ギャスパー・ノエ監督

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 フランス映画界のなかでも、ひときわ異彩を放つ鬼才ギャスパー・ノエ。彼が監督した作品は、軒並み各国の映画祭に招かれセンセーションを巻き起こすが、その一方で強烈な性描写やバイオレンスが描かれることで批判の的にもなる。最新作「LOVE 3D」もそう。2015年のカンヌ国際映画祭でミッドナイト・スクリーニング(同映画祭では唯一の深夜上映作)で初披露されるや否や、賛否入り乱れの批評で荒れまくった。そんなカンヌを監督は「もう慣れっこだよ(笑)」と笑い飛ばす。(取材・文/よしひろまさみち)

 「カンヌはそういうところだからね。たとえ誰もが認める素晴らしい映画でもけなすジャーナリストがいるような映画祭。特に僕の作品は、賛否わかれるのはいつものことだからさ。『カノン』のときなんて脅迫電話かかってきたし、『アレックス』のときもパーティで酔っぱらいに殴られそうになったこともあるんだ。今はむしろ、批判的な記事を見つけたら、それをとっておくようにしているんだよ。この作品に関しては、翌日の『Variety』誌(映画祭期間は毎日刊行され、無料配布されている)ではケチョンケチョンにけなしてくれてね(笑)。でも、悪評を書いている人ほど“こいつはどんな性生活を送ってるんだ?”って気になったんだ。なので、その中にあった一文を、抜粋で推薦コメントとして使わせてもらったよ(笑)」

 「LOVE 3D」は、ある男性が、元カノの母親から受けた報せをきっかけに、彼女と過ごした愛と嫉妬の日々を振り返るという、破滅的ラブストーリー。タイトルに入っている通り、なんと3Dだ。ということは、あんなことやこんなことが3Dで……と、色眼鏡で想像してしまう人も多いだろう。監督は「そもそもみんながやってることなんだから、自然なことだと思うんだけどね」といたって平静。

 「これは純粋なラブストーリーだ。まったくショッキングな作品とは思っていないんだよ。それこそ、『愛のコリーダ』とかの方がずっとバイオレンスだし、衝撃も大きかっただろ?(笑)ただ、僕にとっては2カ所だけ、チャレンジかな、と思った性的シーンがあったかな。見てからのお楽しみだけど。とにかく、これを3Dで撮ろうと思ったのは、『エンター・ザ・ボイド』のときのこと。あの当時『アバター』が旋風を巻き起こしていて、3Dが効果的に映画で使えるようになったことに共鳴したんだよ。ただね、3Dだと2Dよりもずっとカメラワークが重要になってくる。僕の作品は、脚本がプロット程度だったり、途中で変更することもしばしばあるから、敢えてゆっくりとしたカメラワークで撮ろう、ということだけは決めていた。そのアイデアをくれたのは『ゼロ・グラヴィティ』の冒頭、ゆっくりと360度動いているシーンだったんだけど、改めてブルーレイのメイキング映像を見て驚いたね。想像した以上に、あまりにも複雑な撮影をしていたから(笑)」

 日本では残念ながら(?)、本作は修正済みバージョンでの上映となる。ボカシなしで見るよりも、想像力をかきたてられ、性的描写は無修正よりもエロチックに見える可能性もあるのだが、「ピンク映画のくくりになっちゃうのが、本当に残念」と少し残念そう。

 「僕にとっては珍しく英語劇で、国際的な展開を最初から考えてきた作品だから、多くの人に見てもらいたいと思っているんだ。最初クララ役はアジア人にしようかと思っていたくらい。だから、レイティングによって幅が狭められるのはちょっと残念だよね。でも、見てくれた人は、いいことでも悪いことでも大いに議論してほしい。むしろ僕は悪いことを言われた方が『もっと問題起こしてやる!』って燃えちゃうかもしれないんだけどね(笑)」

 「LOVE 3D」は4月1日から、新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。