スクイズで挙げた虎の子の1点を明秀学園日立が守り切る

 今春の県大会で準優勝を果たし、初めて春季関東大会進出も果たした石岡一。今年で、創立107年目となる伝統校でもある。波崎柳川から異動してきた川井 政平監督が就任して、着実に力をつけてきている。波崎柳川時代は、トップダウン的に指示を下していたというが、石岡一に来てからは、練習メニューも含めて選手たちが何をやりたいのかということを主眼として、それにどうしてもやっておきたいことがあれば、そこにアドバイスを加えるというやり方に替えたという。それが、功を奏して選手たちは伸び伸びと自分たちのプレーを示している。その成果として今春の準優勝があった。

 その石岡一にこの春、屈辱のコールド負けを喫したのが明秀学園日立だった。光星学院(現八戸学院光星)で何度も甲子園へ導く実績のある金沢 成奉監督が12年9月に就任して悲願の甲子園出場を目指している。また、そのための強化策の一つとして、関西の有望なボーイズリーグなどの選手たちも迎え入れている。

 そんな両校の対決は、茨城大会序盤のハイライトともいえる注目の好カードである。

 両校の様々な思いが交錯しているのか、始まりは重い感じだった。そんな空気の中、明秀学園日立は先頭の糸野君が左中間二塁打で出る。バントで進めて一死一三塁とするが、ここから石岡一の高崎君がこらえる。そして、その裏の石岡一も一死後濱田君が内野安打で出塁するものの、後続がなかった。両行ともに、お互いの様子を見ながらということもあって、いくらか慎重にもなっていたのだろう。ここまででも、かなりの時間を擁していた。

 2回の明秀学園日立は先頭の5番庵原君が死球で出ると、続く若松君が一二塁間を破っていく。さらに、背番号20の1年生芳賀君が右前打でつないで満塁。金沢監督の起用に応えた。一死となってから、8番明秀ベンチはスクイズを指示。内田君の打球は捕手の手前に転がって、拾った下田君はすぐにタッチに向かい体を預けたが三塁走者の庵原君が巧みにタッチを交わしてセーフとなった。とはいえ、この時点では、まさかこれが決勝点になるとはほとんどの人が思えなかったのではないだろうか。

 3回も高崎君は先頭の細川君に死球を与えて出してしまう。しかし、そこから粘りの投球でこらえた。一方の明秀学園日立の細川君はさんかいを3者三振で切ってとる力を示した。140キロ超のストレートでぐいぐいと押していく威力があった。

 試合は、次の1点を巡っての展開となっていった。また、石岡一の高崎君も4回以降はしっかりと自分の投球を作っていっていた。こうして、攻撃ではお互いにもう一つ決め手を欠きつつも、やがて投手戦の展開となっていった。

 結局、試合はどちらも次の1点を挙げることなく9回まで行ってしまい、両投手もしり上がりというか本来の力を示していくことで、ついぞ得点がなく、そのまま1対0というスコアで試合終了となった。得点の割には、試合時間の長い試合だったが、それだけお互いが相手の様子を窺いながら、策を練っていたということもあったのであろうか。ただ、石岡一としては、自分たちの野球をやり切れなかったかもしれない…、という悔いがいくらかは残った試合となってしまったのかもしれない。

(文=手束 仁)

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