トヨタが「危機時にAIが運転を引き取る」事故防止技術Guardian Angelを開発中、東富士のシミュレーターでテスト予定

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トヨタ自動車が、ドライバーが運転中に危機的状況になったとき発動する「Guardian Angel(守護天使)」機能を発表しました。この機能は、運転中に事故寸前の状況になった際、AIがハンドル操作を引き継いで危機を回避する自動運転機能です。トヨタの豊田章男社長は、かつて「ドライバーを必要としないような自動運転車を作る気はない」旨の発言を繰り返していたものの、その後方針を転換。今年1月には自動運転技術開発を見据えた人工知能技術開発を担う子会社 Toyota Research Institute(TRI) を設立し、自動運転のための AI 技術開発を加速しています。今週には TRI の3番目の研究施設をミシガン州アナーバーに建設すると発表しました。

その発表と同日、トヨタは Guardian Angel(守護天使) 機能の開発を発表しました。守護天使とはキリスト教において神が人間ひとりひとりにつけた天使で、その人を悪の道から正しい道へと導いてくれる役割を担います。トヨタが開発中の「Guardian Angel」は、ドライバーの運転中に事故になりそうな瞬間が訪れた時、自動車が自主的に危機回避行動をとる機能です。



トヨタが所有するドライビングシミュレーター設備の様子

この機能は、トヨタ東富士テストセンターに建設されたドライビングシミュレーターでのテストを予定しています。シミュレーター内部には自動車の(ほぼ)実物が置かれ、登場した人物の周囲には、走行する道路の状況がリアルに再現されます。

Guardian Angel は、運転中に事故に至りそうになった瞬間にステアリングをドライバーから引き取り、回避行動をとります。このシミュレーターでは、その時にドライバーがどのような反応をするかを確認するテストなどをする計画とのこと。

よくよく考えてみれば、Google などが開発している自動運転技術では、通常時は自動運転で、危機的状況やイレギュラーな状況が訪れた時は人間が回避行動を取るようになっていました。これに対し Guardian Angel の研究は、基本は人間が運転することとなり、人間と自動運転技術の立場が真逆になっているわけです。

これは見方を変えれば、Guardian Angel はすでに普及期に入っている自動ブレーキシステムなどと同じ立ち位置から出発しているとも考えられます。

 

トヨタは、完全自動運転技術と Guardian Angel 技術の両方が同時に使えるとしています。たとえば完全自動運転からドライバーがハンドル操作をすればドライバー運転モードに切り替わり、ドライバーが運転している時に事故に遭遇しそうになれば、こんどはGuardian Angel 機能がドライバーから運転を引き継ぐといったことが可能になるとしています。

なお、ミシガン州アナーバーに建設する TRI 3つ目の開発拠点はミシガン大学と共同でマッピング技術やセンサー技術を50人規模の体制で研究開発する計画とのことで、こちらでは完全自動運転技術を研究するとのこと。また TRI はスタンフォード大学、MIT とも AI 自動運転に関する技術開発を進めています。

以下は蛇足。

「守護天使」がイメージしにくかった人のためにわかりやすい例えで説明すると、要するに Guardian Angel 技術とは某漫画作品に出てくる「スタンド」能力のようなもの。運転中に危機が迫れば「オラァ!」とばかりに見えないスタンド(のような機能)がハンドルを引き継ぎ、強力な視力と腕力、さらに正確無比な手さばきでハンドルを操作して事故を回避するわけです。完全自動運転とこの技術の組み合わせで、トヨタは自動運転の開発競争を勝ち抜く構えかもしれません。