EntamePlex

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いとうあさこといえば「世界の果てまでイッテQ!」「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)などのバラエティ番組で、体を張った芸や歯に衣着せぬもの言いで話題を集める女芸人だ。しかし、いとうにはもうひとつ、劇団「山田ジャパン」の一員としての顔がある。舞台上ではテレビとはまた違った側面を見せる彼女。Entame Plexは、5月11日(水)より上演となる「ソリティアが無くなったらこの世は終わり」の稽古中であるいとうを訪れ、今劇にかける思いや、“人間の品格”についてなど、今の気持ちを語ってもらった。

「私を見て笑ってくれる人たちがいる」たくさんの笑顔が、彼女を支える原動力となっている。

――舞台「ソリティアが無くなったらこの世は終わり」は6年前の再演とのことですが、いとうさんは同じ役で出演するのでしょうか?

「そうですね。私は前回と同じく主人公ファミリーの母親役です。今回のためにもう一度以前の劇を見直したんですが……、若いなって(笑)。今や私も(体格が)大きくなって重厚感が増していますから」

――ゲストのいしだ壱成さんが息子役ですよね。

「壱成くんとは以前も舞台で共演しましたけど、そのときは恋人同士のような関係の役だったんですね。でも、成就しないまま終わるという」

――それは役の話ですか?

「もちろん。外も含めてですけどね(笑)。よく聞いていたんですよ。舞台や映画だと、バラエティ番組と違って相手役と恋が芽生えるって。でも、1ミリも進展しなかったんですけど、どういうことでしょうね(笑)。確かあのころは、壱成くん独身だったと思うんですけどね〜」



――どういうことでしょうね(笑)。ところで、いとうさんは、いしださんの母親役で主演を務めますが、演じる上で6年前との違いはありますか?

「年齢とともに母性は上がった気がします。プライベートでそうしたものが枯渇しすぎて、演技に出ちゃうんですかね。前回とはキャストも違うし、また重みのある内容になってのではないかと思います。先ほども言いましたが私も身体的に重みを増していますから(笑)」

――(笑)。

「ここ2年間での成長が異常なんですよね。公式プロフィールを大幅に上回っています」

――サバ読んでるじゃないですか。

「事務所的からは『年齢のサバを読め』って言われているんですけどね(笑)。まぁ、書き直していないだけなんですけど……」

――6年前と同じ服では難しいですかね。

「1着、自前のワンピースを着るシーンがありますが、今回のためにもう一度袖を通したらまったく入らずで……。デパートに買いに行ったんですよ。女性のサイズって9〜11号が多いんですけど、店員さんが15号を持ってきたんですよね。何かイヤだったんでしょうね。『ウソでいいから13号を勧めてくれ』って抗いました」

――13号で大丈夫でした?

「ギリギリ入りました。すみません、どうでもいい情報で(笑)」



――(笑)。ところで、いとうさんは劇団「山田ジャパン」の初期からのメンバーですが、バラエティを含めマルチに活動するご自身にとって演劇とはどんなものですか?

「お笑いとの明確な線引きはありませんね。役者って、憑依型とかいろいろに分類されますけど、私は、生きてきた体験の蓄積が内側から出るタイプだと思っています。だから、お笑いの人生が演劇にもリンクしている気がしますね。

まあ、とはいえ浅いですけど(笑)。それに、あと数日で上演ですが、(演出の)山田がまだ貪欲に面白くしようとしているのも楽しい。今日もワクワクしています。『おお〜こうなるか!』って笑っちゃうくらい。“芝居はナマモノ”なんて言葉もありますが、本番になっても話し合って、最終日まで向上心と情熱が続くのは、舞台ならではですよね」

――ところで、いとうさんといえば、4月放送の「耳が痛いテレビ」(日本テレビ系)で、「女芸人の品のなさが育児に影響する」との視聴者からの批判に、「服を着ていても下品な女はいっぱいいる」「品は内側から出るもの」などと答え、ネットでも反響を呼びました。

「もちろん、私自身は上品だとは言わないですよ。乳も放り出していますし。ただ、品というのは、親御さんと子どものコミュニケーションのなかで作られていくものだと思うんです。ですから、そこがちゃんとできていれば、下品なテレビを見て真似するべきかどうかわかる子に育ちますよ、という話だったんです」

――確かにそうかもしれません。

「難しい問題ではあると思います。日本中のお母さんたちがみんな『やめろ!』って言うなら考えなきゃいけないですけど、私たちを見て笑ってくれる人たちもいるわけで……」

――大勢いると思いますよ。

「以前、ある番組で、私が裸にニップレスを貼って人体模型のボディペイントをして地方ロケをしたことがあるんですが、そのときに90歳過ぎのおばあさんが、私に握手を求めてきて『すっごい元気出たよ!』っておっしゃってくださったんです。そのおばあさんの世代の価値観だと、女性が裸になることにすごく嫌悪感を抱くはずじゃないですか。でも、『ありがとう。あと、10年生きれるよ!』って。それを聞いたときに『あ、また脱ごう』って思っちゃいましたね(笑)」

――いい話ですね。

「女芸人って、体も張るし鼻水も出します。でも、それは仕事であって、イコール彼女たちの人間性が下品ってわけじゃないんです。服を着ていても下品な女性もいるし、もっと内側を見てもいいんじゃないですか、と言いたかったんですよ。でも、すごく反響があったようですね、ただのババアの一論だったんですけど」



――多くの方が共感していたようです。少し話を戻しますが、今劇のタイトル「ソリティアが無くなったらこの世は終わり」にかけて、いとうさんにとって“これが無くなったら終わり”なものは?

「(※即答で)日本酒です(笑)。もう3年前から日本酒漬けになりまして。昔から食事とお酒を合わせるのが大好きで。あとはなんだろう? 大久保さんがいなくなったら終わりかもしれないです」

――オアシズの大久保佳代子さん?

「はい。大先輩なので親友って言ってしまうと失礼ですけど。年齢や環境もそうですが、どこか近しい部分があるんです。大久保さん、最近ワンちゃんを飼い始めたんですよ。パコ美って名前なんですけど、よくパコ美に会いに大久保さんの家に行っていますね。なくなって困るもの。日本酒と大久保さんです(笑)」

――では、最後になりますが、今劇をどんな人たちに見てもらいたいですか?

「30〜40代の疲れた大人たちに見てほしいですね。あとは、中学生や高校生など、これから人格形成される若い人たち。この劇は、主人公が中学生のころから始まり、現在と過去が交差して、彼が大人になっていく過程を描いています。あ、この劇コメディなんですよ? チラシがむちゃくちゃ暗いけど」



――確かに、このチラシだとコメディに見えない(笑)。

「それにもちゃんとした理由があるんです。答えは劇場で確かめてください(笑)。基本はゲラゲラ笑えるけど、劇場を出た後に思わず考えさせられる部分もあります。何かを感じてもらえればうれしいし、ただ単に大笑いしに見に来てくれるとうれしいですね」

山田ジャパン「ソリティアが無くなったらこの世は終わり」は、5月11日(水)〜5月15日(日)渋谷・CBGKシブゲキ!!にて上演!