2016年クラシック候補たち
第12回:エンジェルフェイス

 3歳牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)は、ジュエラー(牝3歳)が接戦をモノにした。続く第2弾、GIオークス(東京・芝2400m)は5月22日に開催される。

 今年、そのオークスに向かう面々の中に、姉たちが果たせなかった"夢"をつかむべく牝馬クラシック制覇を狙う馬がいる。エンジェルフェイス(牝3歳/父キングカメハメハ)である。

 彼女は、重賞勝ち馬となった2頭の姉を持つ。2007年生まれのレディアルバローザ(父キングカメハメハ)と、2009年生まれのキャトルフィーユ(父ディープインパクト)だ。

 レディアルバローザは、2011年、2012年とGIII中山牝馬S(中山・芝1800m※2011年は阪神開催)を連覇。2011年にはGIヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)で3着と健闘した。

 キャトルフィーユは、GIIIクイーンS(札幌・芝1800m)の勝ち馬で、重賞レースの常連だった。愛知杯(中京・芝2000m)や中山牝馬Sなど、2着に好走した経験が4度もある。

 この2頭は、いずれも牝馬クラシックにも挑戦している。レディアルバローザは、2010年の桜花賞に出走し11着だった。キャトルフィーユは、2012年のオークスに挑んで14着に終わった。

 それぞれ、結果は振るわなかったものの、クラシックは出るだけでも困難な舞台。そうした経験を持つ姉がいることは、その血筋の強さの証明であり、エンジェルフェイスにとっては心強い限りだ。

 当のエンジェルフェイスは、昨年12月にデビュー。初戦は3着、2戦目も2着と惜敗が続いた。それでも、好スタートから先行するセンスのいいレースぶりは光っていて、3戦目の3歳未勝利(2月27日/阪神・芝1800m)では鮮やかな逃げ切り勝ちを収めた。

 すると、続く4戦目にはGIIIフラワーC(3月21日/中山・芝1800m)に臨んだ。いきなりの重賞挑戦となったが、ここでも好スタートから先手を奪うと、最後まで後続を寄せつけず、逃げ切って快勝。姉2頭に続く重賞タイトルを手にして、オークスへの出走を確定させた。

 エンジェルフェイスを管理するのは、藤原英昭厩舎(栗東トレセン/滋賀県)。フラワーCからオークスへと直行する同馬について、陣営のトーンは上がっているという。関西競馬専門紙のトラックマンが伝える。

「フラワーCのあとは、放牧に出さずに厩舎で調整してきました。その経過がいいのか、調教師からも『折り合いがよくなってきたし、体もしっかりしてきた』と、前向きなコメントが聞かれます。『オークスに右肩上がりで出せるように調整しているが、ここまではすこぶる順調』とのことですね。腕利きの藤原調教師がこう言うのですから、よっぽど状態はいいのでしょう」

 藤原調教師は、過去に『最高勝率調教師賞』を3度獲得している名トレーナー。GI常連厩舎で、そこから威勢のいいコメントが出てくるのであれば、楽しみは広がる一方だ。

 また、エンジェルフェイスの長所について、陣営はこんなふうに捉えているという。前述のトラックマンが続ける。

「2勝はいずれも逃げ切り勝ちですが、気性的に『逃げなければダメ』というタイプではなく、『とにかくスタートセンスが抜群なため、結果的に逃げる形になっている』とのこと。スタートで少しでもリードが取れるのはメリットですし、オークスでも前々につけて、絶妙なペースで運べれば、十分に好走は可能でしょう」

 桜花賞で圧倒的な人気を集めながら4着に敗れたメジャーエンブレム(牝3歳)は、オークスからGINHKマイルC(5月8日/東京・芝1600m)へと矛先を変えた。そうなると、中団から後方に構える桜花賞1、2着馬、ジュエラーとシンハライト(牝3歳)が自然とレースの中心になるだろう。

 ということは、先行勢への警戒は俄然薄くなる。強力な同型もいなくなって、展開はエンジェルフェイスに向くかもしれない。

 姉2頭が涙をのんだ牝馬クラシックの舞台。エンジェルフェイスがその雪辱を果たす可能性は十分にある。

河合力●文 text by Kawai Chikara