皐月賞「3強」の思惑(3)
マカヒキ編

 今年のGI皐月賞(4月17日、中山芝2000m)は、2歳チャンピオンのリオンディーズ(牡3/父キングカメハメハ)、GIIIきさらぎ賞(2月7日/京都・芝1800m)まで3戦3勝のサトノダイヤモンド(牡3/父ディープインパクト)、そして同じくGII弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)でリオンディーズを下して、3戦無敗のマカヒキ(牡3/父ディープインパクト)の3頭による"3強"がその主役と目されている。

 これまでのレースぶりから甲乙つけがたい3頭の実力だが、その一方で、この3強にそれぞれ不安要素がある点も、ファンの選択を迷わせる要因となっている。例えば、跳びの大きいリオンディーズは小回りでの対応力、サトノダイヤモンドは1990年以来途絶えている、きさらぎ賞からの直行ローテーションといったもの。

 中でもマカヒキは、これまでに皐月賞で勝ち鞍がないディープインパクト産駒、この馬に初騎乗となる川田将雅騎手への手替わり、過去20年で3頭(01年アグネスタキオン、05年ディープインパクト、10年ヴィクトワールピサ)しか勝利していない弥生賞勝ち馬、同じ血統背景を持つ姉のウリウリは短距離馬など、3強の中では憂慮すべき点が多く、前哨戦を好内容で勝っていながら3番手評価とする声も多く聞かれる。

「でも、それで人気を落とすようであれば、むしろ馬券的にはおいしいという意見が、トレセンに出入りしている記者たちからは多く出ていますね」

 そう話すのは、デイリー馬三郎の吉田順一記者である。

「特に強く懸念されているのが乗り替わりですが、ルメール騎手騎乗ということで過剰に人気になりそうな要素がなくなりましたからね。そもそも乗り替わり自体、ルメール騎手が手放したというより単なる先約の都合。折り合いもつきやすい馬ですし、乗り替わりにナーバスになる必要はありません」

 実は皐月賞の歴史を紐解いても、過去20年で6例もあるように、テン乗り(乗り替わりによる初騎乗)での勝利はめずらしいことではない。昨年のドゥラメンテも同馬に初騎乗のミルコ・デムーロ騎手が勝利に導いた。川田騎手自身についても、皐月賞は08年にキャプテントゥーレのコンビで自身初GIタイトルとなる勝利を挙げた経験もある。

 他の懸念も、いずれも悲観するようなものではない。弥生賞から皐月賞を連勝したケースは、父ディープインパクトを踏襲するものだ。それだけではない。デビュー戦の新馬戦→若駒ステークス(京都・芝2000m)→弥生賞を3連勝という戦績も父とまったく同じ。また、マカヒキを管理する友道康夫調教師は、かつてスプリングステークスから皐月賞を勝ったアンライバルドを手掛けており、それを踏まえてのローテーションと受け取れる。全姉ウリウリもこてこての短距離馬ではなく、距離に融通性もある。

 何より、この馬自身のポテンシャルが不安を一掃させる。

「折り合い+機動力+一瞬の決め脚に優れており、3強の中では一番きれいなフォームで走り、最後の決め脚は最上位の存在。他の2強に騎乗する、デムーロ騎手がデビュー戦、ルメール騎手は2、3戦目でマカヒキに騎乗しており、どちらもこのことを認識していることも確かです。展開面で、有力馬2頭を見る形で運べる点も有利と言っていいでしょう」(吉田氏)

 さらにレースレコード決着となった弥生賞後の調整過程からも、マカヒキの充実ぶりを推し量ることができる、と吉田記者は続ける。

「同じレースを使ったリオンディーズの本追い切りが3月30日。きさらぎ賞以来の実戦となるサトノダイヤモンドは3月21日。この2頭に対しマカヒキは3月24日。レースを終えてからの乗り出しは、明らかに3強の中では一番早い。好時計決着の後にもかかわらず、攻めの調教に徹していて、質量ともに上回っているのは強調材料です。1週前追い切り後の馬体はトモ(後肢)がこぢんまりと映りましたが、これは前腕のボリュームが増したことと、攻め量が要因でしょう。いい意味で、キレのあるシェイプになってきました」

 馬名の由来となったハワイ語のマカヒキ(Makahiki)は収穫祭という意味と同時に、農暦における1年の始まりという意味も持つそうだ。3強から1強の年へ。カウントダウンはもう始まっている。

土屋正光●文 text by Tsuchiya Masamitsu