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●業務用だが家庭にも置きたい
個人的に今年注目しているメニューがある。一昨年はヌードルメーカーが登場して、家電市場では麺料理への関心が高まった。そして昨年は高級トースターが話題を呼び、美味しくパンを食べる機会が増えた。そして今年はピザだ。美味しくピザが焼けるオーブンやグリルなど、調理家電が数多く揃うのではと思っていた中、とんでもない製品が登場した。それが、タイガー魔法瓶の「業務用 電気式コンパクトピッツァ窯 KPX-S300 (以下KPX-S300)」だ。

この「KPX-S300」は約7.5mmの高密度の炭プレートを庫内に配置することで、本格的な石窯のようにピッツァ (※) を焼き上げられるという。それでいて凄いのが熱源だ。1200Wのカーボンヒーターを使い、電源は家庭用と同じ100Vコンセントで利用可能。特別な工事を行うことなく設置できるのだ。

とはいえ、KPX-S300はあくまで「業務用」の製品。本体サイズは幅534mm、高さ397mm、奥行き634mm (取っ手含む) と大きく、家庭で置くスペースを確保するのはなかなか難しそうだ。

しかし、業務用と言われても、KPX-S300で焼いたピッツァはぜひ食べてみたい。筆者の家族は全員、ピザが大好き。チーズ大好き一家なのだ。

その思いをタイガーさんに強くぶつけたところ、「発売前なのでお貸し出しは難しいですが、大阪までお越しいただければ試食も可能です」というではないか。となると行くしかない。そこで、子どもたちの長期休みの期間を利用して、大阪にあるタイガー本社まで、KPX-S300で焼いたピッツァを食べに行ってきた。

○大きな窯でカリモチの薄生地ピッツァが!

タイガー本社に到着し、多くの商品が展示してある部屋に入ると、そこにはドーンとKPX-S300が鎮座していた。サイズは確かに家庭用としてなかなか置けない大きさ。筆者宅に置くとなるとダイニングテーブルの大半を占拠してしまいそうだ。

しかし、表面はまさにピッツァ窯。丸いドーム状のボディにはイタリアのピッツェリアのようにレンガが貼られ、雰囲気も抜群だ。

窯の横にはKPX-S300を担当したタイガーの北山さんも待ってくれていた。早速、お話を聞きつつ、ピッツァをいただくことにした。

●チーズが溶けて踊り出す
KPX-S300は予熱に25分ほど掛かるため、北山さんは我々が到着する前より予熱をスタートしてくれていた。さらに手作りのピッツァ生地やチーズなどの材料まで用意は完璧。それを早速、木製のパーラーに乗せて、窯の中に入れていく。まさに街のピッツェリアの石窯ピッツァを作る工程と同じだ。

KPX-S300の設定温度は最大320℃。北山さんによると、これ以上の温度にもできるがピッツァが焦げてしまうとのこと。あくまで美味しさとのバランスがこの温度なのだ。

○石窯ピッツェリアに負けない完成度

そうこうしているうちに、1枚目のピッツァが焼きあがった。ドアを開けると、チーズの焼ける香ばしいニオイが漂ってくる。窯に木製パーラーを差し込み、ピッツァを取り出すと、表面のチーズはぶくぶくと勢いよく踊っていた。この時点で美味しくないはずがない。

ピッツァをお皿に移して、ピザカッターでカット。早速いただいて驚いた。筆者はピッツァがかなり好きで、石窯のある都内のピッツェリアによく足を運んでいる。そういったピッツァと比べても全く遜色がないのだ。もちろん、材料の違いもあるため完全に一緒ではないが、焼きの部分ではかなり近いと言える。

KPX-S300では約2分のインターバルで次のピッツァが焼ける。ピッツァの加熱時間は約2分半なので、ワンセット4分半程度。出し入れの時間を加味しても、1時間に10枚以上のピッツァが焼ける計算だ。業務用として十分に活躍できる実力を持っている。

●家庭用ピッツァ窯の投入は?
○ピッツァ窯、開発エピソード

そもそもタイガーがピッツァ窯を作ったのは、「業務用」の製品を拡充するというビジネス上の狙いと、「焼き」を極めていきたいという同社の強みを活かす方法を模索した結果だという。

そのなかで、「高密度炭プレート」という素材と出会う。蓄熱性が非常に高く、遠赤外線効果もある。食材の芯までしっかりと火を通すことができる。

焼きを極めるという課題とこの高密度炭プレートはマッチした。生のピッツァ生地を素早く焼き上げるため、裏面はパリッと焦がし、そして食感はもちもちとした状態に仕上がる。

このKPX-S300を作るために、ガス窯のメーカーに研究にも行ったそうだ。というのも、いわゆる業務用の石窯は重さや耐熱性などさまざまな理由により、建物の1階にしか設置できないことが多いという。それを電気で、しかも100Vでとなると、火力が足りないというのがこれまでの常識だった。

タイガーではそれを覆すために、賛同してくれたガス窯メーカーで修行を積み、そして社内に宅配ピザとは異なる、イタリア風の「ピッツァ」を啓蒙していったという。そして、3年をかけて完成したのが、このKPX-S300なのだ。

KPX-S300の想定売価は50万円前後だ。また、外壁には実際に石窯で使われるのと同じ耐熱レンガを貼っているため、非常に重く、家庭に設置するのはさすがに厳しそうだ。タイガーでは、50席以下のカフェやホテルのバイキング、また駅ナカ施設などに訴求していくとしている。

しかし、このノウハウは確実に社内に蓄積されている。北山さんも、「高密度炭プレート」を使った家庭用ピッツァ窯も考えたいと語る。家庭で最高にうまい焼きたてのピッツァが食べられるようになるかもしれない。いや、食べられるようになってほしい!

(コヤマタカヒロ)