GI日本ダービーが終わり、6月4日からは2歳戦がスタート。翌年の日本ダービーへ向けての戦いがまた始まった。2歳戦スタートと同時に、新種牡馬の産駒もデビュー。「あの馬がどんな産駒を出すのか」「種牡馬としてブレイクする馬は出るのか?」など、新種牡馬産駒を追うのも、競馬における大きな楽しみ方のひとつだ。今回は今年デビューの新種牡馬について取り上げてみよう。

 今年の新種牡馬の大きな注目点として挙げられるのが、「ディープインパクトとキングカメハメハの後継種牡馬が初登場」という点だ。サイアーランキング1位と2位を争う現在の日本における2大種牡馬の次世代対決が早くも実現するのである。

 キングカメハメハ産駒の新種牡馬はスターウォーズ(母レディバラード)とルーラーシップの産駒がデビュー。スターウォーズは南関東で3勝と地味な成績で産駒数も少ないので、ほぼルーラーシップの一本柱となる。

 ルーラーシップは現役時代、5歳時の2012年に香港のGI・クイーンエリザベス2世C(芝2000m)を勝利。同レースでは2着馬に3馬身3/4差をつける圧勝で、その実力を世界に見せつけた。日本ダービーにも出走して5着に入るなど3歳時から素質を見せながら5歳時に本格化し、香港GI制覇の後にはGI宝塚記念(勝ち馬オルフェーヴル)で2着。同年秋にはGI天皇賞・秋(勝ち馬エイシンフラッシュ)、GIジャパンC(勝ち馬ジェンティルドンナ)、GI有馬記念(勝ち馬ゴールドシップ)で3戦連続3着に入っている。気性が激しく出遅れ癖があり、結局日本のGIでは勝てなかったが、負けたレースでも強烈な末脚で存在感を示していた実力馬だ。

 ルーラーシップの最大の魅力はその血統だ。日本ダービー、GI NHKマイルCを勝った父キングカメハメハはもちろん、母エアグルーヴもGIオークス、天皇賞・秋を勝った歴史的名牝。半姉にGIエリザベス女王杯連覇のアドマイヤグルーヴ、そして甥に昨年の牡馬クラシック二冠馬ドゥラメンテがいるという、現在進行形で発展している日本競馬屈指の良血馬なのである。

 競走馬として戦績はGI1勝に終わり、来年以降、新種牡馬として産駒を送り出してくるオルフェーヴル、ロードカナロア、ジャスタウェイ、ゴールドシップなどに比べるとインパクトは大きくないが、種牡馬にとって血統は極めて重要なファクター。ディープインパクトの全兄で競走馬としてはGII止まりだったブラックタイド(父サンデーサイレンス)が種牡馬としてキタサンブラック(GI菊花賞、GI天皇賞・春)を出していることなどからもそれは明らかだ。サンデーサイレンスの血を持たないので、その血を持つ牝馬と配合しやすい血統構成ということもあり、筆者も次代のリーディングサイアー候補として大きく期待している。

 6月12日の東京芝1800mの新馬戦ではルーラーシップ産駒のイブキ(牡2歳、美浦・奥村武厩舎、母ピサノドヌーヴ)が勝利。2着にも同産駒のレジェンドセラー(牡2歳・美浦・木村哲也厩舎、母トップセラー)が入り、ワンツーフィニッシュの幸先いいスタートとなった。

 エアグルーヴの血統は晩成タイプが多く、2歳戦からバリバリというタイプではないと思われるので、3歳を迎えてから台頭してくる馬も多いだろう。芝のマイルからダービー、オークス戦線まで幅広い距離に対応できそうだ。

 一方、ディープインパクト産駒の新種牡馬はディープブリランテとトーセンホマレボシの2頭が産駒を送り込む。

 ディープブリランテは2012年に父の産駒として初めて日本ダービーを制した馬。瞬発力タイプ(差し馬)の多いディープインパクト産駒の中では少数派の先行タイプで、日本ダービーは3、4番手からの押し切り。激しい気性の持ち主でもあった。

 牝系はGI朝日杯3歳S、天皇賞・秋のバブルガムフェロー、菊花賞のザッツザプレンティ、GI阪神ジュベナイルフィリーズのショウナンパントルなどがいる名門。父と同じ社台スタリオンステーションに繋養され、社台グループの良血牝馬にも多く付けられており、成功の可能性は高いだろう。激しい気性が伝われば、短距離タイプの馬も出そう。

 トーセンホマレボシはディープブリランテの勝った日本ダービーの3着馬。GII京都新聞杯では2分10秒0という、当時の日本レコードを樹立した中距離のスピード馬だ。この馬も血統が優秀で、半兄トーセンジョーダン(父ジャングルポケット)は天皇賞・秋の勝ち馬。いとこカンパニーも天皇賞・秋、GIマイルチャンピオンシップ勝ち馬という活力ある牝系だ。祖母の父にミスタープロスペクター系のスピード種牡馬クラフティプロスペクターが入るのが特徴で、レコードタイムを出すようなスピードの源はここにあるのだろう。

 実際、門別のダート1000mで勝ち上がった産駒ハリアー(牝2歳、北海道・佐久間雅貴厩舎、母クリスマスローズ)は母の父がアグネスデジタルで、クラフティプロスペクター4×3のクロスを持つスピード配合。配合次第でダートの短距離から芝の長距離までガラッとタイプの違う馬を出しそうな種牡馬だ。

 海外からの輸入馬にも注目馬は多い。アイルハヴアナザーは2012年の米GIケンタッキーダービー、米GIプリークネスSを勝った米国2冠馬。父フラワーアリーは天皇賞・秋のスピルバーグやGIマイルチャンピオンシップのトーセンラーの半兄で、父系を遡ると日本でもエンドスウィープ(アドマイヤムーン、サウスヴィグラス、スイープトウショウなどの父)などで実績があるフォーティナイナーに辿り着くという、日本にも馴染みの深い血統だ。ややダート寄りだが芝で走る馬も出すだろう。

 ストリートセンスは米国の2歳王者決定戦・米GI BCジュヴェナイル、3歳クラシックの最高峰・米GIケンタッキーダービーの両レースを制した史上初の馬。父系祖父のマキャヴェリアンは、ヴィクトワールピサ(父ネオユニヴァース、皐月賞、有馬記念、UAE GIドバイワールドC)、ヴィルシーナ(父ディープインパクト、GIヴィクトリアマイル連覇)など、日本ではサンデーサイレンス系GI馬の母の父として実績を残しており、サンデーサイレンス系牝馬とは相性が良いだろう。早い時期から活躍する産駒が多そうだ。6月11日の東京芝1400m戦では、ロジセンス(牝2、栗東・矢作芳人厩舎)がデビュー戦を飾っている。

 スマートファルコン、フリオーソといったダートの強豪2頭にも注目。ダート重賞19勝のスマートファルコンはその父ゴールドアリュールもコパノリッキーやエスポワールシチーを出して成功している。現役時代に見せた圧倒的なスピードが産駒に伝われば、早い時期から活躍する馬も出るだろう。

 フリオーソはJpnI帝王賞などダートのGI/JpnIを6勝した、近年の地方競馬を代表する馬。一時代を築いた名種牡馬ブライアンズタイム産駒で母の父がミスタープロスペクターという好配合で、牝系は凱旋門賞のトレヴや皐月賞のディーマジェスティが出た名門だ。芝のクラシックタイプが出ても驚かない血統構成の持ち主であり、大きな意外性を秘めている。

 また、産駒数の少ない中では、個人的にエイシンアポロン、ジョーカプチーノに注目している。エイシンアポロンは父が欧州の名馬ジャイアンツコーズウェイで、弟妹にドバイや米国のGIホースがいる世界レベルの良血。門別ダート1000m戦でエイシンスカラベ(牡2、北海道・田中淳司厩舎、母エーシンピュリティ)が2着に2秒の大差をつけデビュー勝ちを収めている。

 NHKマイルCを勝ったジョーカプチーノは早速、マイネルバールマン(牡2歳・美浦・栗田博憲厩舎、母クリスビーナス)が東京芝1400mで勝ち上がり、新種牡馬産駒のJRA初勝利となった。ジョーカプチーノは父が長距離タイプのマンハッタンカフェだが、スピード能力には優れていたので、種牡馬として楽しみな存在だ。

 以上、注目馬をピックアップしてご紹介したが、今年の新種牡馬にはまだまだ、楽しみな存在が潜んでいる。最近はスクリーンヒーロー(産駒:モーリス、ゴールドアクター)、ブラックタイド(産駒:キタサンブラック)、アンライバルド(産駒:トウショウドラフタ、バルダッサーレ)など、意外な種牡馬から重賞ウイナーが出ることも多いので、皆さんも成功する種牡馬を予想しながら、2歳戦を楽しんでいただければと思う。

平出貴昭(サラブレッド血統センター)●文 text by Hiraide Takaaki