文明崩壊や終末に備えて世界中の種子をバックアップして保存する知られざる巨大施設「Svalbard Seed Vault」内部に潜入レポート
今後起こり得る気候変動・自然災害・核戦争などに備えて農作物種の絶滅を防ぎ、世界各地で植物が絶滅した時に栽培再開の機会を提供することを目的として作られた施設が「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」です。1年のうちほとんどが閉鎖状態にあり、世界でも数人しか入ることができない謎に包まれた施設に潜入した映像がYouTubeで公開されています。
まず、スヴァールバル世界種子貯蔵庫とは一体何か?ということは、以下のムービーを見ればサクッと理解できます。
雪に埋もれた近代的な建物がスヴァールバル世界種子貯蔵庫。
北極から約1300kmの場所に位置するノルウェイ領スピッツベルゲン島にあるスヴァールバルが、世界種子貯蔵庫のある場所です。
コンクリート造りで、外観はモダンな印象。
427フィート(約130メートル)の長さの貯蔵庫には……
植物の種子86万5000個が保存されています。
これまでは貯蔵をメインとして機能していましたが、2015年、シリア内戦により同地域の種子バンクでの種子栽培が行えなくなったため、初めて本格的なサンプルの取り出しが行われました。「施設内では政治的な問題は関係なく、種子を安全に保存することのみが重要になります」と職員の男性は語ります。
2008年に開設されたこの施設は1年のほとんどが閉鎖されており、世界でも立ち入ることができるのはわずか数人しかいません。
ということで、そんな世界種子貯蔵庫に潜入する様子は以下のムービーから見ることができます。
Inside the Svalbard Seed Vault - YouTube
レポーターの男性が「ここが世界で最も重要な冷凍庫というわけですね?」と話しだすところからムービーはスタート。
「その通りよ」とマネージャーのベンテさんが答えます。
「人によっては『世界で1番重要な部屋』とも言うわね」
外の様子はこんな感じで、広大な自然が広がっています。
これが正面玄関。
建物内は複数のトンネルが連なっている構造で、入り口付近の温度はそこまで低くないものの、奥に進めば進むほど冷気が強くなっていくようです。
最も重要な「秘密の部屋」にたどり着くまでには5つのドアをくぐらなければならないとのこと。
扉を開けると……
さらなるトンネルが続いていました。建物は爆発や地震に耐え200年は存続するよう設計されています。
建物の入り口から120メートルほど進んだ場所に3つの貯蔵庫が存在しますが、現在使われているのはそのうちの1つ。貯蔵庫は永久凍土層の中にあるので、空調をきかせなくても1年中マイナス4〜5度の気温が保たれているそうです。そのため、もしトラブルがあり電気が使えなくなっても貯蔵庫では低い気温を保てるというわけ。
トンネルの奥に進むとさらに扉があり……
扉を開くと……
壁や天井が凍った部屋が現れました。
永久凍土のトンネルの中には扉が3つあり、それぞれが貯蔵庫に続いています。
室内はあらゆる箇所が氷だらけです。
貯蔵庫の中には以下のように種子のパックやボトルが入った箱が並んでいるとのこと。
種子は空港を通してやってきますが、パッケージは1度も開けられていません。パッケージを開けられるのは実際に種子を使う人だけだそうです。また、マリファナのようなドラッグや、遺伝子組み換え植物の種子は受け付けられていないとのこと。
時には自分で遺伝子組み換えした植物の種子を保存して欲しい、と言われることがあるそうですが、お断りするそうです。
ということで、いよいよ貯蔵庫の中に潜入。
中に入ると、もう1枚扉があるのがチラリと見えます。
扉をくぐると、貯蔵庫の中はこんな感じ。温度はマイナス18度に保たれています。
ベントさんの後ろに……
カナダ国旗のシールが貼られた段ボール箱がたくさん並んでいます。箱の外から中に入っている種子の種類を知ることはできませんが、バーコードが記されたシールをコンピューターで読み込めば中身がわかるようになっています。
赤い木箱は北朝鮮から届けられたもの。「1960年代からやってきたって感じだね」とコメントされていました。
同じ棚には韓国から来た箱や、アメリカから来た箱も並んでいます。
「小さな国連みたいなものよ」とベントさん。
まだまだ貯蔵庫には空きスペースがありますが、3つの貯蔵庫が全て機能すれば10億もの種子を保存できるようになります。
「気候の変化によって、今から20年、30年、40年後の世界でどんな植物が育つのかは誰にもわかりません。さまざまな種類の種子を保存しておくことは、次の世代が食物を得るために非常に重要なのです」とベントさんは語りました。
種子の貯蔵庫はピッツベルゲン島の貯蔵庫だけに限らず、大小あわせて世界1700箇所に存在します。貯蔵庫の運営には莫大な費用が必要になりますが、内戦によってシリアの国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)での研究が困難になり、レバノンとモロッコに施設を移動させることになった際に世界種子貯蔵庫に種子が役立ったことを鑑みると、貯蔵庫の役割は非常に大きいと言えます。
貯蔵庫のうち1箇所だけできていた空間はモロッコ&レバノンに出荷された種子があった場所。ICARDAはスヴァールバル世界種子貯蔵庫に325箱を預けていましたが、そのうち130箱・11万6000サンプルが新しい施設に返却されたそうです。