石原伸晃が不甲斐ないから政治が動く?政界の新たな定説|プチ鹿島コラム

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 私は2012年に「石原伸晃が不甲斐ないから政治が動く」説を書いたことがる。あの年の自民党総裁選で、本命、つまり首相候補と言われたのは石原伸晃だった。しかし失言連発で失速。長老たちの支持を受けながらも2位にさえなれない致命的な敗北を喫した(勝ったのは劣勢と言われた安倍晋三現総裁)。

 伸晃が惨敗したあと何が起きたか。父親の石原慎太郎が国政復帰を表明したのである。それまで何度も都知事辞職や新党結成の噂を否定していた慎太郎だったが「不甲斐ないムスコ」をみて、自身でたたないとどうしようもないと思ったのだろう。なので急遽、都知事選がおこなわれることになった。伸晃が不甲斐ないせいで東京都に莫大な費用が掛かったのである。

 そのあと親父の慎太郎は「維新の会」(当時)と合流した。そこには橋下徹がいた。不甲斐ないムスコに代わり、橋下徹に夢を託したのだ。伸晃がピリッとしない、それだけで第三極ができたのである。

 さらに俳優の山本太郎が「新党 今はひとり」を旗揚げして立候補した。山本太郎は「杉並で闘う。石原伸晃さんの選挙区で」と宣言した(2012年衆院選・東京8区)。新党がまたひとつ増えた。すべては伸晃の不甲斐なさのせいである。恐るべし、その政界再編力。

 さて今回。自民党の東京都連会長である石原伸晃が政治勘の無さをまたも発揮して都知事選を混沌とさせている。長いあいだ、都知事選は「後出しじゃんけん」が必勝の法則と言われた。99年に石原慎太郎が成功した。しかし今回、伸晃の初動対応の隙をついて小池百合子が「先出しじゃんけん」を仕掛けた。既成事実をつくる奇襲である。オロオロする伸晃。不甲斐ないムスコのじゃんけん宿命。皮肉である。

 最近話題なのは「都知事選における党紀の保持について」という文書だ。党公認・推薦候補者以外の者を応援してはならないとして、『各級議員(親族含む)が非推薦の候補を応援した場合は除名等処分の対象となる』と書かれていた。石原伸晃や都連幹事長の内田茂都議らの連名で出された。

 なんと、他の候補を応援したら親族まで除名という。伸晃は、自分が親父の都知事選を応援したときのことを考えたのだろう。

「私は父の当選後4年間、都連には一歩も足を踏み入れることができなかった」と13日の「荒川強啓デイ・キャッチ」(TBSラジオ)で発言している。

 しかし「石原家」は、ふつうの党員の親族とはワケが違う。「都連には一歩も足を踏み入れることができなかった」としても、それに負けない知名度とブランド力がある。なのに、ふつうの党員に石原家と同じ耐性を求めてしまう。この時点でかなり想像力と思いやりがないことがわかる。ボンクラ息子たるゆえんである。やっぱり不甲斐ない。野党も伸晃のボンクラ力に感染したのか、最後までぐずぐずした。政治が伸晃のせいでまた動き出してきた。

 2016年夏、「石原伸晃が不甲斐ないから政治が動く」説は実証されつつある。

著者プロフィール


お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)など多数。