やっぱり忙しい? 気になる漫画家の実情



――それから2015年11月に週刊少年チャンピオンで連載が始まるまでの約3年間、どんなお仕事をされていたんですか?

古巣のITmediaなどからお仕事をいただきつつ、週3日でライター仕事、残りの4日で漫画を描くという生活ですね。アフタヌーンに何作か持って行ったりしながら、ITmediaで『バイナリ畑でつかまえて』の連載を始めました。

――テクノロジーによって揺れ動く人間の心の機微を描いたシリーズですね。

これがけっこう大きな反響をいただけまして、こういう作品を読みたいと思ってくれる人たちがいるんだ、描いてもいいんだと思っていたところで、今の担当編集の星川さんと出会いました。いくつかネームを出したなかに『AIの遺電子』があったんです。


▲『AIの遺電子』連載第1回目の扉ページ


▲主人公の医者・須堂(右)と助手のリサ(左)

――『AIの遺電子』って少年漫画としては異例のテーマだと思うんですけど、チャンピオン編集部としては、どういう反応だったのでしょう? 実際のところを星川さんにもお伺いしたいんですが…

星川さん:僕は山田さんとは正反対というか、いわゆる王道の漫画が好きなので、最初はいろいろ意見をぶつけあったかもしれません。たとえば主人公が手術をするシーンでは、「ボタン押すだけってどうなんですか? もっと派手な動きはないんですか?」って聞いて、「そういうんじゃないから」と返されたりしてました(笑)。

――たしかに王道ではないですよね(笑)。

星川さん:そういうこともあり、最初は「読み切りで」という話だったんですが、編集長から「もっと続きないの?」と聞かれたんです。それで山田さんに確認してないのに「あります」と僕が勝手に答え、2話目3話目を描いてもらって(笑)。その2話目と3話目を読んだ編集長が「おもしろい。でもこれ毎週描けるの?」と聞いてきたので、これまた勝手に「描けますよ」と答えまして…

――勝手に(笑)。

描けねえよ!(笑)

――あはは(笑)。週刊連載、やっぱりハードですよね。

忙しいですね(笑)。連載が始まってから1日も休めていません。

――噂に違わず大変なお仕事なんですね。一週間のスケジュールは?

日曜〜月曜でネームを考え、火曜〜金曜日までの4日間は、1日4枚というルールで原稿を仕上げる日としています。一応、土曜日は休みの予定なんですけど、金曜までに原稿が終わらず、半日くらいは原稿を仕上げるのに使うことに…残りの半日で雑務をこなします。このサイクルの繰り返しですね。

――『AIの遺電子』は1話完結ということもあって、ネーム作りが大変そうです。

最初の頃はネタのストックがいっぱいあったんですけど、週刊のペースに追いつけなくてだいぶ切り崩しちゃいました。最近ようやくペースがつかめるようになってきたところです。

――話のネタを思いつくのはどんなときですか?

ファミレスが多いですね。家でやりたいんですけど集中できなくて。目の前にパソコンがあると、調べものをしていたはずなのに、あれ!?ツイッターやってる…!?みたいな(笑)。

――あるあるですね(笑)。オフの日があったら何をしたいですか?

オフがあれば休みたいです(笑)。あとはインプットの時間を作らないといけないなと思っています。いろんな人に会って、いろんな話を聞くことで、ネタを思いつくこともあるので。

進化する人工知能 人類はどうする?



――ここからは『AIの遺電子』について詳しく伺っていこうと思います。もともとAIやヒューマノイドへの興味が強かったのでしょうか?

記者時代から未来の技術には興味がありました。人間と瓜二つ、あるいはそれ以上の知性を持つ人工知能が生まれたら、我々の脳はそれを単なる道具として割り切ることができるだろうか?って考えたりしていて。

――人間とは何か、という哲学的な問いでもありますよね。最近だと、AIが囲碁の世界チャンピオンに勝利した出来事も、ニュースとして大きく取り上げられました。

そうですね。人間より機械が強い。でも強い相手がいるから、じゃあ自分たちは何もしなくていいのかっていうと、それはちょっと違うのかなと思っています。

――『バイナリ畑でつかまえて』の「人類は投了しました」の回は、まさにそういうテーマでしたね。

人間よりAIのほうが将棋が上手くても、勝負にチャレンジしてゲームを楽しむ、という話でした。囲碁や将棋に限らず、勝負事の面白さって絶対的な「強さ」とか「速さ」だけじゃない。たとえば陸上競技を見て「車のほうが速いのに何やってるの?」って思わないじゃないですか。

――走る姿って、見る人に勇気や感動を与えてくれますもんね。

そこなんですよ。人間が機械よりも走るスピードが遅いとして、だから人間が速く走ろうとすることに意味がないのかというと、そんなことは絶対にない。記録や順位の背景にある人間の努力とか個性とか、そういう「ストーリー」も大切にするのが人間なんだと思います。

――なるほど。AIへの世間の関心が高まっている絶好のタイミングではないですか?

これから先、人工知能が進化したことによっていろんな局面を迎えることになると思うんですけど、「そういえばあの漫画でこういうこと言ってたな」と、読者の方が思ってくれたらいいなぁと思っています。


▲身体が機械化されたヒューマノイドが国民の1割を越える時代。この店主もヒューマノイドだ。



▲闇治療を請け負う須堂は、脳のバックアップを取ったがためにウイルスに感染してしまった母親を診ることに…。


▲バックアップを使えば、直前の一週間分の記憶は失われてしまう。そのとき母親は…。

――読者と作品世界をつなぐ存在でもあるのが、主人公の須堂ですが、どのようして生まれたキャラクターなんでしょうか?

少年漫画ってキャラクターから作る人が多いと思うんですけど、この作品は違うんですよ。

――というと?

『AIの遺電子』の最初の着想は、第1話で描いた、脳みそをバックアップから復元するというあのシチュエーションなんです。ウイルスに冒されたから復元する。すると周りの人からすればただ正常になったように見える。だけど、復元される前の自分の視点で考えると、それは自分が死ぬことでもあるという。復元前と後の自分は、同じ自分なんだろうか?って。SFではよくある話なんですけどね。

――そのシチュエーションを前提に、キャラクターが生まれたんですね。

バックアップしちゃいけないという法律を作ろう→法律を犯して手術をするなら、主人公は闇医者っぽくしたほうがいいな、という発想で須堂が生まれました。最初の須堂は、いかにも闇医者っぽくヒゲが生えていたと思います。髪の色も今と逆。須堂は黒で、リサが白でした。

――おっちょこちょいなリサ、とっても可愛いです。

ありがとうございます(笑)。地味だと言われることもあるんですが、髪の毛をツンツンさせたりツインテールにしたり、自分ではけっこう頑張っているほうなんです(笑)。

――お気に入りのエピソードやキャラクターは?

僕は毎回最終回のつもりで「いつ終わっても悔いなし!」と思って描いているので、どれも同じくらい思い入れがあるんですが……でも、第3話「ポッポ」のエピソードは人気がありますし、僕も好きです。なによりクマのポッポが可愛いですしね(笑)。


▲可愛らしい人形に秘められたヒミツとは…?

――最後に、発売を楽しみにしているファンの方&まだ『AIの遺電子』を読んだことがないというユーザーに向けて、1巻のアピールをお願いします!

今年に入って結婚したんですよ。なので、ご祝儀だと思って買ってください!

――(笑)。

というのは冗談なんですけど(笑)。人工知能が話題になっている昨今、そういう世の中を考えるヒントになればいいなと考えながら描いているので、ぜひお手にとっていただければと思います。

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【プロフィール】
山田胡瓜(やまだ・きゅうり)/漫画家。2012年に『勉強ロック』でアフタヌーン四季大賞を受賞。『バイナリ畑でつかまえて』をITmedia PC USERにて連載中。2015年11月から、週刊少年チャンピオンにて初の長編作品となる『AIの遺電子』の連載を開始し、週刊連載マンガ家としてデビューした。『AIの遺電子』第1巻が発売中。
【Twitter】@kyuukanba

★『AIの遺電子』1〜3話の試し読みはコチラから!
http://arc.akitashoten.co.jp/comics/idenshi01wa/1

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今回インタビューさせていただいた、山田胡瓜さんの著作『AIの遺電子』第1巻(秋田書店刊)にサインをいれていただいたものを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

■応募方法:ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT


■受付期間:4月8日(金)12:00〜4月14日(木)12:00

■当選者確定フロー
・当選者発表日/2016年4月15日(金)
・当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
・当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから4月15日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただきます。4月19日(火)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。

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