快勝という表現を使うことへの抵抗が拭えない。5月11日に行なわれたU-23日本代表対ガーナ戦である。

 ガーナはA代表だった。だが、ヨーロッパでプレーしている選手はひとりもいない。最新のA代表に招集されたのは、17人の来日メンバーでふたりだけだ。そして、ふたりともA代表では主力格ではない。

 全員が国内クラブ所属で、スタメンの8人は22歳以下である。17人の来日メンバーには、10代の選手も6人含まれていた。スタメンの平均年齢は21・3歳、17人の平均年齢はさらに少し下がって21・2歳である。

 対する日本はスタメンの平均が21・9歳で、23人の平均が21・5歳だ。実際は同世代との戦いと言っていいものであり、来日したばかりの相手は明らかにコンディションが整っていなかった。国際試合での3対0は一般的に快勝と呼べるものだが、今回は当てはまらないだろう。

 日本の戦いぶりが悪かった、というつもりはない。

 チームが集合するのはほぼ一か月ぶりで、国際試合は3月下旬以来である。1月の最終予選以来の招集となる選手もいた。

 そうした状況下でも、チームとしてのクオリティを示すことができた。手倉森誠監督のもとで積み上げてきたものが、身体に馴染んでいるからに他ならない。選手個々の特徴をお互いに把握できていることで、スムーズなコンビネーションが築かれていたのも評価できる。

 チームのコンセプトもしっかりと息づいている。タテに速いサッカーで相手守備陣を後退させ、中盤にスペースが生まれたところでパスワークを生かす攻撃は、最終予選突破の原動力となった「柔軟性」の表われだった。

 柔軟性のもうひとつの側面として、矢島慎也のポジションをあげたい。

 スタート時は2列目の左サイドでプレーしていた背番号10は、後半途中からダブルボランチの一角へポジションを移した。複数のポジションに対応する選手の存在は、手倉森監督のベンチワークに幅を生み出す。「11分と15分の連続ゴールで生き残りへアピールした」というのが矢島に対する評価だが、ふたつのポジションをそつなくこなしたことが、むしろ大きなアピールポイントである。

 いずれにせよ、相手は〈調整不十分な同世代〉だったのだ。ブラックアフリカの国々が見せるパワーも、スピードも、意外性も、ガーナは感じさせなかった。国際Aマッチデイではないスケジュールでのマッチメイクは価値を持つが、リオ五輪で対戦するナイジェリアを想定したシミュレーションとしては、率直に物足りなかったと言わざるを得ない。現実的な位置づけとしては、21日から参加するトゥーロン国際トーナメントへの準備と見なすべきだ。今回のガーナは快勝しなければいけない相手だった、という意味においても。