宝塚記念といえば、暮れの有馬記念と同様、ファン投票で出走馬を決める春のグランプリ。GIの中のGIレースだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、宝塚記念に出走した馬たちのなかから、デニムアンドルビーの魅力について解説する。

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 かつては、春のレースを経て余力のある馬が出てくるといった印象があり、有馬記念にくらべると今ひとつ盛り上がりに欠けたこともありました。しかし近年は、6月下旬に施行されることもあって出走馬も多彩になり、さらに夏から秋にかけての欧州遠征へのステップレース的な意味合いも強くなっています。

 今年も天皇賞(春)を勝ったキタサンブラック、連覇に挑むラブリーデイ、凱旋門賞を狙う昨年の2冠馬ドゥラメンテなどが出走を予定しており、好レースが期待されます。

 暑くてどんよりと湿気も多く、慌ただしい時期ではあるものの、阪神の2200メートルという舞台は融通が利いて使い易いところがあります。

 角居厩舎からは、毎年のように実績馬が出走、今年はラストインパクトを挑戦させる予定です。これまで勝ったことはありませんが、みないいレースをしてくれています。

 とりわけ印象深いのは昨年のデニムアンドルビーです。今年のダービー馬と同じ勝負服の勝ち馬ラブリーデイをクビ差まで追い込んだのは記憶に新しいところです。

 角居厩舎の女子学級委員のような存在で、性格も従順で頑張り屋。体質的にはそれほど頑強ではなかったのですが、使えば使うほどによくなるタイプです。

 デビューは少し遅くて3歳の2月で、初勝利は3月末の3戦目でした。それが4月末のフローラSでいきなり1番人気に推されて勝ち、オークスでも3着にはいりました。

 夏場は一息入れましたが、秋のローテーションがハードでした。

 トライアルのローズSを勝って臨んだ秋華賞では4着。エリザベス女王杯で5着のあとは中1週でジャパンカップに挑戦。単勝7番人気ながら勝ち馬のジェンティルドンナをハナ差まで追い詰めました。JCを走るのならエリザベス杯には出ないものですが、使われていくうちに調子を上げてくる馬もいる。デニムアンドルビーがそうでした。

 4歳春もドバイシーマ、ヴィクトリアマイル、そして宝塚記念。秋は天皇賞、JC、有馬記念とGIばかりの王道路線を走ってきました。

 そして5歳春は阪神大賞典をステップに天皇賞へ。ここは10着に敗れましたが、宝塚記念で単勝10番人気ながら2着と健闘したのです。トップの牡馬並みのローテーションですが、自分を追い込んで結果を出せるタイプなのだと思います。

 馬主さんの意向もあって厩舎にいることが多かった彼女は目の輝きが強烈で、「次は結果を出します」と訴えかけてくるような雰囲気がありました。

 牝馬は緊張状態が続いても崩れにくい。そこを見込む部分もありますが、相当に頑張りがきくんですね。彼女の存在が厩舎の空気をピリっと引き締めます。成績優秀で人望(馬望?)のあるリーダーです。秋にはまたGI戦線に戻ってきます。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年6月12日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。

※週刊ポスト2016年7月1日号