キャンプで好調を維持して、山形とのプレシーズンマッチも出場。それだけに、開幕戦でのベンチ入りに向けて焦りがあった。写真提供:大宮アルディージャ

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 好調のチームをピッチ外から眺めるしかない――。そんな悔しさを胸に、怪我からの復帰へ向けて必死にトレーニングを続けているのが黒川淳史だ。Jrユースから大宮に所属し、今季からトップチームにプロ選手として昇格。
 
 その後のキャンプ、そして山形とのプレシーズンマッチにも出場してインパクトを残した。だが……。FC東京との開幕戦でのベンチ入り、そして出場すら可能な位置にいた期待の新人を左膝前十字靭帯損傷という悪夢が襲った。
 
 それでも、絶望はしていない。「身体を鍛え直すチャンス」と捉え、日々を前向きに過ごす。徐々にプレー強度を上げ、少しずつJリーグデビューに近付いている現状を、才能豊かな若者はどう捉えているのか。その胸中を前編・後編に分けてお届けする。
 
――◆――◆――
 
――思い出すのは嫌かもしれませんが、怪我をした状況を話してもらえますか?
 
 あれは自爆です。(左膝前十字靭帯を損傷する前に)相手との交錯で左足を痛めていて、軽く引きずっていました。その後のプレーで、変な態勢のまま無理に右のアウトサイドでトラップしようとした時に……。その日はちょうど暑かったのでグラウンドが乾いていて、詰まる感じで左足が伸びきってしまった。
 
――靭帯が切れる音は聞こえましたか?
 
 ブチって鳴りましたね。最初は足が変な方向に曲がって折れたのかなって思ったんですが、膝だったので「切っちゃったんだろうな」と。痛かったんですかね。実はあんまり憶えていないんです。けど、音だけははっきりと聞こえました。トレーナーも、ピッチの外まで音が聞こえたと言っていました。
 
――直後は、ここまで重傷だと思いましたか?
 
 直後もそうですし、検査の結果が出るまで軽い怪我であることを願っていました。でも、自分の身体ですから。ユース時代に前十字靭帯を切っている仲間がいたから、どれくらい時間が掛かるかは分かっていましたしね。
 
――当時のプレーを後悔していますか? その前に交錯して、違和感があった時点でプレーをやめていれば、とか。
 
 やめておけば良かったな、とは。でも、あの時はキャンプからずっといいパフォーマンスを示せていて、さらに結果を出そうと前のめりになっていましたし、同時にちょっとした焦りもあったんです。
 
 年齢も年齢(負傷当時18歳)ですし、交錯してちょっと痛いだけでプレーを止めるわけにもいきません。「アピールしなきゃ」って気持ちもありますし、僕は痛みがあってもプレーしちゃうタイプなんです。
――それまでは順調でした。FC東京との開幕戦でベンチ入り、そして出場するのではと周囲は思っていました。
 
 SNSとかで自分の話題が回ってきたりしますから、高ぶりはありました。ユースの後輩たちや友人が自分の記事をリツイートしてくれていたり。今だったら、開幕戦のベンチ入りに向けて焦り過ぎていたのかなって振り返れますけどね。
 
 ただ、「1試合1試合、結果を残さなければ」「いつ外されるか分からない」という状況でしたから。実はトップチームに上がる直前にも怪我をしていて、キャンプに合わせて復帰したので、まだ100パーセントではありませんでした。
 
――その状態でもあれだけ戦えたのは、自信になっていたのでは?
 
 ある意味で、手応えを感じてはいました。ただ、山形戦は入れ込み過ぎていました。開幕戦に出られるかもしれない気持ちが先走ってしまって、良いプレーができなかった。だから、もっとアピールしなきゃって。
 
――右肩上がりだった開幕前から、どん底に突き落とされました。そんな今季をどういう風に捉えようとしていますか?