生理前の不眠は満月のせいかも。月の満ち欠けや引力は睡眠に影響する

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「狼男」の物語をはじめ、「犯罪件数が多くなる」「出産が増える」など、満月にまつわる奇妙な逸話は数多く存在します。それは絵空事やただの偶然…!?

実は近年、研究によって「満月が人に及ぼす影響」が徐々に明らかになってきています。中でも注目されているのが「睡眠と満月の相関関係」。普段はスムーズに眠れるのに、定期的に寝付けなくなる、生理前は不眠になる、なんだか興奮して落ち着かないという人、実はそのお悩みは満月が関係しているかもしれません。

 

月の引力は潮の干満だけでなく、人体にも影響が…

 

月と人体の関係については、これまでさまざまな考察がなされてきました。例えば、月の引力は地球の約70%を占める海に影響を与え、潮の干満を導き出しています。人の身体の中にも同じくらいの水分があるため、海と同様に人間も月の満ち欠けの影響を受けると考えられているのです。

 

これは、女性の生理にも当てはまり、生理前は不眠の症状が出るという人もいます。個人差はあるものの、生理周期は平均して約28日。一方、月の満ち欠けのサイクルは約29.5日と、ほぼ同じリズムを刻んでいるのです。「満月の日には出産が増える」という説もありますが、一概に迷信とは断言できませんね。

このことから、世界中の研究者が月と人体の関係についてさまざまな研究を進めるようになりました。

 

満月の夜は大人も子どもも睡眠時間が短くなる

 

2013年、「満月と睡眠」の関係性についてスイスで研究が行われました。その実験内容とは、健康な被験者33人を対象に温度・湿度を徹底管理した窓のない部屋で寝てもらうというもの。その結果、「月が見えない環境にもかかわらず、新月の日に比べ満月の夜は睡眠時間が20分、深い眠りに落ちている時間は約30%減少した」と言うのです。「カレントバイオロジー」誌(2013年8月)によると、この研究では睡眠に影響するホルモン、メラトニン濃度の低下も認められ、満月と睡眠に密接な関係性があることが分かったとされています(※1)。

また2014年にスウェーデンで行われた、被験者47人を対象とした研究でも、満月の夜の睡眠時間は25分短くなったとの報告もありました。「満月と睡眠」の関係はますます根強いものだということが明らかになってきています。

 

一方、カナダでは、世界12カ国、9〜11歳の小児7,372人を対象に睡眠習慣、行動などを観察する研究が行われています。研究チームは7日間にわたって子どもたちの睡眠時間、日常の行動、活動状況などのデータを集め、さまざまな月の位相(月の満ち欠け)と突き合わせて分析しました。すると、月の満ち欠けの影響を明らかに受けたのは睡眠時間だけという結果に。満月の夜の睡眠時間は平均して5分短くなったそうです。

 

満月の夜になぜ睡眠時間が減るのか、その理由についてはまだ解明中ですが、“満月の明るさ”が原因で睡眠時間が短くなるという考えが主張されたこともあります。それは、満月の夜は夜空の明るさが半月の約25倍、新月の250倍もあるからです。確かに眠っている最中に満月以外の暗い夜の何十、何百倍もの光を受ければ、睡眠に影響を与えそう。しかしこの説は、街灯やネオンが明るい現代の夜には当てはまらないのでは、という意見もあります。月と睡眠の関係性についてはまだまだ核心に迫れていないのが実情です。

 

とはいえ、満月が睡眠に何らかの影響を与えていることは事実と言えそう。月の周期をチェックしておくと、眠れない夜には、「月の満ち欠けや引力が影響しているのでは」と考えることができ、気持ちが落ち着くかもしれません。いつもよりリラックスタイムを多めに取って心身を興奮させないようにするなど、満月の夜はよりいっそう睡眠を大切にすることを意識してみましょう。

 

参考:

Cantech letter/Does a full moon affect your child’s sleep? Science weighs in

※1 Christian Cajochen, et.al; Current Biology Volume 23, Issue 15, p1485-1488, 5 August 2013

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photo:Thinkstock / Getty Images