相思相愛の大杉漣と石井岳龍監督(写真上) (C)2015『蜜のあわれ』製作委員会

写真拡大

 大正期から昭和期に活躍した詩人・小説家の室生犀星が晩年に発表した小説を映画化した「蜜のあわれ」のトークイベントが3月23日、室生の故郷である石川県金沢市の金沢21世紀美術館で開催され、石井岳龍監督と出演者の大杉漣が登壇した。

 映画は、変幻自在の金魚の姿をもつ少女・赤子(二階堂ふみ)と老作家(大杉)の関係を中心に、老作家を慕う幽霊・ゆり子(真木よう子)、老作家と友人だった作家・芥川龍之介の幽霊(高良健吾)たちが2人の生活に影響を与えていくさまを幻想的に描く。

 本作は金沢市・加賀市を中心にロケが行われており、大杉は「ちょうど1年前、地元の皆さんにお力添え頂いて完成した作品です。スタッフ、キャストそれぞれの高い志が集結した映画を、こうして地元の方にいち早くご覧頂けることをとてもうれしく思います」と観客を前に感謝を述べた。

 室生自身が投影されている老作家になりきった大杉は、円熟味ある演技で老人の業や生にしがみつくさまを体現している。役作りには外見からかなりこだわったそうで「室生さんの写真を拝見しまして、約1週間ほどかけて似たような眼鏡を探したのですが、高円寺の古い眼鏡屋さんでぴったりのものと出合い、さらに僕と役に合った形に加工してもらいました。この眼鏡のおかげで、役と作品に奥行きを持たせてくれたと思います」と振り返った。

 石井監督も「大杉さんが、だんだん老作家自身に同化していくのを感じましたね。順撮りをしているわけではないのですが、その変化を見事に演じてくれました」と最敬礼。「二階堂さんと大杉さんの鬼気迫るシーンがあるのですが、そのシーンで笠松則通カメラマンが涙を流していたんです。職人気質の彼のその姿を見たときに、この映画は素晴らしい作品になると確信しました」としみじみ語った。

 石井監督との仕事を熱望していたという大杉は「俳優は選ばれる仕事。だからある意味では僕は監督に抱かれたんだと思います。だからこそ僕は抱き返した。俳優と監督はある種特別の関係があると思いますね」と大いに信頼を寄せる。対する石井監督も「僕も痛いほど抱かれました。今でも熱く抱かれ続けていますね」と相思相愛ぶりを見せつけ、会場を沸かせていた。

 「蜜のあわれ」は、韓英恵、上田耕一、渋川清彦、永瀬正敏らが脇を固める。4月1日から全国公開。