もしも世界からバナナが消えたなら…

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普段、何げなく食べているバナナが今、絶滅の危機に瀕している!

4月、国連食糧農業機関(FAO)は「新パナマ病」の発生が、世界中で栽培されているバナナに壊滅的な打撃を与える可能性を指摘した。

日本が輸入するバナナの約9割を占めるフィリピン・ミンダナオ島では、現在、バナナの木の5分の1が感染。新パナマ病には特効薬はなく、国際バナナ会議は、このまま世界中に広がっていけば、「9割のバナナに絶滅の恐れがある」という。

実は、バナナは1960年頃に「パナマ病」によって、一度、ほぼ全滅している。東京農業大学の根岸寛光教授が語る。

「パナマ病は泥の中にすんでいる『フザリウム』というカビの一種が原因で起きる病気です。このカビが根から入り、導管(水を吸い上げる管)を腐らせる。そのため水を吸い上げることができなくなり、枯れてしまいます。

パナマ病は1890年から徐々に広がり1960年頃までに世界の約9割のバナナが感染しました。この病気はパナマ周辺で見つかり、大きな被害を受けたので、パナマ病と呼ばれています」

ではなぜ、世界中のバナナがほぼ絶滅するほど一気に感染したのか。熱帯環境植物館の元山淳一副館長が答える。

「それは当時、『グロス・ミシェル』という単一品種のバナナしか栽培していなかったからです。バナナは世界中に約300種ほどありますが、『甘くて、種がなくて、収穫量が多くて、日持ちするため輸出しやすい』といった条件を備えていたのがグロス・ミシェルでした。

しかし、そのグロス・ミシェルがパナマ病を起こすカビに対して非常に弱かった。そのため、世界中のバナナに一気に感染していったのです」少し専門的になるが、前出の根岸教授がさらに詳しく解説してくれた。

「私たちの食べているバナナは種がありません。それは私たちが食べているバナナが“3倍体”だからです。

多くの生物はオスとメスからゲノム(染色体)をひとつずつもらい2倍体の状態でできています。バナナにも2倍体のものがあり、これには種があります。

しかし、たまに減数分裂を起こさず2倍体と2倍体が合わさって4倍体という状態をつくることがある。4倍体になると、例えば植物なら花が大きくなったりする。そして、その4倍体と2倍体のものが一緒になってできたのが3倍体のものです。

3倍体の細胞は、生殖に際して不可欠な減数分裂の時に2倍体や4倍体のようにきれいに分かれることができず、そのため種ができないのです。種なしスイカはその原理を使って人工的につくられたものですが、今、我々が食べているバナナは自然にできた3倍体のバナナなんです。

人間はたまたま種がなくて食べやすく、しかも食べるとおいしいバナナを見つけてしまった。それで、その品種を栽培してきた。

しかし、種がないので茎を分けて育てるしかない。すると、ひとつのものから育てているわけですから、どのバナナも元は同じ。同じ性質を持つクローンということになる。

これは、ある部分では強みになりますが、ある部分では弱みになる。グロス・ミシェルというバナナにとっては、パナマ病を起こす菌に対する抵抗性が極端に弱かったわけです」

そうした弱みを克服するため、現在はパナマ病に強い「キャベンディッシュ」という品種が主に栽培されている。しかし「新パナマ病」の流行により、こちらも絶滅の危機に瀕(ひん)しているというわけだ。しかも、新パナマ病に耐性のあるバナナはまだ見つかっていない…。

果たして、私たちの食卓からバナナは完全に消え去ってしまうのか?

月曜発売の『週刊プレイボーイ』24号では、フィリピンだけでなく、世界各地へと広がる新パナマ病の現状と対抗策を徹底取材! 甘くて黄色いバナナが消えるかも?という「パナマ文書」より衝撃的な真実を是非お読みいただきたい。

■週刊プレイボーイ24号(5月30日発売)「新パナマ病でバナナが絶滅する!?」より