特集:「最強世代」の日本ダービー(5)

 今年のGI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)は、実力のある豪華なタレントがズラリ。非常にハイレベルな"戦国模様"となっている。

 牡馬クラシック第1弾のGI皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)は、3戦3勝のサトノダイヤモンドとマカヒキ、GI朝日杯フューチュリティS(2015年12月20日/阪神・芝1600m)を制したリオンディーズの「3強」が人気を集め、その争いが注目された。だが、「3強」はそれぞれ上位争いを演じたものの、8番人気の"伏兵"ディーマジェスティが戴冠。大外18番枠から「3強」をまとめて差し切った内容は圧巻だった。

 この結果、ダービーへと向かう牡馬戦線は「4強」とも称されるようになった。そのうえ、皐月賞のあとに行なわれたダービートライアルや前哨戦でも新たに有力馬が台頭。地力ある「皐月賞組」に、勢いのある「別路線組」も加わって、世代の頂点を決する戦いはさらにレベルが上がり、ますます熾烈さを増しているわけだ。

 いったい、今年のダービーはどんな結末を迎えるのか。近年まれに見るハイレベルな激戦を前にして、期待は膨らむばかりである。

 まさに見応えのある今年のダービーだが、できれば同時に"オイシイ馬券"も手にしたいものである。実力と人気を兼ね備えた面々がそろう中、はたしてそんなことは可能なのか。ここでは、過去10年のダービーから今年に似たような年をピックアップ。その結果から、高配当馬券につながる「穴馬」を見つけ出してみたい。

 まずは、今年と同様、皐月賞で伏兵馬が勝った場合である。過去10年を振り返ってみると、2006年、2007年、そして2008年のダービーがそれにあたる。その3年の結果は以下のとおりである。

◆2006年ダービー
(※皐月賞は6番人気メイショウサムソンが勝利)
1着=メイショウサムソン(1番人気)
2着=アドマイヤメイン(4番人気)
3着=ドリームパスポート(7番人気)

◆2007年ダービー
(※皐月賞は7番人気ヴィクトリーが勝利)
1着=ウオッカ(3番人気)
2着=アサクサキングス(14番人気)
3着=アドマイヤオーラ(4番人気)

◆2008年ダービー
(※皐月賞は7番人気キャプテントゥーレが勝利)
1着=ディープスカイ(1番人気)
2着=スマイルジャック(12番人気)
3着=ブラックシェル(6番人気)

 上記3年のうち、2007年は牝馬のウオッカが優勝、2008年は皐月賞馬のキャプテントゥーレが不出走。今年とはやや状況が異なるため、2006年を参考にしたい。

 この年、皐月賞では"伏兵"だったメイショウサムソンが、ダービーでは1番人気に応えて勝利。堂々と二冠を達成した。2着は、トライアルのGII青葉賞(東京・芝2400m)を制したアドマイヤメイン。ここまでは、上位人気馬による順当な結果と言える。

 しかし、7番人気ドリームパスポートが3着に入線。3連複馬券は3420円、3連単馬券は1万2650円と、まずまずの配当がついた。人気の実力馬が顔をそろえた今年、穴狙いに徹するなら、その再現だろう。1、2着は厳しくとも、3着に伏兵馬が入り込む可能性は大いに考えられるからだ。

 では今年、ドリームパスポートになり得る馬はいるのか。

 ドリームパスポートは、何を隠そう皐月賞でも2着と好走していた。しかも、GIIIきさらぎ賞(京都・芝1800m)を勝っている重賞ウイナーで、デビュー以来、一度も3着以内を外していない堅実派だった。にもかかわらず、なぜ7番人気という低評価にとどまったのか。それは、今年と同じように"役者"が多数そろっていたからだろう。

 つまり、ポイントとなるのは、「皐月賞で好走」していて「重賞勝ちもある堅実派」。それでいて、「ダービーでは低人気が予想されるタイプ」である。

 そこで浮かび上がるのは、エアスピネルだ。

 同馬は、皐月賞で4着(※4位入線のリオンディーズが5着に降着)と上位争いを演じた。重賞も、2歳時にGIIデイリー杯2歳S(2015年11月14日/京都・芝1600m)を制している。また、これまで大敗がないのもドリームパスポートと符合する。

 加えて、距離延長がプラスになるとは考えられておらず、リオンディーズ、マカヒキには常に後塵を拝していて、ライバルが増える今回は人気が落ちそうな気配である。しかしドリームパスポート同様、終わってみればきっちり上位に顔を出している――そんなシナリオは十分に考えられる。

 現に、皐月賞でも3着サトノダイヤモンドとはコンマ1秒差。展開ひとつで逆転があってもおかしくない。

 ところで、皐月賞で勝利を逃した「3強」だが、ダービーを前にしてもその人気が落ちる気配はない。それぞれ「ダービーでこそ」という評価もあって、再び上位人気が予想される。

 実は昨年も、皐月賞で「3強」と言われたサトノクラウン、リアルスティール、ドゥラメンテが、順番を変えてダービーでも上位人気を占めた。そして、結果は以下のようになった。

◆2015年ダービー
1着=ドゥラメンテ(1番人気)
2着=サトノラーゼン(5番人気)
3着=サトノクラウン(3番人気)
―――――――
4着=リアルスティール(2番人気)

「3強」は見事上位争いを演じたが、そこに唯一割って入ったのが、サトノラーゼンだった。同馬は、GII京都新聞杯(京都・芝2200m)を勝って臨んだ「別路線組」。となると、今年もこのパターンで人気より上位に食い込む馬が出るかもしれない。

 そして今年、サトノラーゼンのように別路線の重賞を勝って挑むのは、スマートオーディン(京都新聞杯を勝利)と、ヴァンキッシュラン(青葉賞を勝利)の2頭である。より"オイシイ馬券"を狙うなら、重賞3勝のスマートオーディンよりも人気が低くなりそうな、ヴァンキッシュランだろう。

 ヴァンキッシュランは、今年に入ってから1度の降着(※1着入線も進路妨害で2着)を挟んで3連勝中。しかも、近走の舞台は3戦続けて芝2400mと、距離適性は申し分ない。さらに、前走の青葉賞もレースレコードにコンマ1秒差という好内容で勝利し、現在の上昇度を考えれば、上位に食い込んでも何ら不思議はない。

 ちなみに、前出のサトノラーゼンは初勝利までに5戦を要した"叩き上げ"タイプだった。同じく、ヴァンキッシュランも初白星をつかんだのは4戦目。再び"遅咲き"の素質馬が好走するのか、注目である。

「競馬の祭典」日本ダービー。今年は、過去と似たような再現が起こるのか。それとも、かつてないような結末を迎えるのか。どちらにせよ、劇的なドラマが生まれることは間違いない。その決戦の舞台が、刻一刻と迫っている。

河合力●文 text by Kawai Chikara