フランス関連で、まさかの『ドラえもん』騒動である。事の発端は作家・辻仁成さんがTBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』で、フランスでのドラえもん事情に触れたことにある。番組で辻さんは「フランスドラえもん放送禁止」と言ったのだ。


辻さんはどんな発言をしたのか


番組での流れは次の通りだ。ドラえもんの話題で盛り上がった際に、爆笑問題・太田光さんが「フランスでも人気あったりするんですか? 」と、辻さんに話を振った。すると辻さんは「ドラえもんはだめなんですね。放送禁止ですから」と答え、爆笑問題の2人を驚かせる。

「イタリアはオーケー、スペインもオーケーなんですけど、フランス教育委員会が、あんなドラえもんみたいな奴がいたら子どもが成長しない、って言って放送禁止なんです」「子どもが困った時に、何でもドラえもんに助けられるので、次々に何か出されると親が困るみたいな」と理由を述べ、「すごいでしょ。だからフランスだけはユーチューブで(ドラえもんを)見てるんです」「(日本のアニメはフランスで人気だけど)ドラえもんだけ彼ら知らないの」と事情を伝えた。

日本ほど知名度はないのは事実


結論から言うと『ドラえもん』は放送禁止ではない。ボーイングという米ターナー・ブロードキャスティング・システムによるアニメチャンネル上で、フランスでも同作品は見られる。この記事を書いている3月3日の番組表を調べてみると、『Doraemon(ドラえもん)』は夜から早朝にかけて何度か放送があった。



ただし禁止ではないものの、辻さんが言うように『ドラえもん』は、日本や他のアジア圏のような知名度はない。2003年にはM6という仏大手テレビ局で放送されたこともあったし、日本漫画の翻訳・出版を行う仏出版社カナから2007年に漫画も発売されている。しかし『ドラゴンボール』『ワンピース』『NARUTO』といった作品と比べて、『ドラえもん』を知る人は少ない。

フランスのテレビ事情とは


そもそもフランスのテレビは、アニメやドラマ、ニュース専門など、ジャンル別に無料見られるチャンネルが無数にある。そのため子どもを持つ家庭でも、有料のボーイングと契約するフランス人は多くないはずだ。チャンネル内の『ドラえもん』放送枠も、この記事を書いている時点では、毎日夜から早朝にかけて組まれており、子供向けの時間帯としては優遇されていない。日本アニメ好きフランス人ではなく、一般的なフランス人の若者に『ドラえもん』が知られていないのも合点はいく。

何はともあれ今回の騒動で感じたのは、ラジオ番組での1コマとは言え、こんなに日本の世間がドラえもんを気にしているということ! みんなに興味を持たれ愛されている作品なのだ。
(加藤亨延)