レッドブル、翼を授ける。(Red Bull Gives You Wings)」というのはエナジー・ドリンクの方です。日本でも青色と銀色に輝く胴長の缶が販売されています。アメリカも、ヨーロッパも同じです。ただ、東南アジアは違っていました。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。世界各地にレッドブルは置いてありました。ただし、場所によって販売されているものが違います。同じ南アジアだというのに、インドとネパールで違っていたのも衝撃的でした。

◆青のレッドブル

青色と銀色が交差する背景の中央に2匹の赤い牛が対峙しているデザイン。日本の人々がレッドブルと聞いて思い浮かぶのはこれではないでしょうか。炭酸の利いたスカッとした味わい。海外だと250mlのサイズで1缶200円前後が目安でした。競合するメーカーは多いのですが、頭ひとつ抜けだした高級路線を維持しています。コカ・コーラ社のエナジードリンクであるバーン(burn)のように、販売国によって値段が極端に安くなるようなこともありません。様々なスポーツイベントに協賛することで、トップブランドの維持に努めています。

アイルランドで手にしたレッドブル



チュニジアのレッドブルはアラビア語とフランス語の二重表記でした。



アメリカにはレギュラーサイズの250mlとは別に16FL OZ(473ml)といった大容量サイズも販売されています。



こうして海外と比較すると、日本の185mlというミニサイズも珍しいです。



◆金のレッドブル

青のレッドブルは世界中で販売されていました。ただし、東南アジアとその近辺では主流ではありません。そこら一帯では金色に輝く短足の缶が人気でした。金のレッドブルにも2匹の赤い牛が描かれています。パクリとかでもなく正規のレッドブルです。容量が250mlというのは青のレッドブルと同じで、1缶100円前後が目安。炭酸ではなくて、日本の栄養ドリンクのような味わいでした。かなり甘いです

マレーシアのレッドブル



シンガポールのレッドブル



中国のレッドブル。レッドを紅と表すのが中国ですね。



ミャンマーにも金のレッドブルが販売されていました。



金のレッドブルのタブも牛の形に打ち抜かれています。



ヒマラヤ山脈を越えたネパールにも金のレッドブルが置いてありました。インドには青のレッドブルしかなかったので意外でした。



缶の裏面にはにはプルタブを使ったキャンペーンの告知。デーヴァナーガリーと呼ばれる現地の文字で書かれています。



レッドブルの故郷

そもそもレッドブルはタイが発祥のブランドです。タイでは1965年に大正製薬のリポビタンDが販売され、長らく高い市場シェアを握っていました。このリポビタンDに触発され、タイのT.C. PHARMACEUTICALという企業が新しい栄養ドリンクを開発。1976年に「Krating Daeng(赤いガウル)」という名前で市場に投入します。世界に羽ばたくレッドブルとなったKrating Daengですが、後発ということもあり、タイ国内ではあまりシェアを握っていません。

タイで販売されているレッドブル(Krating Daeng)。真ん中のレギュラー瓶は10バーツ(約34円)。



近年のレッドブルはビタミンや亜鉛などが入っていたりと種類が豊富。



朝鮮人参に含まれるジンセノサイドを配合したというレッドブルもありました。



◆世界のトップブランドへ

このようなアジアの栄養ドリンク市場に目をつけたのが、オーストリア人のディートリヒ・マテシッツという実業家でした。ヨーロッパでも同じビジネスが成功すると信じ、1984年にKrating Daengの海外販売ライセンスを取得。独自の改良を加えて、1987年にレッドブル(REDBULL)という名前でオーストリアで販売をスタートさせます。こちらが今の今に繋がる青のレッドブルです。

この金のレッドブルと青のレッドブルの違いを表にするとこんな感じ。



栄養ドリンクエナジードリンクという表現は、日本の薬事法にそった厳密な分類ではなく、飲み心地がどちらに近いかという私の主観。簡単にいうなら炭酸があればエナジードリンク、なければ栄養ドリンクですね。

青のレッドブルのオフィシャルサイトには、167ヶ国で販売されているとあります。アニメーションでは1987年にオーストリアから始まって、年数が経つごとに販売エリアが世界中に広がっていくのですが、未だにタイの近辺は販売エリアには含まれていません。ライセンスによって販売エリアに制限がかかるのでしょう。

レッドブルの歴史 __ エナジードリンク __ レッドブル・ジャパン

http://energydrink-jp.redbull.com/history



◆シャーク

タイにはシャークという栄養ドリンクも販売されています。こちも国によって、味とデザインを大きく変えていました。

こちらが、タイで販売されれているオリジナル。炭酸無しで、栄養ドリンクのような味わい。



ヨーロッパだとデザインが全然変わります。アルファベットのSHARKというスペルが鮫の形を表していました。炭酸ありでエナジードリンクに近い味わい。



一方で、ずいぶんとすました顔の鮫が泳いでいるのはミャンマーのシャークでした。こちらも250ml缶で、炭酸も入っていません。



そして日本で販売されているのはこちら。ヨーロッパと同じデザインですがミニサイズ。



このシャークというブランドを保有するのがOsotspaという会社です。「リポビタンD」「M-150」といった有名ブランドも抱え、タイの栄養ドリンクではトップのシェアを突き走っています。紹介したように海外進出にも積極的です。

Osotspa International co. ltd. MARKET

http://www.osotspa-international.com/en/market.php

◆タイの栄養ドリンク

アメリカの日常には炭酸ジュースがありました。旧ソ連の日常にはアルコールがありました。そう考えるとタイの日常といえば栄養ドリンクです。タイのコンビニの冷蔵庫にはキンキンと冷えた茶色い小瓶が並んでいます。地元の人が扉を開けて栄養ドリンクを手にしていきます。タイの栄養ドリンク市場が充実してかいたからこそ「レッドブル」「シャーク」といったブランドが世界に飛び出したわけです。

タイには様々な栄養ドリンクが販売されています。



「M-150」は、レッドブルを押しのけ、タイで圧倒的なシェアを握っています。



「リポビタンD」も定番。タイでは12バーツ(約40円)で手に入ります。



「READY」というケミカルな色をした栄養ドリンク



世界のエナジードリンク、栄養ドリンクを知るにあたって「レッドブル」と「タイ」は欠かすことのできないキーワードでした。東南アジアには私たちには馴染みのない金のレッドブルが販売されていますので、訪問の際は注目してみてください。

私としても、この後にでも中国を訪問する予定なので、中国のレッドブル事情も確認してきます。過去の旅だと、金のレッドブルしか記憶にありません。ただ、13億人という巨大なマーケットを青のレッドブルが放っておくにも違和感があって、どうなっているのか気になっています。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

自転車世界一周取材中 http://shuutak.com

Twitter @shuutak)