じだが、特筆すべきは本作だけのオリジナルキャラクター"毒島力也"の存在。某松田YOU作そっくりの容姿で、拳銃と肉弾格闘戦でゾンビどもをビシバシ倒す毒島のカッコよさは永遠に不滅だ。これがやりたくてゲーセンで連コインしていた思い出も懐かしい(後にドリームキャストにてコンシューマー版がリリースされる)。

ロメロ系とライミ系、そしてシューティングとの合流

 そして時代は2000年代に突入し、2005年に本家『バイオハザード』も『4』になってリニューアルを遂げる。それに伴って洋ゲーのゾンビゲームは、動きと量のふたつで劇的な進化を見せ始めるのだが、それはこのころに続々と製作・公開されていた新たなタイプのゾンビ映画の流行とも関係しているのだ。『28日後...』(イギリス2002年)やリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)を境に、走るゾンビ"ダッシュゾンビ"が急増し、その勢いはすぐにゲーム市場にも到達。ジャンルがさらに細かく分かれていく。

 そんなさなか、ロメロの同名作品をゲーム化し、唐突にリリースされた『Land of the Dead: Road to Fiddler’s Green』(Xbox・PC/2005年/Groove Games)は、ロメロの名を公式に冠した初のビデオゲームだ。「それなら、さぞかし内容も」と期待するのは自然だが、実情はさにあらず。開発途中でペンディングされていたFPSのゾンビゲームを、「ロメロの新作公開に合わせてチョイチョイ手を加えたらリリースできんじゃね?」というような話がパブリッシャーであったのではと思わせるほど、映画とはまったく内容の違う代物となっていた。したがってアーシア・アルジェントもデニス・ホッパーもトム・サビーニも登場しないうえに、FPSに慣れた筆者でもかなりの3D酔いが誘発される、ある意味ホラーな仕上がり。コンソールとしては北米でXboxのみ発売タイトルだったので、現在は少々レアなタイトルとなっている。

 公認タイトルが残念な結果に終わった一方で、今度は極東の島国からロメロの美学がたっぷり盛り込まれた和洋折衷のゾンビゲームが登場する。カプコンが放ったHDゾンビアクションゲームの傑作『デッドライジング』(Xbox 360/2006年)だ。

 とにかく凄まじい数のゾンビが登場し、片っ端から創意工夫の殺りかたで倒せる爽快感が売りとなっている本作は、その『ゾンビ』との類似性からパッケージに「このゲームはジョージ・A・ロメロの映画とは無関係です」という注意書きが記載されるほど。ここで誤解してはならないのは、現在『ゾンビ』の配給権を持つMKRグループから内容が酷似した盗作として連邦地裁に訴えられたからこの注意書きが記載されたのではなく、実際は訴えられないように先んじて記載されたものだということ。事実、MKRが訴訟を申し立てたのは2008年。ゲームの発売から2年が経過しており、地裁は「(非常時において)ショッピングモールに立て篭るアイデアはすでに一般常識化している」との理由で、MKR側の申し立てを却下している。

 ジャーナリストのフランク・ウェストがゾンビに占領されたショッピングモールに閉じ込められ、そこに取り残された人々を救出しながら、"サイコパス"と呼ばれる狂気に取り憑かれた人間たちと戦う物語は、まさしくロメロの『ゾンビ』そのもの。この数の恐怖、圧倒的な戦力差からくる絶望感こそゾンビ映画のケレン味だ。それはゾンビが走ろうと走らなかろうと同じこと。これまではマシンスペックのために適わなかった数の恐怖が、当時の最新ハードの力を見せつけるように実現されただけに、プレイヤーに与えたインパクトは絶大。本家『バイオハザード』では見送られたザコとしてのゾンビの恐怖が、メガ盛りになって憑依した感がある。

 さて、『バイオハザード』がアクション性の高いシリーズになるにつれ、その敵もゾンビからよりアクション性の高い生物にシフトしていったが、これを受けてか、今度はそれまで生身の人間を敵としていたFPSスタイルの戦争ゲームに、急速にゾンビが合流を開始する。

 その先陣を切ったのは、ダッシュゾンビに追われる狂乱状態を確信犯的に再現した『LEFT 4 DEAD』(PC・Xbox 360/2008年)にほかならない。この作品のゾンビの高速感は凄まじく、ビデオゲームにおける敵の総量やスピード感など、何もかもを破壊した。ロックンロールに対するデスメタルのようなスピード感の違いもさることながら、ゾンビ映画の撮影現場という設定がじつに明快。「深い理屈はいらねえから、とにかくブッ殺せ!」というパッションが伝わるタイトルだ。

 『Shell Shock 2: Blood Trails』(PC・Xbox 360・PS3/2009年・日本未発売)は、ベトナム戦争を舞台にした残虐描写で有名な戦場アクションゲーム『Shell Shock NAM’67』の続編。もともと戦争がモチーフの硬派なゲームだったはずが、いきなり続編ではベトナムのジャングルでゾンビと戦う『地獄の謝肉祭』っぽいものに謎の路線変更を果たし、そして見事に砕け散った。そもそも『地獄の謝肉祭』が酷くチープな『ゾンビ』の模倣作品であるため、あながち無関係ではないと考えて取り上げたが......やっぱり関係ないかもしれないと軽く後悔。まあ忘れよう。

 戦場を舞台にしたリアルなFPSとして人気を誇るタイトルの真打ちといえば、やはり『コール オブ デューティ』シリーズだろう。そのオマケモードとしてナチゾンビが登場したのは本当に本当に衝撃的だった。前述のとおり、起源は『ウルフェンシュタイン3D』にまでさかのぼるナチゾンビであるが、まともに考えればゲームに登場するような代物ではない。だが『コール オブ デューティ』はもともと第二次世界大戦の戦場を舞台にしたアクションシューティング。さらにオマケモードには、リアルさとはかけ離れたトンデモ兵器も投入している。ゾンビは気づけば単なるオマケを越えた存在にまで昇華していたのだ。

 太平洋戦争が舞台となった日本未発売の作品『Call of Duty: World at War』(2007年)には、ナチゾンビを生み出したB級映画ですら考えつかなかった旧日本軍のゾンビが登場! 2010年リリースの『コール オブ デューティ ブラックオプス』に至っては、大型ダウンロードコンテンツとしてジョージ・A・ロメロ監修&本人がゾンビとしてゲームに降臨する『Call of the Dead』というトドメの一発が放たれ、ゾンビゲームはここで頂点に到達する。

 FPSにRPG的な成長要素とハック&スラッシュを加え、さらにマップをオープンワールド化した『デッドアイランド』(PC・PS3・Xbox 360/2011年/スパイク)も凄まじいタイトルだった。『デッドアイランド』は、これまでゲームに登場したあらゆるタイプのゾンビが登場するゾンビゲームの決定版。リゾートで有名な南国の島が唐突にパンデミックに襲われ、ゾンビだらけになってしまう内容で、南海の孤島が舞台といえば映画『サンゲリア』(1980年日本公開)をイヤでも連想してしまうが、登場するゾンビはどちらかというと『28日後...』以降のダッシュ系。ノロノロ歩きのゾンビがこちらを発見するとダッシュで襲いかかってくる演出は本作独自の恐怖の感覚をもたらす。『デッドライジング』のようなオリジナル武器の作成もあれば、クルマに乗り込んでゾンビを次々と跳ね飛ばす豪快なプレイも可能。その凄まじい残酷描写は日本版発売の際に相当な修正が加えられたほどだ。

 ゾンビ発生の原因が密林の毒ガス工場だったりするあたりは1981年のマカロニゾンビ映画『ヘル・オブ・ザ・リビングデッド 死霊の魔窟』そのままの展開なので、『サンゲリア』っぽい設定といい、エクストリームな残虐描写といい、ロメロ映画よりイタロゾンビ映画のケレン味を再現した異色のゾンビゲームと分類したい。

ゾンビはこの先どう生き残るか?

 最後にまた近年の国産ゾンビゲームから、ある怪作にも触れておきたい。本稿で再び登場の奇才クリエイター須田剛一が放った、お色気ゾンビアクションゲーム『ロリポップ・チェーンソー』(PS3・Xbox 360/2012年/角川ゲームス)だ。

 本作ではバカっぽさをライミ系に振り切りながらも、じつはSUDA51の真剣なゾンビ愛が炸裂しているのが見える。セクシーなチアガールのジュリエットがゾンビに支配された学園を救うため、ミニスカ姿でチェーンソーを振り回すバカっぽさ(最高賛辞)に振り切ったおかげで、全世界100万本突破のヒットを記録。ストーリーは、過去のゾンビ映画の影響を感じさせないオリジナルテイストだが、主人公の通う学校名がサン・ロメロ高校だったり、オバノン牧場やフルチ・ファンセンターといったオマージュ【※】は、ゾンビ映画マニア以外にはわからないレベルの小ネタ。ポップな中にもSUDA51のマニアックなセンスが光る、痛快なタイトルだ。

※オバノンは『バタリアン』監督のダン・オバノンに、フルチは『サンゲリア』監督のルチオ・フルチに由来。

 ゾンビゲームのトレンドの移り変わりは早く、2016年夏現在の主流はサンドボックス型ゲームデザインによる籠城戦がメイン。すでにリリース済みでオンラインプレイが地獄絵図と化している『7Days to Die』(PC/2013年/The Fun Pimps)や、同じく籠城型のオープンワールドMMOゾンビゲーとPvP主眼の2タイトルに分割された『H1Z1』(PC/2015年/Daybreak Game Company)、凄まじい数のダッシュゾンビが襲いかかるサバイバルホラー『Days Gone』(PS4/発売日未定)などなど、完全新作タイトルが目白押しとなっており、期待はまるで土左衛門ゾンビの腹のように膨らむばかりだ。

 もちろん今回の稿から漏れたタイトルも山ほどある。"西部劇・ミーツ・ゾンビ"をオープンワールドで初めて実現させた『レッドデッド・リデンプション: アンデッド・ナイトメア』(2011年)や、籠城戦ゾンビゲームの傑作『State of Decay』(2012年)、プレイヤーみずからがゾンビとなって仲間を増やす『Stub the Zombies』(2005年)など、珍作怪作がまだまだ目白押しなのだが、残念ながら文字数が完全に限界量を突破したため、またの機会に譲りたい次第。

 そんななかホラーゲームはまた、新しい一歩を模索している。幻となったデモ『P.T.』しかり、プレイステーションVRの体験デモとなった『Kitchen』しかり。この『Kitchen』が2017年1月に発売が予定されている『バイオハザード7 Resident Evil』となる。そのプレイステーション4版の体験版たる『biginning hour』のダウンロードは、6月末の時点ですでに200万超え。ネット上を感想、攻略、賛否など、いろいろな言説が飛び交うさまを見ていると、皆『バイオ』が"キング・オブ・ホラー"であり続けてほしいと願い、期待していることがよくわかるではないか。

 多様に分岐したゾンビゲーム/ホラーゲームはVRも本格的となるこの2010年代を生きる我々に、どんな悪夢を魅せてくれるのであろうか? 全世界のクリエイターたちがいま、恐怖の臨界点に到達すべくシノギを削っているのだ。そして我々は、平和の中で恐怖を味わいたがる、真に奇特な生き物なのである。

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