村山匡一郎氏、石田勇治氏、野中章弘氏

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 1961年にイスラエルのエルサレムで行われたナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判の舞台裏を描く「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」の公開記念トークイベントが4月8日、東京・下北沢の「本屋 B&B」で開催された。ゲストとしてジャーナリストの野中章弘氏、東京大学大学院教授の石田勇治氏、映画評論家の村山匡一郎氏が登場し、それぞれの専門知識をまじえて映画の魅力を語った。

 映画は、裁判の放映権を獲得したテレビ局のプロデューサー、ミルトン・フルックマン(マーティン・フリーマン)とドキュメンタリー監督のレオ・フルヴィッツ(アンソニー・ラパリア)らが、ホロコースト(大量虐殺)を推進した責任者でもあるアイヒマンが犯した罪を世界に伝えようと奔走するさまを描く。

 ドイツ近現代史を専門とする石田氏は「本作は複数の主題を追求している。1つは製作者たちの苦闘ですね。アイヒマンが登場してからは、記録映像も使いながらホロコーストの中身に迫る。本作は(小道具を含めて)細部に至るまで(裁判の背景や、現代の解釈などを)調査しています。20世紀には数々の事件が起こりましたが、(観客は)その1つの核心部分に引きずり込まれていく。ハラハラしながらもぐっとくるものがある」と高評価を与えた。

 野中氏は「人類が本当に裁かなくてはいけないのは誰なのか。その問いの延長線上にある映画。今だからこそ見るべき作品ですし、(セリフ)一言一言に意味がある」と評し「監督(フルヴィッツ)は、証言によってアイヒマンの表情が必ず崩れる時があると(複数あるカメラの1つにアイヒマンの表情だけを)撮らせる。その緊迫感が面白い。映像の力を信じていたんですね」とフルヴィッツの姿勢への共感を口にした。

 石田氏と野中氏は、ホロコーストの被害者である宿屋の女主人がフルヴィッツに「あなたのおかげよ」と語るシーンが記憶に残ったそうで「50年代のドイツでは、ホロコーストやアウシュビッツについて多くの人が話題にしなかった。被害体験を口にしても、誰も聞いてくれないから話さなくなる。(被害者が声を上げる)きっかけになったのがアイヒマン裁判。映像には歴史的な意味がある」(石田氏)と語った。

 司会を務めた村山氏は「(実際の裁判映像は)フィルムじゃなくてビデオで撮っている。ちょうど世界のテレビ界がビデオに切り替わったころで、資料としてのビデオ撮りの流れをつかむきっかけになった。映像史ではすごく大きいことです」と映画評論家の立場から語り、野中氏と石田氏は深くうなずいていた。

 「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」は、4月23日から全国公開。