2016年クラシック候補たち
第11回:ロッテンマイヤー

 1995年のGI阪神3歳牝馬S(阪神・芝1600m。※馬齢変更前。現在の阪神ジュベナイルフィリーズ)の覇者であるビワハイジ。現役時から優れた成績を残してきた彼女だが、本当の意味で秘めた能力を発揮したのは引退後だった。

 繁殖牝馬として、これまでに数多くの重賞馬を送り出してきているのだ。GI通算6勝のブエナビスタをはじめ、2011年の阪神JFをデビューわずか2戦で制したジョワドヴィーヴル、さらに2005年菊花賞2着のアドマイヤジャパン(重賞1勝)、2007年日本ダービー3着のアドマイヤオーラ(重賞3勝)などがそうだ。

 その一族から、今年も3歳クラシックを狙う牝馬が登場した。ロッテンマイヤー(牝3歳/父クロフネ)である。

 母は、ビワハイジが2007年に生んだアーデルハイト。ビワハイジの孫であり、ブエナビスタやジョワドヴィーヴルの姪となる良血馬だ。その血筋どおり、彼女は今年のGIオークス(5月22日/東京・芝2400m)に堂々と参戦する。

 ロッテンマイヤーは、2歳時に骨折してしまったため、年明けの3歳新馬(1月10日/京都・芝1800m)でデビュー。同レースを先行して押し切る磐石の競馬で快勝すると、2戦目には早くも重賞のGIIIクイーンC(2月13日/東京・芝1600m)に挑戦した。

 このレースでは、昨年の2歳女王であるメジャーエンブレムが5馬身差の圧勝劇を演じたが、ロッテンマイヤーも中団からきっちりと伸びて3着を確保。レコード決着となる中、2戦目とは思えない底力を見せた。

 3戦目として臨んだのは、桜花賞当日に行なわれたオープン特別の忘れな草賞(4月10日/阪神・芝2000m)。クラシック第1弾の舞台には立てなかったものの、のちのライバルたちがしのぎを削る前に、秘めた能力を存分に見せつけた。好スタートから先手を奪ってペースを握ると、最後もきっちり伸び切って快勝。賞金を加算して次なる大舞台への切符を手にした。

 骨折というアクシデントでデビューが遅れながら、無事クラシックへと駒を進めることができたロッテンマイヤー。管理する池添学厩舎(栗東トレセン/滋賀県)でも、その頼もしさに目を見張っているという。関西競馬専門誌のトラックマンが様子を伝える。

「陣営としては、ロッテンマイヤーは骨折の経験があるので、『無理してクラシックに合わせることなく、一戦、一戦、大事にゆっくりと使ってきた』とのこと。それでいて、最終的に『クラシック(路線)に乗れたのは大きい』と感心していましたね。能力がないとできないことですからね。加えて、『忘れな草賞では見違えるような馬体になっていたし、レース内容も使うごとによくなっている』と、その成長ぶりには目を細めていました」

 ずっと脚元に気を使って調整してきたが、馬体の成長によって、今ではケガの不安もほとんど感じないという。クラシックに向かう態勢は十分整っており、本番でも侮れない存在になりそうだ。

 ゆえに、スタッフたちはこの馬の"大仕事"に期待しているという。前述のトラックマンが続ける。

「先行してもいいし、差す競馬もクイーンCで見せています。『どんなレースでもできるし、初めて経験する2400mの距離も心配していない』と、調教師も胸を張っていました。忘れな草賞では、早めに後続がプレッシャーをかけてくる中、逆に最後は突き放しましたからね。勝ちタイムも、昨年のレースを勝った二冠馬(オークス、秋華賞)ミッキークイーンより速くて、ラストの上がりも上回っています。陣営でなくとも、楽しみが膨らみます」

 4戦目でオークスを制覇すれば、史上最少キャリアタイとなる。もちろん、桜花賞組に挑戦する立場であることは間違いないが、名馬がズラリと名を連ねる一族の出であることを考えれば、大舞台で一発があってもおかしくない。

河合力●文 text by Kawai Chikara