英国の銀行家が、タックスヘイブン(租税回避地)を利用して、北朝鮮の核開発や武器取引に関与していた疑惑が浮上している。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した「パナマ文書」により明らかになったもので、5月上旬までにより詳細な内容が判明する可能性がある。

北朝鮮が故金正日総書記の時代から、スイスなど欧州のプライベートバンクに数十億ドル規模の「秘密資金」を貯えてきたということは久しく前から各国情報機関の間で通説になっているが、その実態は謎に包まれたままだ。

韓国の情報機関から流出した文書を元にした、ジャーナリストの三城隆氏による現地レポートは貴重な手掛かりを与えてくれているが、米国当局などから追及を受け続けている「秘密資金」は、絶えずタックスヘイブンなどを移動し、相当部分の存在が隠蔽されている可能性がある。

もっとも、金正恩氏は父・正日氏から「秘密資金」のすべてを受け継いだわけではないかも知れない。「秘密資金」の原資となっているのは武器取引や違法薬物の密輸、偽バイアグラなどの密売収益だが、そうした裏ビジネスを担ってきた幹部らが、カネをネコババして韓国などに亡命しているのである。

背景には言うまでもなく、正恩氏による「粛清の嵐」がある。

(参考記事:北朝鮮の「公開処刑」はこうして行われる

裏ビジネスを担う外交官たちは、もともとは北朝鮮でもトップクラスのエリートたちであり、自らの手を汚さざるを得ないことに大きなストレスを感じているとも言われる。そのうえ、独裁者の気まぐれで処刑されるリスクが増大しているとあっては、目の前を大金を持って逃げようと思わない方が不思議なくらいだ。

国連安保理などがいかに強力な経済制裁を敷こうとも、正恩氏は容易に核開発を止めようとはしないだろう。しかし、「先立つ物」が自由に使えなければ、核開発を進展させる余地は狭まる。「秘密資金」の実態を明らかできれば、正恩氏の野望に大きなダメージを与えられるかもしれない。