「BFG」を上映したスティーブン・スピルバーグ監督 写真:Chris Ashford/Camera Press/アフロ

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 中盤を迎えたカンヌ映画祭に、スティーブン・スピルバーグやロバート・デ・ニーロら、続々とビッグネームが訪れている。

 アウト・オブ・コンペティションでロアルド・ダール原作の、少女と巨人のファンタジー「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」を披露したスピルバーグは、映画祭の息抜き的な存在に。「ダールに詳しいわけではないものの、個人個人の違いを受け入れる物語として、このストーリーにひかれた」と記者会見で明かした。孤児院の少女が“巨人の国”を訪れ、様々な冒険に遭遇し、やがては英国の女王にも謁見する。社会的なメッセージを含みながらも、「E.T.」のようなファンタジックなテイストがスピルバーグらしい。

 同じくアウト・オブ・コンペに招待されたジョナサン・ヤクボウィッツの「Hands of Stone」は、70、80年代に活躍した伝説のパナマ人ボクサー、ロベルト・デュラン(エドガー・ラミレス)と、彼のコーチ、レイ・アーセル(デ・ニーロ)の物語。映画史上、ボクシング映画の傑作は少なくないが、デ・ニーロは「わたしが誇りに思っている素晴らしい作品」と、満足気に語った。

 コンペティション作品では、気鋭の監督によるアメリカ映画が並んだ。パルムドールに推す声もあるジェフ・ニコルズの「Loving」は、50年代、人種差別が根強く残るアメリカのヴァージニア州で結婚した白人の夫と黒人の妻を見舞うさまざまな障害を、抑制の効いた演出で描く。この手の物語にありがちな暴力シーンを巧みに避け、静かに心に訴えかけるドラマに仕立てた。

 インディペンデント映画の領域を頑なに守り、我が道を行くジム・ジャームッシュによる「Paterson」は、アダム・ドライバー扮するバスの運転手の平凡な日常を、この監督らしい詩情とユーモアを込めて描写する。映画を締めるラストで永瀬正敏が重要な役どころとして登場するのも見逃せない。ジャームッシュは、「彼のためにこの役を書いた。一緒に仕事をしたのは、「ミステリー・トレイン」(1989)以来だったけれど、素晴らしい俳優だと思う」とコメントをくれた。いまのところ日本での配給は未定と聞くが、評価も高いだけにぜひ配給されて欲しいところだ。この後、映画祭の終盤にはショーン・ペンの監督作「The Last Face」もコンペに登場する予定である。

 一方「ある視点」部門では、今年のサンダンス映画祭で話題になった「Captain Fantastic」が上映され、主演のビゴ・モーテンセンを始めとするキャスト陣とマット・ロス監督が登壇し、大喝采を浴びた。ワシントン州の森林のなかで、物質主義とは無縁の生活を送る6人の子供たちとその父親が、入院中の母親の自殺を機に転機を迎える。家族の絆、人間ドラマ、物質至上主義への批判など、さまざまなテーマを内包しながら、エンターテインニングでエモーショナルな作品に仕立てた監督の手腕が光る。会場にはモーテンセンの親友であるオーランド・ブルームとガールフレンドのケイティ・ペリーも姿を現し、観客をサプライズに沸かせた。(佐藤久理子)