3月27日に行なわれるGI高松宮記念(中京・芝1200m)は、非常に難解な一戦の様相を呈している。というのも、今週に入って、香港から遠征してきた昨年の覇者エアロヴェロシティ(セン8)が千葉県白井の競馬学校から中京競馬場に移動する当日にセン痛を発症。さらに23日水曜日には、前哨戦のシルクロードステークス(京都・芝1200m)を制したダンスディレクター(牡6)も状態に違和感を覚えたことから、レースを回避することになった。

 人気どころの相次ぐ戦線離脱によって、有力馬が絞られるかと思いきや、ことはそう簡単ではなく、むしろ混戦模様となりそうだ。

 まず1番人気と目されるのが、昨年の3着馬で、今年初戦のGIII阪急杯(2月28日/阪神・芝1400m)で逃げ切り勝ちを収めたミッキーアイル(牡5)である。一昨年のGI NHKマイルカップ(東京・芝1600m)を持ち前のスピードを生かして逃げ切ったが、古馬になってからはしばらく控える競馬を続けてきた。しかし、前走で一転、再び逃げの手に出ると、1分19秒9のコースレコードタイで後続につけ入る隙を与えずに押し切ってみせた。久々の逃げで力を示したことで、陣営は控えるよりも逃げたほうが能力を発揮できると判断。レース後にも音無秀孝調教師からは、高松宮記念も果敢に攻めることが示唆された。

 しかし、強力な逃げ馬はミッキーアイルだけではない。

 昨年の2着馬で、前走のGIIIオーシャンステークス(3月6日/中山・芝1200m)でも前半32秒1の超ハイペースで2着に粘りこんだハクサンムーン(牡8)と、3連勝で臨んだシルクロードS(1月31日/京都・1200m)で初重賞挑戦ながら、逃げまくって2着と目下勢いに乗るローレルベローチェ(牡5)、さらに昨秋のGIIセントウルステークス(2015年9月13日/阪神・芝1200m)を好時計で逃げ切ったアクティブミノル(牡4)とのハナ争いになる。いずれも行き切ってなんぼのスピードスターたちで、先行争いの激化は当然免れない。

 さらに、現在の中京の馬場状態も気になるところ。先週、中京で騎乗した騎手によれば「今の中京の芝短距離で逃げるのは自殺行為」と漏らすほど、逃げ馬に向かない馬場になっているというのだ。彼は12月からあまり休みなく開催が続いたことによる馬場の悪化が原因ではないかと指摘する。中京競馬場はこれまでのAコースから、今週のみ、仮柵の置かれたBコースとなる。これが逃げ馬たちにどう影響を及ぼすか。

 また、ミッキーアイルにとっての懸念は、距離にもある。ディープインパクトの産駒はこれまでに多くの重賞、GI勝利を収めているが、芝1200mに関してはGI勝利がなく、重賞勝ちも昨年のウリウリによるCBC賞(中京・芝1200m)が初めてだった。さらに、NHKマイルCの勝ち馬も、その後に芝1200mのGIで勝利したことがないというデータも。

 このような強力な同型ライバルと不安なデータ、これらをミッキーアイルがどう乗り越えるか。

 人気でミッキーアイルに続きそうなのが、アルビアーノ(牝4)だ。初の1200m出走となった前走のオーシャンSでは、出遅れて流れに乗れなかったうえに、直線では前が塞がる不利。それでもメンバー中最速の上がりタイムで5着にまで追い込んだ。もともとデビュー当初は、スピードの違いで先行策をとっていたほどで、短い距離に不安はない。また、昨秋のGIIスワンステークス(2015年10月31日/京都・芝1400m)では、初対戦となった古馬一線級相手にまったく臆することなく差し切り勝ちと、スケールの大きさを見せた。鞍上は今回がコンビ2戦目となるルメール騎手で、前回の反省点も調整してくるはず。

 波乱には牝馬がつきものだが、今回、アルビアーノを含めて4頭の牝馬が出走を予定しており、他の3頭もそれぞれに一発を秘めている。

 ウリウリ(牝6)は先述したように、昨年同じコースのCBC賞を勝利。ディープインパクト産駒としてこの距離で初めての重賞勝利となった。全弟は今年の皐月賞(中山・芝2000m)でも本命の一角とされているマカヒキと、血統全体が勢いに乗っている点も見逃せない。

 ウキヨノカゼ(牝6)は昨秋のGIスプリンターズステークス(2015年10月4日/中山・芝1200m)で、低評価ながら後方から猛然と追い込んで3着となった。荒れた馬場はプラスではないものの、差し合いになれば浮上してきそうな1頭だ。

 もっとも穴気配を漂わせているのが昨年のGI桜花賞(2015年4月12日/阪神・芝1600m)馬レッツゴードンキ(牝4)。引っ掛かりやすい気性で、先行争いが激化する流れは間違いなく好材料。前走の阪急杯も着順こそ5着だが、ハイペースを勝ち馬から0秒2差に粘っている。母やきょうだいもどちらかといえば短距離志向。これが初の1200m出走でも大仕事をやってのける素地はある。

 頂点不在の短距離路線から、抜け出すのはどの馬か。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu