皐月賞「3強」の思惑(2)
リオンディーズ編

 4月17日(日)は、中山競馬場で牡馬クラシック第1弾・GI皐月賞(芝2000m)が行なわれる。今年は有力馬が揃い、ハイレベルな争いが予想されている。今回は無敗の2頭、マカヒキ、サトノダイヤモンドに並ぶ"3強"の一角と見られているリオンディーズ(牡3/父キングカメハメハ)にスポットを当てた。

 同馬は昨年11月、京都芝2000mの新馬戦を勝ち、1戦1勝の身で果敢にGI朝日杯フューチュリティステークス(2015年12月20日/阪神・芝1600m)に出走。4コーナー15番手(後ろから2頭目)という後方待機から、断然の1番人気エアスピネルを差し切り優勝。最優秀2歳牡馬に輝いた。

 前走、約2カ月半ぶりの出走となったGII弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)は、朝日杯とは打って変わり、4番手追走から直線入り口で先頭に立つ競馬から、後方待機のマカヒキに差されて、初の敗戦となる2着に終わっている。2歳王者として復権を期すリオンディーズについて、あらゆる角度から分析してみよう。

【距離適性】
 これまで、2000mは2戦1勝2着1回。あまりスタートダッシュの速いタイプではないが、前半600m通過36秒8、1000m通過62秒4の新馬戦、同じく34秒3、59秒5の弥生賞と、流れの異なるレースで、いずれもゆっくり目のスタートから行きたがり気味に先行している。これまでは折り合いを欠いても我慢が利いているが、朝日杯フューチュリティSの走りを見ると、やはり後方で脚をためて末脚を生かす競馬が理想。今回のメンバーでは超スローペースになることも考えられるので、そういった展開になった時に折り合いを欠いて暴走してしまう不安は捨てきれない。兄エピファネイアもGI皐月賞では折り合いを欠き、道中の追走で消耗。ロゴタイプから1/2馬身差の2着に惜敗した。当日の精神状態には注意したい。

●結論
 折り合い面で、やや不安あり。


【コース適性】
 中山では弥生賞の1戦のみ。唯一の敗戦となったコースだ。脚をためる競馬がベストとはいえ、直線は310mと短く、早めの競馬が意識されるだろう。しかし、後方を進むと思われるマカヒキの目標にはなりたくないので、レースがしやすいコースとは言いにくい。ミルコ・デムーロ騎手がどう乗ってくるかは興味深い。

●結論
 レースがしやすいコースではない。

【経験値】
 ここで言う経験値は、単にレース数の多さだけではなく、いかに多くのパターンの競馬に対応してきたかというもの。リオンディーズは3戦とも外側の枠(15頭立て8枠15番、16頭立て8枠15番、12頭立て7枠10番)に入り、馬群に入るような競馬は経験がない。内側の枠で出遅れて馬群に包まれるような競馬になった場合、対応できるかは未知数だ。

 馬場状態は3戦とも良馬場だった。デビューから2戦で上がり3ハロン33秒台前半の脚を使い、GII弥生賞も勝ち時計2分を切る速いタイムの決着だった。道悪や時計のかかる馬場には多少不安が残る。

 しかし、前走の敗戦は、"同じ競馬をしたらまたマカヒキに差される"ということが見えたので、その経験は大きい。過去20年、無敗で皐月賞に臨んだ馬は14頭いたが、勝利したのはアグネスタキオンとディープインパクトの僅か2頭。後のダービー馬ロジユニヴァースも、菊花賞馬キタサンブラックもここで初の敗戦を喫している。"負ける"という経験はそれだけ課題や対策が見えてくるという大事なものなのである。先週のGI桜花賞のジュエラーも、昨年のGI皐月賞のドゥラメンテも、前走1番人気で2着に敗れながら、デムーロ騎手が課題を修正して勝利に導いているのが、それを証明していると言えるだろう。

●結論
 揉まれる競馬や馬場は未知数も、"負け"を経験したのはプラス。


【2歳王者】
 前年の2歳王者は、2013年にロゴタイプが勝利しているが、その前は1994年のナリタブライアンまで遡るように、あまり好成績を残してはいない。過去20年では11頭が出走し、1勝、3着2回(02年エイシンチャンプ、08年セイウンワンダー)、着外8回と、馬券に絡んだのは3頭だけだ。ただ、皐月賞が4戦目というのはリオンディーズが初めて。あまり使い込まれておらず、上昇が見込める点は好材料。

●結論
 データ的には厳しいが、キャリアの少なさは好材料。

【血統】
 父キングカメハメハ産駒のGI皐月賞成績は、16頭が出走し[1-1-1-13]。ディープインパクトのそれは[0-2-2-12]で、大きな差はないが、13年コディーノ(3着)、14年トゥザワールド(2着)、15年ドゥラメンテ(1着)と、過去3年連続で馬券に絡んでいるのは心強い。

 母系は、母シーザリオがGIオークス、米GIアメリカンオークスを勝った名牝で、兄エピファネイアはGI菊花賞、GIジャパンCの勝ち馬という超良血。エピファネイアは前述の通り、13年のGI皐月賞で折り合いを欠きながら2着に入った。兄同様気性面の問題はあるが、母は2400mの、兄は2400mと3000mのGIを勝っており、血統の字面上は長距離向きだ。

 さらに、祖母の父のサドラーズウェルズに注目。この血を持つ馬は過去20年で99年テイエムオペラオー(父の父)、07年ヴィクトリー(祖母の父)、06年メイショウサムソン(父の父)、09年アンライバルド(母の父)、13年ロゴタイプ(4代父)と5頭が優勝。中山向きの血脈だ。

●結論
 父や母系のサドラーズウェルズなど、強調材料は多い


【まとめ】
 以上、あらゆるファクターからリオンディーズを分析したが、どちらかというとマイナス材料の方が多い印象だった。しかし、データでは表せない"潜在能力"や"スケール"という点においては、一流馬のそれを感じさせており、血統面の後押しも十分。過去の傾向を打ち破りそうな魅力がある。

 さらに、3強の他2頭に比べ、"負けている"というのは強みである。気性面の危うさや展開の難しさがあり全幅の信頼は置けないが、他の2頭にもウィークポイントはあるので、リオンディーズが強い勝ち方を見せる可能性も十分。展開と騎手の判断に大きく左右されそうで、どんなレースになるか楽しみだ。

平出貴昭(サラブレッド血統センター)●文 text by Hiraide Takaaki