エアコンが苦手でも大丈夫。進化しすぎた扇風機がスゴい
世界一の極上な風を求めた男がいる。その名は華井啓行(はない ひろゆき)。この寝苦しそうに寝ている男だ。彼は広告代理店を経営しており、見た目の割に優雅な暮らしをしている。
彼は「華が無いのに華井」「金はあるのに髪が無い」などと経営者仲間からよく茶化されており、朝起きた時、枕元についた大量の抜け毛に肝を冷やすのが日課だ。
そんな彼はスキンケアを欠かさない。
「乾燥は、肌と髪に良くない」という事で、夏場でもクーラーや扇風機に頼らないストイックな生活を送っているのだ。
そんな彼がネットサーフィン中に見つけたのが、
こちらの「カモメファン」のCM動画だ。
なんでも、極上のクレオパトラな風を体験できるという。
カモメファンはその名の通り、少ない羽ばたきで遠くまで移動する「カモメ」の羽をヒントに開発された画期的な扇風機で、騒音も少なく、優しい風を遠くまで届けるのが特徴だ。
これならお肌と髪にも優しいに違いない。
「こういう扇風機が欲しいんだけど」という事で早速秘書に指示を出す華井社長。
ただし、厄介なのが「既製品じゃない、オリジナルの扇風機が欲しい」というお金持ちにありがちな注文をつけた事だ。これでカモメファンそのものは使えない。
「かしこまりました。お任せ下さい」
まず最初に秘書が用意したのがこちらの「マッチョ扇ぎ隊」だ。
CM動画にもあった、クレオパトラがイケメンに扇がれるシーンからヒントを得たそうだ。
「暑苦しいわーーーーーーーーーーー!」
「ねえ!暑いから扇風機が欲しいんでしょ!? 普通に考えてあれだけゴッツいマッチョな人が両サイドに居たら暑苦しいよね!? そんな事くらい思いつかないかな!?」
「すいません。ご指示が無かったので」
「指ー示ーがー無ーくーてーもー!それくらい気付くでしょうがーーーーー!ちゃんとやってくれよまったく!」
「申しわけ御座いません」
こちらの秘書。基本的には優秀で真面目だが融通が利かないのが欠点だ。
具体的な指示が無いとなかなか行動に移せない。
仕方ないので今度はカモメファンのメーカーである株式会社ドウシシャの開発責任者にアドバイスを頂く事にする。
こちらが開発責任者の金原(きんばら)副会長だ。
早速、先ほどマッチョが使った羽根を見せ、カモメファンとの違いについてご教授頂く事にした。
こちらがカモメファンの羽根のプロトタイプ。
色んな形状と素材で実験する事で、最適な羽根を開発したそうだ。
確かに先ほどの羽根よりも、随分やわらかい素材を候補にしているらしい。
「なるほど。柔らかさがカギなんですね。これを踏まえてもう一度社長に提案してみます」
「頑張ってください!」
カモメファンの羽根へのこだわりはすごい。船舶用プロペラの技術も使って試行錯誤を繰り返し、これまでにないやさしい風を作り出す羽根を開発したのだ。カモメファンが試行錯誤の上で開発されたように、秘書の試行錯誤も続く。
秘書「いかがでしょうか?先ほどの羽根より柔らかい素材を選び、より自然に近い風になったかと存じます」
「落ち着かんわーーーーーー!」
「このアイデアは惜しいですね。確かに羽根は柔らかくなりましたが、扇風機が自己主張しすぎています。カモメファンなら遠くまで風が届きますので、リビングの隅にひっそり置いておくだけで十分に風が届くんですよね。リビングの真ん中を扇風機に占領されたくない方にもお勧めです」
カモメファンの直進性がわかる写真がこちらだ。リビングの真ん中を扇風機に占領されて困っている人は導入してみても良いかも知れない。
遠くまで風が届くので部屋の隅に収まる。しかし社長の怒りは収まりそうにない。
社長「あんな派手な二人が扇子振りまわしてたら死ぬほど気が散ってしょうがないわーーー!」
「申しわけございません」
「だいたい古いよ! 君はトシいくつだっけ!? あんなの良く知ってたね! そこには逆に感心するわ!」
「ありがとうございます」
「褒めてないよ!まったく!ちゃんとしてくれよ!もっとこう、カモメファンみたいに動物の力を利用した涼しい風を送って欲しいんだってば!」
「わかりました。動物の力ですね」
社長「ごめんね、ひとつ聞いていい?これってわざわざ調教したの?」