楽して筋トレ、はやめたほうがよさそう

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イスラエルのカプラン医療センターと、スイスのシュルテスクリニックの共同研究チームは、電気刺激を与え筋肉を鍛えるスーツ型のトレーニング装置「EMS」には、重篤な疾患を引き起こす可能性があるとした研究結果を発表した。

EMSは、腕や足、腹部にパッドを貼り付け、筋肉に直接弱い電気刺激を与えることで、実際に体を動かさなくても筋肉が動き、トレーニング効果が得られるとされている。トレーニングやフィットネスの習慣がない人の代替的な運動方法として利用されている。

研究者らは、20歳の健康なイスラエル人男性が、フィットネスジムでEMSを使用したあと、激しい筋肉痛やだるさ、麻痺などを訴え、医療機関に来院したことに注目。診断の結果、「横紋筋融解症」と呼ばれる、筋肉の細胞が溶け、血中に流出する疾患を発症していた。

横紋筋融解症は事故による外傷や、熱中症、薬剤の副作用などが原因で発症し、適切な治療を受けない場合、腎不全を発症し、死亡する例も確認されている。

男性には原因に該当するような事例はなく、詳しく検査をおこなったところ、EMSによる過度な電気刺激を受けたことが原因だと判明したという。

そこで、研究者らがテレビやラジオを通じ、EMS使用後に筋肉痛や麻痺などを感じた経験がある場合、速やかに医療機関を受診するよう呼びかけると、さらに2人の横紋筋融解症患者が見つかった。

同様の症状を訴える患者は現在も増加しており、研究者らは「軽度で自然治癒した患者や、過去に発症した経験がある患者はさらに存在している可能性がある」とコメント。事態拡大を避けるためにも、EMSの安全性を見直し、必要に応じて規制すべきであると主張している。

こうした研究結果を受け、イスラエルでは2016年1月から、医師の指示や監督下にない状況でEMSを使用することが全面的に禁止されているという。発表は、2016年3月30日、イギリス医師会雑誌オンライン版に掲載された。

参考文献
It's time to regulate the use of whole body electrical stimulation.
DOI: 10.1136/bmj.i1693. PMID: 27029738

(Aging Style)