「リオ五輪を控える五輪世代が頑張らないとダメ」と語るセルジオ越後

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日本代表がシリアを5−0で下し、W杯アジア2次予選の1位通過を決めた。

この2次予選では初戦のシンガポール戦こそつまずいたものの(0−0の引き分け)、終わってみれば8試合で7勝1分け、計27得点で失点ゼロ。弱い相手に対して、きっちり力の差を見せた。それは素直に評価すべきだろう。

ただ、この結果はある意味、当たり前。本当の勝負はこれからだ。9月に開幕する最終予選は甘くない。2次予選でも露呈した課題に取り組んでいかなければいけないね。

中でも僕が気になっている課題はふたつ。

ひとつは体格がよく、引いて守りを固める相手への対応。これは昔から変わっていないんだけど、ボールを回すだけで攻撃の形をつくれず、逆にカウンターから決定的なチャンスをつくられてしまう。

シリア戦にしても、最初の2得点は相手の守備を崩し切ったというよりは、ラッキーと相手のミスで生まれたものだった。遠めの距離からでも積極的にシュートを打つことも大事だし、セットプレー時の工夫がもう少しあってもいいと思う。

そして、それ以上に深刻なのは選手層の薄さだ。おそらくシリア戦のスタメンがハリルホジッチ監督の考える現時点のベストメンバーなのだろうけど、ザッケローニ監督時代の2014年ブラジルW杯時のメンバーとほとんど変わらない。よく言えば不動、悪く言えばマンネリ。

確かに岡崎、本田、長友らは経験もあるし、働きを計算できる選手だ。でも、彼らも今年で30歳になる。主力が年齢を重ね、相手に研究されて痛い目に遭ったなでしこジャパンと同じ道をたどらないようにしないといけない。

そういう意味で、2次予選は新戦力を発掘する絶好の場で、ハリルホジッチも何人かの選手を試したけど、残念ながら不動のメンバーを脅かすような選手は出てこなかった。原口と金崎が目についたくらいかな。でも、まだまだアピール不足だし、スタメンを奪うほどではない。また、「ぜひ代表で使ってほしい」と思うような選手もこれといって見当たらない。

だからこそ今後は若手のアピールに期待したい。特にリオ五輪を控える五輪世代(23歳以下)だね。この世代が頑張らないとダメだ。

かつて日本が28年ぶりに本大会出場を果たした1996年アトランタ五輪のチームにはヒデ(中田英)をはじめ、城、川口、松田など、その後、A代表でも長く主力として活躍する選手がたくさんいた。彼らはただ才能に恵まれていたわけじゃない。「A代表に行っても俺たちがレギュラーだ」という熱い気持ちを持っていた。そのギラギラした感じがプレーにも表れていたよね。

そして、五輪で経験を積んで成長し、A代表に勢いをもたらした。今の五輪世代からもそういう選手がひとりでも出てくれれば、最終予選に向けて明るい材料になる。

あとは日本サッカー協会にひとつお願いがある。当然ながら、代表強化には組織的なバックアップも必要。だから、最終予選までの唯一の強化試合となる6月のキリン杯(ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、デンマークが参加予定)をより意義深いものにすべく、ベストメンバーで来日してくれと今から相手チームとの交渉に当たってほしいんだ。そこは田嶋幸三新会長の手腕に期待したいね。

(構成/渡辺達也)