5月22日に行なわれるGIオークス(東京・芝2400m)は、牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)で2着に惜敗したシンハライトの断然ムードとなっている。

 桜花賞は、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(以下、阪神JF。2015年12月13日/阪神・芝1600m)を制した「2歳女王」メジャーエンブレムが圧倒的人気に推されるも、4着に敗退。代わってトップ争いを演じたのは、シンハライトとジュエラーだった。直線で2頭が抜け出し、そのまま馬体を併せてゴール。写真判定の末、ジュエラーがハナ差で勝利した。

 オークスでもこの3頭の争いになると思われたが、桜花賞馬のジュエラーは骨折が判明して戦線離脱。メジャーエンブレムは、別路線のGINHKマイルC(1着。5月8日/東京・芝1600m)に駒を進めた。その結果、オークスはシンハライトの「1強」という状況となっている。

 このことから馬券検討においては、本命シンハライトの「2着探し」というのが一般的な見方になっているが、はたしてそうか。過去のオークスを振り返ってみると、他馬が逆転勝利を決めるシーンも十分に考えられる。

 その例として挙げられるのが、2007年のオークス。この年は、まさしく今年と似た状況であり、しかも伏兵による"逆転勝利"が起きたケースである。

 2007年の3歳牝馬戦線は、ダイワスカーレットとウオッカが抜きん出た存在だった。実際、桜花賞では2頭の一騎打ちとなり、ダイワスカーレットが栄冠を手にした。この2頭がオークスに出ていれば"再戦"は確実だっただろうが、ダイワスカーレットは熱発で回避。ウオッカは、別路線となる牡馬相手のGI日本ダービー(東京・芝2400m)に果敢に挑戦した(そして、見事勝利を飾った)。

 この「2強」がいなくなったオークス。押し出されるようにして抜けた1番人気となったのは、オークストライアルのGIIフローラS(東京・芝2000m)を制して挑んだベッラレイアだった。同馬は人気どおり、直線で堂々と抜け出した。が、最後の最後で"伏兵馬"にかわされてしまった。

 外から強襲してベッラレイアをとらえたのは、5番人気のローブデコルテ。最後にハナ差かわして、金星を射止めたのである。

 その2007年と似た状況にある今年、ローブデコルテのように「1強」を打ち負かす馬が再び現れてもおかしくない。

 ローブデコルテの成績を見てみると、阪神JFで4着、桜花賞でも4着と好走していた。この実績はオークスでも上位だったが、過去に1400m戦で強さを見せるなどして、オークスでの距離延長はやや不安視されていた。また、いずれのGIも優勝争いからはかなり離されての4着。GIで勝ち負けするには厳しいと見られていた。そのため、5番人気の評価にとどまった。

 しかし本番では、あらゆる不安を一掃して見事戴冠。GIで好走してきた地力がモノを言ったのだろう。

 そんなローブデコルテの経歴を参考にして、今年の出走馬から同馬に似たタイプを探してみると、1頭の「穴馬」候補が浮かび上がってきた。

 アットザシーサイドである。

 同馬は、阪神JFで5着、桜花賞で3着と好走している。地力があることは間違いない。ただ、いずれのGIも上位争いからは差をつけられていた。また、1400m戦での良績が多いことから、距離延長がプラスになるとは考えられていない。つまり、オークスで人気になる可能性は低い。

 まさに、ローブデコルテに似た1頭である。

 コンビを組むのは、福永祐一騎手。奇遇にも、ローブデコルテの鞍上を務めたのも同騎手だった。さらに福永騎手は、通算3勝とオークスは得意の舞台である。シンハライトの「1強」を崩す"逆転候補"として、アットザシーサイドが大仕事を果たしても不思議ではない。

 ところで、ジュエラーとメジャーエンブレムの不在によって、今年のオークスは例年以上に桜花賞に出走していない「別路線組」に注目が集まっている。ただし、そういった年も、終わってみれば桜花賞出走組が勝利を飾っていることが多い。前述の2007年もそのひとつだが、より直近の2013年もそうだった。

 この年のオークスで1番人気となったのは、トライアル戦のフローラSを勝ったデニムアンドルビー。距離不安を囁かれていた桜花賞馬のアユサン、同2着のレッドオーヴァルを抑えて、かなり高い評価を受けていた。

 だが、レースを制したのは、桜花賞10着から挑んだメイショウマンボ。9番人気で快勝し、波乱の立役者となった。

 人気の「別路線組」より、実績の「桜花賞組」――そんな格言があるかどうかは別として、オークスではそうした傾向が強い。しかも、桜花賞で大敗を喫した馬がオークスで巻き返し台頭することは、過去にも何度となくあった。2013年は、その典型的な例。そこで、「別路線組」の人気が高まりそうな今年、メイショウマンボに似たタイプの馬も探してみたい。

 メイショウマンボは、阪神JF、桜花賞というGIでは、ともに10着と惨敗していたが、それぞれ"明確な敗因"があった。阪神JFは、キャリア2戦目。しかも新馬勝ちから中1週で臨んだもの。さすがに無謀な挑戦だった。そして、桜花賞では大外18番枠発走でリズムを作れなかった。

 それでも、GIIフィリーズレビュー(阪神・芝1400m)を快勝するなど、重賞を勝てるだけの能力を保持。条件さえ合えば、オークスで逆転できるだけの"伸び率""資質"を備えていたと言える。

 今年、このメイショウマンボに似たタイプが1頭いた。デンコウアンジュである。

 同馬は、阪神JF7着、桜花賞10着と、それぞれのGI戦では大敗しているものの、阪神JFでは慣れない先行策が裏目に出た。桜花賞では直線で進路が詰まって力を出し切れずに終わった。つまり、いずれも"明確な敗因"があって、オークスで逆転できる"伸び率"は十分にある。

 加えて、デンコウアンジュも重賞ウイナーである。2歳時にGIIIアルテミスS(2015年10月31日/東京・芝1600m)を制覇。それも、2着に負かしたのはメジャーエンブレムだった。大舞台で結果を残せるだけの"資質"を秘め、メイショウマンボと同じく、大金星を挙げる可能性は大いにある。

 シンハライトの実績を考えれば、「1強」と言われるのは当然のことだ。とはいえ、うら若き3歳牝馬の戦いである。まして、どの馬にとっても未知の距離となる2400m戦が決戦の舞台。過去のオークスがそうだったように、波乱が起きる条件は今年も整っている。

河合力●文 text by Kawai Chikara