桜花賞の興奮が冷めやらぬ中、4月17日には牡馬クラシック第1弾の皐月賞が開催される。今年の3歳牡馬は「近年まれに見るほどのハイレベル」と言われ、同レースに対する注目度も例年以上に高い。その一戦を前にして、元ジョッキーの安藤勝己氏に先週の3歳牝馬に続いて3歳牡馬の分析・診断もしてもらった。そして、安藤氏が熟考の末に選んだ3歳牡馬の番付をここに発表したい。

 今年の3歳牡馬は、レベルが高い。そのうえ、層も厚い。

 例えば、エアスピネル。前哨戦となる弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)で3着に敗れてガクンと評価を落としてしまったけど、例年なら間違いなくクラシック馬になれるレベルだよ。皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)にしろ、日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)にしろ、勝ち負けできる能力を持っている。

 それでも、「一枚落ちる」と見られてしまうのは、エアスピネルより強い馬が、上に3頭もいるから。弥生賞でそのエアスピネルを2馬身ちぎって勝ったマカヒキと、2着のリオンディーズ、そして3戦無敗できさらぎ賞(2月7日/京都・芝1800m)を制したサトノダイヤモンドだ。

 今年は、この3頭が抜けている。皐月賞も、日本ダービーも、勝つのはこの3頭のうちのどれかだと思う。この3頭が、2戦とも見応えのある、ハイレベルなレースを見せてくれるんじゃないかな。そういう意味でも、本当に楽しみ。

 他にも能力の高い馬はいるけれども、少なくとも前走で大敗を喫していたり、不可解な負け方をしたりした馬はノーチャンスと見ている。それだけ上位3頭が強い、ということだ。


○横綱:リオンディーズ(牡3歳)
(父キングカメハメハ/戦績:3戦2勝、2着1回)

 弥生賞では、最後にマカヒキに差されてしまったけど、あのときのクビ差は競馬がうまくいったか、いかなかったかの差。競走馬として本来持っている資質やスケールでは、この馬のほうがマカヒキよりも上だと思っている。それは、サトノダイヤモンドとの比較でもそう。

 弥生賞の敗因は、勝ちにいく競馬をしてしまったこと。少頭数の外枠ということもあって、スタートを決めて普通に出していったら、ずっとハミを取って、行きたがってしまった。最後までメリハリのない競馬になって、あれではこの馬の実力は出し切れないよ。

 皐月賞では、負けてもいいくらいの気持ちで、あえていいスタートを切らない。馬群の後ろに控えさせて、ひたすら脚をためるようにする。そうすれば、朝日杯フューチュリティS(1着。2015年12月20日/阪神・芝1600m)のときのような、ズドーンといったすごい脚を使えるはず。おそらく鞍上のミルコ・デムーロ騎手も、本番ではそんな乗り方をイメージしているんじゃないかな。

 気性面の問題もあって、他の2頭よりも課題が多いのは確か。それでも力を出し切れば、一番強いのはこの馬、と自分は思っている。


○大関:サトノダイヤモンド(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:3戦3勝)

 好みの問題なんだけど、実は自分はディープインパクト産駒があまり好きじゃない。やや小柄で、いかにもバネがありそうで、いきなりガンガン走りそうでしょ? 最初から完成されているというか、あまりにも機敏過ぎて、大物感がないように感じてしまうわけ。

 でも、このサトノダイヤモンドは、典型的なディープ産駒とは違う。いわば、ディープ産駒らしくないディープ産駒。馬体がゆったりしていて、すごく見栄えがいい。性格もよくて、カリカリしたところがない。だから、いいんだよね。上位3頭の中では、レースで一番乗りやすい馬はこの馬だろうね。

 現に、ここまで3戦して、どのレースでも強い勝ち方をして楽に勝っている。ただ、それは裏を返すと、そんなに強い相手と戦っていないんじゃないか、という見方もできる。その意味では、この馬にとって、皐月賞が試金石ということになるだろうね。


○関脇:マカヒキ(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:3戦3勝)

 サトノダイヤモンドとは違って、こちらはいかにもディープの子、という感じ。今年もディープ産駒の有力馬が何頭もいるけど、一番お父さんに似ているんじゃないかな。事実、弥生賞ではお父さん譲りの切れ味を披露し、リオンディーズを見事差し切った。

 弥生賞のレース前には、馬体的にも、気性的にも、距離はもう少し短いほうがいいのでは? と思っていただけに、あの勝ち方には正直びっくりした。出遅れて、終(しま)いだけの競馬になったけど、道中ゆったりと、ずっと落ち着いて走っていた。だから、最後にあの脚が使えたんだろうね。

 結果、皐月賞と同じ距離で勝ったわけだから、評価しないわけにはいかない。とはいえ、自分の持論としては、本当に強い馬というのは自ら勝ちにいって勝てる馬。そういう競馬で勝ち切れるだけの強さが、今のこの馬にはあるのかどうか。そこに一抹の不安がある。


○小結:エアスピネル(牡3歳)
(父キングカメハメハ/戦績:4戦2勝、2着1回、3着1回)

 弥生賞では上位2頭に離されたとはいえ、「3強」の次に名前を挙げるとすれば、この馬。もともと馬体はいいし、血統もいい。冒頭で「例年ならクラシック馬」と評したように、持っている能力も相当なものだ。弥生賞でも、4着の馬には5馬身もの差をつけているからね。生まれた年が悪かったとしか言いようがない。

 しかしながら、弥生賞の負けは、この馬らしくない競馬をしてしまったのが原因。リオンディーズと僅差の勝負を演じた朝日杯FS(2着)では中団でうまく折り合っていたのに、弥生賞ではスタート後に行きたがる素振りを見せて、道中もややロスが多かった。それが、最後の伸び脚に影響したんじゃないだろうか。

 朝日杯FSのような競馬をしていれば、(前と)2馬身も離されることはなかったと思う。勝ち負けは難しいかもしれないけど、侮れない存在であることは間違いないよ。


○前頭筆頭:アドマイヤダイオウ(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:4戦3勝、3着1回)

 この馬もディープ産駒だけど、馬体が大きいところも、ジワジワと伸びてくるレースぶりも、ディープ産駒らしくなくていい。前走の若葉S(3月19日/阪神・芝2000m)でも、向こう正面からまくり気味に前にいって、最後差されたかと思ったら、差し返した。ああいう強引な競馬をして、最後でも根性を見せて勝つディープ産駒は珍しい。そういうところが自分の好みだし、今後に向けても期待が膨らむ。

 デビュー戦で敗れたあとは、ここまで3連勝。それも、結構荒っぽい競馬をして勝ってきている。そういうのはなかなかできることじゃないし、そんなところにも"器のでかさ"を感じる。ちゃんと走れるようになったら、どれだけ走れるのか、といった楽しみもある。

 そうは言っても、やや器用さが欠ける分、皐月賞はちょっと厳しいかも。ダービーでは面白い存在になれると思うから、それまでにどれだけ成長できるか。期待したいね。

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 番付は以上だけど、他にも気になる馬がいる。アルカサル(牡3歳/父ドリームジャーニー)だ。

 同馬はここまで2戦2勝。前走の500万条件・水仙賞(1着。2月27日/中山・芝2200m)の競馬を見て、「この馬は強くなりそうだな」と思った。目標をダービーに絞って、ここでどれだけ脚が使えるか試すようなレースぶりだったけど、それでいて2着に2馬身半もの差をつけたからね。

 ドリームジャーニー産駒と地味だけど、すごく走るし、大事に使われているのも好感が持てる。ダービーにはぜひ出走してほしい。出てきたら、「3強」にとっても怖い存在になるんじゃないかな。


安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

新山藍朗●構成 text by Niiyama Airo