誕生日は祝ってくれる人がいてこそ

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誕生日に自殺する人が、ほかの日に比べ1.5倍も多いことを大阪大学の松林哲也准教授(公衆衛生学)らのチームが明らかにし、2016年4月29日の国際科学誌「ソーシャル・サイエンス・アンド・メディシン」(電子版)に発表した。

欧米では、誕生日に孤独感がつのってうつ症状になり、自殺者が増える「バースデー・ブルー」(誕生日うつ)現象がある。松林准教授らは日本にもあてはまることを確認した。

米大リーガーの猛者たちも誕生日前後に死を選ぶ

「バースデー・ブルー」は、2000年代後半に米の心理学者デビッド・レスター博士が、大リーグで活躍して自殺した元選手74人の死因を調べた結果、誕生日の前後28日以内に死を選んだ人が異様に多い事に注目し名付けた言葉だ。米国では誕生日は周囲の人からお祝いされる特別の記念日。その日を孤独な状態で迎えたりすると、強いストレスとなり自殺してしまうらしい。

研究チームは、厚生労働省の人口動態調査を使い、1974〜2014年の全死亡者の中から、自殺や事故で死亡した約207万人のデータを分析した。うち約8000人が誕生日に亡くなっていた。このうち誕生日に自殺した人は約4100人で、それ以外の日の平均約1.5倍に達した。交通事故や溺死、転落などによる死者も誕生日には20〜40%ほど増える傾向がみられた。

松林准教授は論文の中で「文化の異なる日本でも、バースデー・ブルーと同様の傾向があることがわかりました。自殺願望がある人が誕生日を迎える際、家族や友人、医療関係者は格段の注意を払い、普段以上のサポートをすることが必要です」とコメントしている。

日本人と中国人は毎月「4日」に心臓病死が多い

特定の日になるとストレスが高まり、死亡する人が増える現象については、こんな研究もある。「日本人や中国人は、毎年4日に心臓病で亡くなりやすい」という研究を米カリフォルニア大学がまとめたのだ。2001年に英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表した。

「4」は「死」につながり、日本人は忌み嫌う。中国でも発音は同じ「スー」なので、「4」は不吉なものと考えられ、車のナンバーや携帯電話の番号に使わない人が多い。そこで研究チームは、毎月4日になると、日本人と中国人のストレスが高まり、死亡率に影響するのではないかと仮説を立てた。

死亡日がきちんと登録されている米国健康調査データの中から約21万人の在米日本人・中国人と、約4700万人の白人を対象に、死因と死亡日を分析した。すると、在米日本人・中国人は白人に比べ、毎月4日に心臓病で亡くなるリスクが13%も高いことがわかった。

いったい、どうしてなのだろうか。同大の心理学者ケリー・マクゴニカル博士はこうコメントしている。

「不吉だと思うから不吉になるのです。4日を不吉と思わない白人にとっては、4日はなんのストレスを感じない日なのです。ひどいストレスを経験しても、ストレスを無害と思えば、死亡リスクは抑えられます」

「病は気から」ということのようだ。