たかが貝とあなどることなかれ!実はスゴイしじみのサバイバル能力

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前回「しじみの日」にちなんで、「実はしじみのタウリン含有量は少量!本当のしじみの効用と食べ方」という記事をご紹介した。そこでわかったのは、しじみはアミノ酸やミネラルを豊富に含む健康によい食べ物だということだ。しかし、その生態についてはあまり知られていないのではないか。そこで、今回もしじみ研究の第一人者、学習院女子大学の品川明教授にしじみの生態について教えてもらった。

■しじみのサバイバル能力

しじみは、海水と淡水が混じった「汽水域」と呼ばれる水域に生息している。環境の変化が非常に大きい汽水域で、しじみは生き残りのためにいろいろな能力を発揮するという。それがどんな能力なのか、詳しく聞いてみた。

「まず挙げられるのが、塩分変動に対する耐性の高さです。しじみが生息している環境は海水魚がいたり、淡水で生きている生物がいたりする塩分変動の激しい場所です。例えば、島根県の宍道湖のように、同じ場所にカレイとフナが一緒に泳いでいる環境を想像してみてください。カレイやフナには、自分により適した場所へ移動する能力がありますが、しじみには魚のような移動能力はありません。ではどうするかというと、自身の細胞をコントロールして塩分の変化に順応するのです。高塩分のときは、細胞の中にアミノ酸を貯めこんでまわりの塩分と戦い、低塩分のときは、細胞内のアミノ酸濃度を低くして細胞の体積を維持します」(品川さん)

周囲の環境に応じて、自分の体を細胞レベルで変化させてしまうというのだから驚きだ。さらにもう一つ、しじみには驚くべき能力があるという。

「最も素晴らしい能力は、しじみが無酸素や貧酸素の環境でも生き残る戦略をもっているということです。酸素が少なくなる環境を察して呼吸を少なくする術と、じっと動かずに我慢する忍耐力をもち合わせているのです。そして、酸素がなくなってもエネルギーを産出する術をもっています。実験の結果では、無酸素状態で10日以上生存する能力があることが判明しています」(品川さん)

酸素がなくても生き残れるとは、しじみはまさにサバイバルの匠といえるだろう。

■生態系におけるしじみの役割

しじみはサバイバル以外にも、さまざまな能力を発揮し、我々ヒトを含む生態系の中で重要な役割を担っているという。

「しじみがエサを食べる際のろ過作用により、生息地の植物プランクトンやデトリタス(生物の死骸や生物由来の有機物)が除去されます。その結果、※栄養塩が減少し生息地の浄化につながります。また、しじみが排泄することで、プランクトンが濃縮、堆積し他の生物のエサになります。加えて、環境への栄養塩添加と植物プランクトンの再生を促すことにもなります」(品川さん)

しじみは、周囲の環境や生物のサバイバルにまで貢献しているのだ。さらに品川さんは次のように続けた。

「しじみが砂にもぐったり砂泥内を移動したりすることにより、周囲の水域がかきまぜられる撹拌(かくはん)作用が期待できます。その結果、表層に酸素を供給し、臭く、生物が住むことができないような環境を改善します。また、栄養塩である窒素やリンなどの有機物を比較的長期間蓄えておけるのも環境改善に役立っています」(品川さん)

あの小さな個体には、進化から培った機能がたくさん備わっているのだ。

しじみは、ヒトに食物として栄養やおいしさという価値を提供するだけでなく、地球にもよい効果をもたらす生き物だということがわかった。食卓では改めて大切に味わいたいものである。

※栄養塩:海水・陸水中に含まれ、植物プランクトンや海藻の栄養となる物質。珪酸塩・燐酸塩・硝酸塩・亜硝酸塩など。(「goo辞書」より)

●専門家プロフィール:品川 明(しながわ あきら)
学習院女子大学 教授。フードコンシャスネス研究所所長。研究分野は、味わい教育(フードコンシャスネス教育)、環境教育、人・食・環境コミュニケーション、海洋生理生態学、食品化学。著書に「アサリと流域圏環境(水産学シリーズ)」共著等がある。

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