パルムドールを受賞したケン・ローチ監督 写真:Xposure/アフロ

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 第69回カンヌ映画祭のクロージング・セレモニーが5月22日(現地時間)に開催され、ケン・ローチ監督の「I, Daniel Blake」が最高賞のパルムドールに輝いた。

 ローチにとって2006年の「麦の穂をゆらす風」以来、今回が2度目の受賞。パルムドールを2度受賞した監督は、8人目となる。授賞式でローチの名前が発表されると、会場には割れるようなスタンディングオベーションが響いた。ローチは、「カンヌは映画の未来にとってとても大切な場所。これからも大きな影響力を持つ場としてあり続けて欲しい。食べるものにも困る貧しい人々を描いたこの映画が、こんな賞を受け取るのはなにか奇妙な感じがするものの、映画は人々にイマジネーションをもたらすもの。自分にとって映画の伝統のひとつは、困難な状況にある人々の戦いを描くこと。大切なのは、希望を持ち続けること。異なる世界を作り出すことは可能であり、そして必要なことなのだ、ということを(映画で)訴えていきたい」と語った。

 今年の審査員が選んだ受賞結果は、大方の批評家の意見とは異なる独自のものだった。好みが別れたグザビエ・ドランの「イッツ・オンリー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド(英題)」がグランプリを受賞。またプレス上映でブーイングを浴びたオリビエ・アサイヤスの「Personal Shopper」が、評価の高かったクリスティアン・ムンジウの「Bacalaureat」とともに監督賞を分け合ったほか、同じく賛否に別れたアンドレア・アーノルドの「American Honey」が審査員賞を受賞した。

 女優賞は、ブリランテ・メンドーサの「Ma’Rosa」で、家族思いの母親を演じたフィリピンのジャクリン・ホセに。またアスガー・ファルハディの「The Salesman」は、主演のシャハブ・フセインに男優賞と、ファルハディに脚本賞が授与された。一方、批評家に人気の高かったドイツのマーレン・アーデによる「Toni Erdmann」、ポール・バーホーベンの「Elle」、ジム・ジャームッシュ「Paterson」は無冠に終わった。

 審査員メンバーの会見で、審査員長のジョージ・ミラーは、21本のコンペティション作品のなかから7つの授賞に絞らなければならないこと、一つの作品に賞を集中させられない、といった規則のため、たとえいい作品であっても必然的に無冠のものも出てくることを強調した。「メンバーのなかで徹底的に話し合った結果こうなった。まるで映画学校に戻ったかのような、情熱的に映画について語り合う機会が持てた」と明かした。

 今年は全体的に水準が高かった一方で、それぞれの監督のフィルモグラフィのなかではベストの作品とは言えない、といった声も聞かれた。そのなかではやはり、ケン・ローチが満場の評価を得たと言える。(佐藤久理子)