2016年クラシック候補たち
第10回:アルカサル

 GI皐月賞(中山・芝2000m)が終わり、3歳牡馬クラシックの戦いは、競馬界最高峰の舞台となるGI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)へと向かう。中心となるのは、もちろん皐月賞で上位を争った面々だろうが、別路線からもダービーでの"天下統一"が期待される馬たちがいる。

 なかでも注目は、アルカサル(父ドリームジャーニー)である。兄にはダート重賞を勝っているジェベルムーサ(牡6歳/父アグネスタキオン)がおり、欧州の活躍馬が近親に名を連ねる良血馬だ。

 アルカサルは、昨年12月12日の2歳新馬(中山・芝1800m)でデビュー。後方待機からレース中間で早くもスパートをかけると、3コーナーでは先頭に立って、そのままクビ差の接戦をきっちりモノにした。

 続く条件戦の水仙賞(2月27日/中山・芝2200m)も、道中は後方でじっくりと脚をため、3コーナーから一気のロングスパート。直線入り口で先頭に並ぶと、後続を2馬身半突き放す競馬で快勝。特徴的なレーススタイルで2連勝を飾り、一躍脚光を浴びた。

 同馬を管理するのは、大竹正博厩舎(美浦トレセン/茨城県)。デビュー前は、必ずしも評価の高い1頭ではなかったようだ。しかしその後、スタッフが驚くほどの成長ぶりを見せたという。関東競馬専門誌のトラックマンがその詳細を伝える。

「デビュー前は、調教タイムも目立たず、まだ馬体もモッサリしている感じでした。陣営も、アルカサルの力がどれほどのものか、つかみかねている様子でした。初戦を勝ったあとも、陣営は『なんとか勝てたけど、まだ体が緩いし、完成するのはまだまだ先かな......』と言っていたんです。

 それが2戦目で、馬が大変身。スタッフは『前向きになり、走りに素軽さも出てきた。調教の手応えも抜群で、一気に馬が変わった』と、同馬に対する評価が急激にトーンアップしましたね。実際に見ても、『ここまで変わるか!?』というほど、違う馬になっていました。しかも、その良化はまだ続いているとのこと。このままいけば、ダービーの頃にはかなり楽しみになっているのではないでしょうか」

 兄はダートで実績を積んで、弟は芝で活躍。それぞれ違う道を歩んでいるが、弟アルカサルがこれまでの2戦で見せたロングスパートは、同厩舎の兄ジェベルムーサも得意とするスタイルで、この兄弟の特徴と言える。そのスタイルの秘訣について、前述のトラックマンがこう解説する。

「アルカサルも、兄のジェベルムーサも、後ろ脚の蹴りがかなり強く、トップスピードに乗り切ってからの走りがすごいらしいんですね。それで、あえてレースの中盤に加速して、早めにトップスピードに乗せ、その走りを長く発揮させるスタイルを選んでいるようです」

 2戦目のあと、皐月賞のトライアルには向かわず、ダービーへ向けて調整を重ねてきたアルカサル。今後は、ダービートライアルとなるGII青葉賞(4月30日/東京・芝2400m)から本番を目指す。トラックマンが、陣営の手応えを伝える。

「水仙賞から皐月賞を狙うと、ローテーションがややタイトになるため、陣営は『無理せず成長を促した』とのこと。青葉賞はかなりの好メンバーになりそうですが、『この馬の成長度合いを考えると、楽しみのほうが大きい。ここを勝てれば、本番でも好勝負できる』と力が入っていますよ」

 2戦目からさらに良化していることを考えれば、強敵相手でも十分通用するはずだ。それでもし、青葉賞を勝って3戦3勝でダービーに挑むことになれば、王道路線を進むライバル陣営にとっても脅威の存在となるだろう。

 はたしてアルカサルは、一躍ダービーの有力候補に浮上するのか。まずは青葉賞でどれだけスケールアップした姿を見せてくれるのか、注目したい。

河合力●文 text by Kawai Chikara