バンコクにあるイミグレーション警察の本部。不法滞在で拘束されるとここの留置場に入れられる
「外こもりの聖地」などと言われて、ダラダラと無目的に滞在する日本人がいることで知られたタイだが、今のタイは長期滞在が簡単な国ではなくなっている。

 タイを気に入って移住してみたら、案外長期滞在が難しく、早々に帰国しなくてはならなくなる日本人も少なくない。

 ビザのない滞在は空路入国でおよそ1か月しか許可されないし、容易に取得できた観光ビザも最近は所得証明などさまざまな書類を要求され取りにくくなった。就労ビザなどは辞書ほどの厚さにもなるほど数多に書類を提出しなくてはならず、なお難しい。

 確かにかつてはタイのビザは取りやすかった。現在は空路の半分程度しか滞在許可の出ない陸路入国でも以前は1か月は滞在できた。バンコクから250km程度のカンボジア国境を跨げば、日帰りで滞在期間をいくらでもと延ばすことも可能だった。これらの状況がまったく変わってきてしまったにも関わらず当時の印象だけが残っていて、今もタイのビザを甘く考えている人がいる。

◆不良外国人一掃のためのビザ厳格化

 1990年代半ばまでは一般的な日本人旅行者が、無意味にタイ国内に留まることはなかった。しかし、低予算でユーラシア大陸を横断する日本のテレビ番組が大人気となり、貧乏旅行をするバックパッカーが急増。当時バンコクが世界で最も航空券が安い場所だと言われ、90年代後半に世界中から貧乏旅行者が集まるカオサン通りといった聖地までが誕生し、日本人パッカーたちも大量に押し寄せてきたのだ。

 大半のパッカーにとってタイはあくまでも通過点であったが、居心地のよさ、物価の安さなどもあって一部の人たちは長期滞在するようになった。そんな彼らを当時は沈没、今は外こもりと呼んだ。

 タイ政府にとって観光産業は大きな収入源である。外国人にたくさんの金を落としていってほしいのが本音だ。ところが当時の沈没組は100〜200万円を持ってはくるができるだけ使わず、いかに長く居続けるかを考えている者ばかり。最近の外こもりはネットビジネスやオンライン投資で金を稼ぐものの、観光客ほど派手な金の使い方はしないし、稼ぎに対する納税もタイではしない。

 こういった外国人はタイ政府にしてみれば不良外国人になる。ただ、この場合は不良債権外国人と呼ぶべきで、これとは別に本当に不良な外国人も稀にいる。例えば、本国で罪を犯し指名手配されている者が紛れているのだ。今年5月1日には医療費の還付金名目の詐欺事件で国際手配されていた日本人男性がタイにおいて逮捕されている。タイに来て詐欺師になる日本人もときどき見かける。

 タイ政府はそういった不良外国人たちを一掃するためにビザ発給を厳格化した。各国にあるタイ大使館で運用は違うが、観光ビザでありながら在職・在学証明の提出を求める場合もある。観光ビザを取得すれば60日間、およびタイ国内での延長で合計90日間の滞在が可能になる。職のある人がそんな長い間タイを旅するのは日本の常識では考えられないが、そういったおかしな条件がつけられるなど、ビザの取得は容易ではなくなっている。
そのため、最近ではタイ人と偽装結婚して婚姻関連のビザを取得して長期滞在を目論む外国人も出始めているという。

◆罰金が功を奏さず「再入国処置」が制定

 しかし、それでも不良外国人は大きくは減っていない。というのは、オーバーステイ(不法滞在もしくは超過滞在)の罰金が1日につき500バーツ(約1,540円)、最大で2万バーツ(約61,600円)までしか科せられない。不良たちがダラダラと居続けるには安い罰金で抑止力にはほど遠く、タイ政府から発表されている2015年の不法滞在者は100万人にも達していたとされるほどだ(ただし、この数字の大半はミャンマーやカンボジアなどの出稼ぎ労働者と見られるが)。