今年、日本でも大ブームが起きそうなグランピング。一体、いつどのようにその歴史は始まったのだろうか?

グランピングの歴史に迫る、グランピング・コラム。どのように変化していったのか3つの記事を読めば丸わかり!



# 01 歴史はルイ・ヴィトンと共に始まった

グランピングはどこから来て、どこへ向かうのか。その足跡をたどり、歴史を紐解いてみると実は現代文明の発展と常に隣り合わせだと気付く。言うなれば私たち人間は、文明を発展させながら、そして着実に自然を楽しむ術も磨いてきたのだった。

そして今、世界中で一気に、グランピングが花開いた。大旅行時代にモータリゼーションを経て、個の時代。

ここから先、花を育てるのは私たちの役目だ。先人も羨むようなグランピングを実践しなくては。


『Glamping Chronicle グランピングの歴史はルイ・ヴィトンと共に始まった』

グランピングの源流をどこに見るべきか? それは間違いなく19世紀にまで遡ることができる。その時代に、グランピングの発端となったであろうビッグウェーブが起こっているからだ。

18世紀後半から19世紀前半にかけてイギリスを中心に起こった産業革命は、社会に大変革をもたらし、大きな変化の一つとして余暇を生み出した。工業化により人々の収入が増加し、同時に週休制度も誕生するのだが、生活が豊かになると、彼らはは手に入れた余暇をどう使うべきか悩み始めた。

そして、一つの解としての流れ-余暇を利用して都市から外へ向かう-という考え方を生み出したのだった。もちろんこの趣向は大ブレイクし、19世紀初頭のヨーロッパでは、大きな収入を手にした富裕層、セレブたちが、こぞって郊外へ出かけていったという。



ヨーロッパの上流階級の人々は、馬車でピクニックに出かけていた。注目すべきは、彼らが正装に近い出で立ちだということ。当時の余暇は、パーティーのようなものだったのか

セレブたちの動きに呼応するかのように、19世紀半ば、一つのラグジュアリーブランドが世に放たれた。当時すでにフランス随一の職人と呼ばれていたルイ・ヴィトンが、パリのカプシーヌ通りに店を構え、馬車に積み込むためのトランクを販売したのだ。

しばらくすると、蓋が平らになっているトランクも発表。さらにこのトランクに防水加工を施し、素材にコットンを使用したものまでリリースした。

これらは、移動のための手段が馬車しかない時代から、鉄道や車、船へと移行していくはずだという交通機関の発達に注目したルイの先見の明から生まれたもの。使いやすさをとことんまで考えぬいた“平らなトランク”を、セレブたちはこぞって買い求めたという。



トランクを手に入れたヨーロッパの貴族たちは、アフリカやインドへ向かい、サファリを楽しむように。そこでは台地の上のダイニング、森の中の豪華なキャンプが設営されていた

折しもヨーロッパでは、大旅行時代が幕を開けていた。セレブたちは都市を離れ、郊外や大自然へと、「ルイ・ヴィトンのトランク」に荷物を積み込み、出かけたことだろう。船に乗り、植民地だったアジア、アフリカ諸国へ出かけ、そこで大自然を満喫する。

蓋が平らなトランク、その存在が人々の暮らしを大きく広げたことは間違いない。そして、グランピングの世界への扉も、この時開かれたのだった。

やがてヨーロッパでは近代キャンプが誕生。イギリス、フランスを中心にレジャーの宿泊手段としてキャンプが行われるようになる。

この時代を経て、どう変化していったのだろうか?


キャンプ文化がアメリカへ。そこに待っていた劇的な出合い


# 02 キャンプ文化がアメリカへ
キャンプ文化がアメリカへ。
そこに待っていた劇的な出合い

グランピングの歴史に迫る、グランピング・コラム。歴史はルイ・ヴィトンと共に始まったわけだが、そのあと時代はどのように変化していったのだろうか?



さて、ヨーロッパで工業化が進み「自動車」が生まれた頃、アメリカでもヘンリー・フォードがガソリン自動車を誕生させていた。彼は以前エジソンの電灯会社で働いていたこともあり、エジソンにガソリン自動車の開発を褒められると、さらに情熱を傾け、T型フォードを開発。

この車のタイヤには、馬車用タイヤを製造していたハーベイ・ファイアストーンのタイヤが使われた。

このT型フォードは爆発的に売れていくことになるのだが、そんな中、フォード、エジソン、ファイアストーンの3名はオートキャンプ旅行を始めたという。毎年のように、2週間かけてアメリカ大陸を旅する彼らのキャンプは1915年から24年まで9年間も続き、21年には第29代アメリカ合衆国大統領のウォレン・ハーディングも加わっている。

オートキャンプと言っても、とても優雅なものだったようだ。20人近くは入れるであろう巨大なタープの下でのんびりと食事を楽しみ、テントで寝る。自然の厳しさの中に身を置くのではなく、大自然の中で自分たちのライフスタイルを楽しむのが、彼らのスタイルだった。そしてこれは、現代のグランピングへと続く大きなテーマとなっていった。

T型フォードの人気を機に、アメリカでは世界初のオートキャンプブームが起こる。やがてこのブームは、自動車やキャンプを生み出したヨーロッパへと、輸出されていく。


車とキャンプが結びつき、
より遠くへ、快適さを求める

車を伴うアメリカのキャンプは、もちろんヨーロッパですぐに受け入れられた。だからセレブはもちろん、冒険家たちも自動車で旅に出た。ルイ・ヴィトンの平らなトランクにお気に入りの道具を詰め込んで。

目的地では、宿泊のための巨大なテントや現地にあるキャビンにお気に入りの道具を並べ、優雅なダイニングで現地の食材に舌鼓を打つ。20世紀半ば、すでにグランピング・スタイルは確立していたのだった。

話は少し逸れるが、まだ人々が馬車で旅をしていた頃、すでに“馬車で引く部屋”が生まれていた。馬車の荷台に壁を作り、扉や窓もつける。小屋の中にはお気に入りの食器、調理道具、寝具。

雨露を気にしなくて済むだけでなく、グッと快適な旅のために、人々は工夫を重ねていったのだ。この行為がのちにキャンピングトレーラーへと発展し、自動車と結びつくことによって、モーターホームを誕生させることになった。

そして、現在のグランピングブームにつながっていくわけなのだが、今後どう変化していくのだろう?


個性化してくグランピング文化


# 03 個性化してくグランピング文化

グランピングの歴史に迫る、グランピング・コラム。20世紀半ばにグランピング・スタイルが確立していった後、歴史はどのように変化していったのだろうか?



時は流れて20世紀後半。すでに世界では、銀幕のスター、作家、ファッションデザイナーたちが、ロンドンやパリの生活と同レベルの環境を地中海の孤島やアルプスの山中に求め始めていた。

日常の喧騒から距離を置くため、大自然という、自分たちではどうにもできないようなフィールドに最もリラックスできる環境を創り上げることは、一つのトレンドになってきたのだ。彼らにとっては、向き合うことで得られる何かを探す行為だったのかもしれない。

しかしただ金をかけるのではなく、意味あるものを大自然に持ち込み、かけがえのない時間を過ごすことに傾けた情熱と言えるほどの遊び心は、一つの文化を生み出すには十分すぎるファクターだった。これこそが贅沢。いよいよグランピングが、洗練という熱をしっかりとを帯びてきた。

セレブや文化人たちが一つのスタイルを確立すると、それがムーブメントとなり、拡散するまでにさほど時間を必要としなかった。21世になった今、誰もが自分なりのスタイルでグランピングを取り入れられるようになってきたのだ。

大きくて優雅なテント、BBQだけでは終わらないための充実した料理器具、特別な夜のための照明、そして音楽。日常のアイテムの中から厳選し、外に持ち出すものを選び、自分好みの空間を大自然の中に出現させる。グランピング文化に、個性の時代が始まったと言っていいだろう。



そのために世界中で、さまざまなフィールドも誕生し始めた。草原の中のダイニング、コバルトブルーといつでも一つになれる、海上のコテージ、森に溶け込むツリーハウス、空と台地を独占できるキャンプサイト。

さらなるものを求める人の心とは、ここまで限りないものなのか、と感嘆してしまうほどのフィールドが我々を呼んでいる。それぞれの施設が独自の世界観で、グランパーたちを迎える空間を創り出していることにお気付きだろうか。



グランピングの時間をより濃密なものにするためのギア、大自然へ向かうための車も、選択できるだけの数がすでにある。我々は、グランピングを「選べる」時代にいるのだ。この喜びをしっかり享受しないでなんとしよう。グランピングが産声を上げてすでに1世紀半。現代のグランパーは、すでに大きな自由を手にしている。

施設が増え、ギアが整いライフスタイル化していっているグランピング。今後もどんどん進化していくグランピングから目が離せない!