皐月賞「3強」の思惑(1)
サトノダイヤモンド編

牡馬クラシック第1弾の皐月賞が4月17日に開催される。近年まれに見る「ハイレベルな争い」と称される今年の3歳牡馬戦線。なかでも注目は、3戦3勝のマカヒキとサトノダイヤモンド、2歳王者リオンディーズの「3強」である。そこでまず今回は、サトノダイヤモンドの鞍上を務めるクリストフ・ルメール騎手に、同馬の強さをうかがうとともに、クラシックに向けての意気込みを聞いた――。

―― まもなく皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)です。今回は牡馬クラシックについてお話を聞かせてください。今年の3歳牡馬は例年に比べて「レベルが高い」と言われていますが、ルメール騎手もそう思われますか。

「はい。3歳牡馬のレベルはとても高いですよ。弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)を振り返ってみてください。天気がよくて、トラックコンディションがよくて、ペースも有利、不利のない、強い馬が勝つペースとなって、すごくいいレースになりました。リオンディーズ(牡3歳)とエアスピネル(牡3歳)が今年初めてのレースで、その点はマイナス材料となりましたけど、それでも2頭とも持てる力を発揮。あれだけ素晴らしいレースになったのは、彼らのレベルが高かったからに他なりません」

―― その弥生賞は、ルメール騎手騎乗のマカヒキ(牡3歳)が勝ちました。その結果、ずっと手綱を取ってきたサトノダイヤモンド(牡3歳)と、ルメール騎手がクラシックではどちらに乗るのか注視していました。すると、意外にあっさりとサトノダイヤモンドに騎乗することが発表されました。サトノダイヤモンドを選んだ理由を教えてください。

「どちらも強い馬だから、ボクにとってはすごくディフィカルト・チョイスでしたね。でも、マカヒキと違って、サトノダイヤモンドは新馬のときからボクが乗り続けてきた馬ですからね。そこが、大きな理由のひとつです。最初に騎乗して、すごく強い馬だと認めて、ずっと一緒に戦ってきて、期待どおりの結果を残してきてくれた。そういう馬と、ともにクラシックを戦いたい、と思ったわけです。あと、距離2400mへの対応力を考えると、マカヒキよりもサトノダイヤモンドのほうが上ではないか、と」

―― それはつまり、日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)まで意識しての選択だったということでしょうか。

「やはり、ダービーは勝ちたいです。マカヒキも2400mの距離に対応できないわけではありませんが、どちらがより(2400mの距離に)対応できるか考えた場合、サトノダイヤモンドのほうだと思います。ほんのわずかな差ですけどね」

―― 確かにサトノダイヤモンドは、前走のきさらぎ賞(2月7日/京都・芝1800m)でも強い競馬を見せてくれましたけど、今思えば、そのレースを勝つことよりも、その先のクラシック、とりわけダービーを意識してレースをしていたように感じます。

「弥生賞に比べるとメンバーは少し落ちるかもしれないけど、このメンバーを相手にどんな競馬をして勝ってくれるのか、とは思っていました。スタートがよくて、ペースも展開も悪くなかったですから、道中はずっとリズムよく走っていました。直線に入ってからも余裕をもって抜け出して、すべてにおいて満足のいくレースでしたね。それに、あなたが言うとおり、(クラシックに向けて)とてもいいテストになりましたよ(笑)」

―― サトノダイヤモンドの一番いいところはどんなところですか。

「馬体もきれいだし、スピードも、パワーもある。精神的にも落ち着いていて、大人っぽいと思う。それらはすべてがいいところだと思いますけど、どれかひとつと言われれば、加速するときの脚でしょうか。あの脚は、本当に素晴らしいです」

―― 新馬のときから、それだけすごい馬だと思っていましたか。

「デビュー戦前の調教に乗ったときは、そこまでいい印象はありませんでした。まだちょっと子どもっぽいかな、という感じでしたね。でも、実際にレースで走らせると、すごく走る。びっくりしましたよ。新馬の場合、ちょっとしたことで勝ったり、負けたりするので信用できないところもあるんですが、サトノダイヤモンドは2戦目も強い競馬で快勝。3戦目のきさらぎ賞も強かった。それで自分の中で、(サトノダイヤモンドに対する)自信がどんどん膨らんでいきましたね」

―― ルメール騎手は、昨年のダービーではサトノクラウンに乗って3着でした。同馬と比べて、サトノダイヤモンドとどちらのほうが強いと思いますか。

「サトノクラウンより、サトノダイヤモンドのほうが強いと思います。昨年のダービーではドゥラメンテが勝利しましたが、サトノダイヤモンドの強さはドゥラメンテに近いものがあると思っています」

―― サトノダイヤモンドについて、現時点で課題、もしくは注文などあれば、どんなところでしょうか。

「強いて言えば、前の肩とか首がもう少し強くなって、もっとパワフルに脚の送り出しができるようになってほしいですね。ただそれは、そういう質問をされたから、必死に(課題を)探して言っただけ(笑)。現状、特に問題視するようなことは何もありません」

―― ルメール騎手にとって、ダービーとはどんなレースでしょう。

「ダービーは、世界中のどの国でも一年の中で最も重要なレースです。だから、一番勝ちたいレースです」

―― ルメール騎手は、フランスでは2009年にルアーヴルという馬でダービーを制しています。そのときの率直な感想を聞かせてください。

「ベリー・ハッピー! すごくうれしかった。実はその年、ボクはオークスも勝っていたんです。フランスでは、同じ年に同じ騎手がオークスもダービーも制するのは、40年くらい前にひとりいただけだったそうで、すごく話題になったことを覚えています」

―― ダービーも楽しみですが、まずは皐月賞です。勝算はいかがなものでしょうか。

「ライバルとの力関係よりも、皐月賞が行なわれる中山コースはトリッキーですからね、そこがちょっと不安です。サトノダイヤモンドが中山コースを走るのは初めてですし......。中山では、馬場のいいところを通って、直線までうまくレースを進めることができた馬が最後にピュッと伸びて勝つイメージ。ですから、もし他の馬がそういう完璧なレースをした場合は、負けることもあるかもしれません。でも、それ以外に心配なことはありません。ボクは馬を信じて乗るだけです」

―― ライバルは、やはり弥生賞の1着マカヒキ、2着リオンディーズになるのでしょうか。

「ハイレベルのレースでしたからね。あの2頭は脅威です。でも今年は、全体のレベルが高いので、それ以外にも(ライバルは)たくさんいますよ」

―― 皐月賞を勝てば、ダービーと二冠の可能性も膨らみます。

「まずはひとつ、ひとつ。ボクはどのレースに対しても、『このレースのために今日もがんばろう』と思って乗るだけです」

―― ルメール騎手は、大舞台に強いという印象があります。レースでプレッシャーを感じることはあるのでしょうか。

「GIとか大きなレースの3、4日くらい前には、レースのことをいろいろと考えて、プレッシャーみたないものを感じることはあります。でも、いざレース当日を迎えて、馬に乗ったら、何もかもスッと忘れてノンプレッシャーになっています。だから、競馬でプレッシャーを感じたことはありません」

―― 今後も素晴らしい騎乗を期待しています。本日はありがとうございました。

「ド、イタシマシテ(笑)」

新山藍朗●構成 text by Niiyama Airo