石平氏が投じた「施設の防犯体制」をめぐるツイートが炎上(画像は公式サイトより)

写真拡大

男一人の凶行を、「警備員や職員さんたちは途中で食い止めることができないのか」――。神奈川県相模原市の障害者施設で起きた入居者殺傷事件を受け、評論家の石平(せき・へい)氏が投稿した「施設の防犯体制」をめぐるツイートが物議を醸している。

石平氏は続く投稿で「問題提起をしただけで職員や警備員を批判したわけではない」という趣旨の釈明をしているが、ネット上では「論点をすり替えている」との批判が止まず、「炎上」状態になっている。

犯行当時、職員8人、警備員は1人だった

2016年7月26日未明、知的障害者が入居する福祉施設「津久井やまゆり園」で事件は起きた。

容疑者の男性は1階の窓ガラスを割って施設に侵入し、持参した刃物で入居者らを次々と刺していった。これまでに少なくとも男女19人が死亡、26人が重軽傷を負っている。戦後に起きた殺人事件としては、犠牲者の数が最大級となった。事件発生当時、施設内には入居者のほか、夜間勤務の職員8人と警備員1人がいた。

こうした事件をめぐり、中国出身で拓殖大学客員教授の石平氏(ツイッターの名義は「石平太郎」)は26日朝に更新したツイッターに、

「男一人が次から次へと39人に凶行を及ぼしたのに、警備員や職員さんたちはそれを途中で食い止めることができないのか」

と綴った。施設職員の防犯対応を批判しているように受け取れるこの投稿は、ネット上で激しい批判を呼ぶことになった。石平氏の投稿に対しても「簡単に批判的意見を述べられるのは不愉快」「職員を批判するような事はやめてください」などと批判的なリプライ(返信)が殺到した。

だが、石平氏は寄せられた批判に対して「疑問を呈しただけ」「批判は的外れ」などと反論。続くツイートでは、「障害者は自分自身を守りきれない弱者だから、施設は当然、彼らを守る義務がある」と持論を展開。その上で、

「あんな悲惨な事件が起きたから、施設の防犯体制に疑問を呈するのはむしろ当然。私の聞き方は悪かったかもしれないが、疑問1つも許さないのは良くないと思う」

と重ねて主張し、自説を曲げなかった。

介護施設は「警備どころではない」

このように石平氏は自身の投稿を「問題提起をしただけ」との主張を繰り返しているが、ネット上では「論点をすり替えている」といった批判が止まない。ツイッターやネット掲示板には、

「あんな書き方されたら議論も何もないよね。あの疑問を投げかける時点でナンセンス」
「なんで警備問題に歪曲してんだろう?」
「〜はできないのかって常識的に考えて批判的意味合いを含んだ問題提起だろう」

といった投稿が相次いで寄せられている。

さらには、障害者施設などの職員とみられるユーザーからも「実態を全く理解していない」との異論が続々と上がっている。その多くは、手薄な深夜の勤務体制や警備体制などについて、自らの労働環境を引き合いに訴える声だ。

「私は老人福祉施設に勤めてますが、夜勤1人に対して入居者30人弱を見てるんです。バラバラにあちこち居る状況じゃ、守ろうと思っても無理です」
「施設の夜勤はヘタしたら女性職員2人くらいの場合もあるから」

こうした指摘を受け、石平氏は「施設の大変な状況がよく分かった」と投稿。だが、その上で、

「それでもわれわれの社会は問わなければならない。施設の防犯体制に問題はなかったのかだ」

と繰り返した。だがこの投稿にも、「介護施設なんてどこも資金や人もぎりぎりなのに警備どころではない」「ちょっと無知すぎるのではないですか」と手厳しい返答が寄せられている。

26日夕、石平氏は「私の呈した疑問は『批判』との誤解を生んだことには素直にお詫びしたい。申し訳ございませんでした」と謝罪。だが、「疑問を呈したこと自体は間違っていないと思う」とも綴っていた。